畑尾大翔にとっては7試合ぶりの出番だった。
9月9日の第25節・清水エスパルス戦の甲府は、左CBのエデル・リマが累積警告で欠場。直近の6試合をDFラインの中央でプレーしていた新井涼平が右CBへ移り、畑尾が定位置に戻った。
ただ新井、リマ、新里亮が組むスピードのある3バックは一定の成果を出しており、彼の“序列”が上がっているわけではない。畑尾も「自分としては後がない状況だったと思う」と振り返るが、彼はチームで生き残るために「期待以上」のプレーを見せる必要があった。
結果は0-1の惜敗。甲府16本、清水5本というシュート数を見ても分かるように、流れを見れば甲府が押していた。一瞬の隙を突かれてゴールを割られるという、DFにとって悔しい展開だった。
畑尾は失点の場面をこう振り返る。「予測し切れない状態でボールが出てきた。最後はボールに届くと思ったんですけど、足より上を(シュートが)抜けている……。防げなかったです」。
畑尾の目の前で清水のミッチェル・デュークが新里とヘッドを競り、お互いの頭がぶつかった。デュークはその痛みで頭を押さえて、一瞬プレーを止めた。
この競り合いに対して、畑尾はカバーリングのポジションを取っている。ただし中継の動画を見ると「アラート」な体勢を取り切れていない。
デュークは北川航也の「声」に反応してプレーを再開する。右足のヒールでボールを前方に落として、北川はゴール右に抜け出した。畑尾は一瞬、ほんの一瞬だけ対応が遅れ、彼の出した足の上をシュートは破った。
畑尾が悔しさを語っていたのはこのプレーについてだけではない。もちろん彼だけの責任ではないが、甲府は最終ラインと前線の「ズレ」を試合の中で解消できなかった。この試合の甲府はリンス、ドゥドゥの2トップを組んでいた。清水のDFラインは背後への対応に弱みがあり、そこに強いボールを送れば「事故」は起こりやすい。
しかし後ろが整っていない状況で2トップだけを走らせる攻撃は「厚み」が生まれない。失敗に終われば、中盤も無駄なスプリントをすることになる。
畑尾は振り返る。「もう少し自分たちのボールを大事に行ければよかった。ちょっと淡泊な攻撃が多かった。相手のウィークな裏を突くというのも大切ですけれど、それをやりつつも、リンスがボールを良い位置で受けられる選手なので(使えばよかった)」
リンスは相手の最終ラインと中盤の「間」で受けつつ、前を向ける選手。それを活かせば2人、3人が絡んでいく厚みのある攻撃も出せた。
畑尾は反省する。「相手が苦し紛れにクリアをして、それを俺たちが拾って、そこから攻撃はスタートする。自ずと後ろは下がっているけれど、前が上がっている状態だった。そこからトントンと近い選手とボールを動かせば、今日は(ピッチの)半分まで入れたと思う。前との距離を詰めてから、スイッチを入れられれば良かった。みんなちょっとどこかに『点を取りに行かなければ』という気持ちがあった」
一発のキックでチャンスが生まれることは当然あるし、攻撃における最大のプライオリティはまず「ゴール」「DFラインの裏」だ。ただ狙いがそこに偏ると、清水戦のような単調さと動きの無駄が生まれる。ボールを動かしつつ、前後が良い距離間隔で連動できるように陣形を整えるという「間」も必要だった。
「次はリマが帰ってくる状況の中で何が何でも、結果プラス内容もという思いでやっていた」と畑尾は振り返る。もちろんサッカーという競技でDFが90分間全くミスなく終えることはあり得ないのだが、清水戦は彼の小さな予測ミスが失点、そして結果に直結してしまった。
しかしプロとして悔しさに浸っていることは許されない。16日の鳥栖戦で出番はないかもしれないが、プロである以上は来るべき「次」に備えて準備をし続けるしかない。そもそも彼は肺の病気で大学4年の春からほぼ2年を棒に振り、そこを乗り越えてきた男。これくらいの挫折で屈することもないだろう。
甲府にとってもこの敗戦は極めて痛いものだった。順位こそ辛うじて残留圏内の15位に踏みとどまったが、チームは16位・サンフレッチェ広島、17位・大宮アルディージャといずれも勝ち点1差という争いの渦中にいる。
ただ、そんな窮地にあっても課題を解消し、次に向けていい準備をするというプロのありようは変わらない。このピンチは畑尾と甲府が持ち味のしぶとさを証明する絶好の機会でもある。取材者としてこの悔しさの先に何があるか確かめたいと強く感じた、清水戦の惜敗だった。
文=大島和人
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