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【コラム】日本代表初招集から2年9カ月…植田直通、10月の2連戦で初キャップへ

2017.09.24

鹿島を勝利に導いた植田直通 [写真]=JL/Getty Images for DAZN

 8月19日の明治安田生命J1リーグ第23節・清水エスパルス戦から連勝街道をひた走り、J1首位独走態勢に入りつつある鹿島アントラーズ。しかし9月23日の第27節・ガンバ大阪戦は開始早々の7分、GK東口順昭のロングパスに反応した韓国人FWファン・ウィジョの豪快ミドル弾を決められ、瞬く間に窮地に陥った。

 それでも、前半終了間際に金崎夢生のPKの流れからレアンドロが同点ゴールをゲット。一気に流れを引き戻す。後半も一方的に押し込んだが、どうしても追加点が奪えず、引き分けが現実味を帯びてきた。

 そんな後半ロスタイム、永木亮太の右CKから待望の決勝点が生まれる。ゴール前で鋭く反応したのは、背番号5を着ける植田直通。マークについていた金正也を頭1つ超える打点の高いヘッドでネットを揺らし、常勝軍団のリーグ5連勝の原動力となったのだ。

「今日の試合も勝つしかなかった。最後の最後に絶対チャンスが来ると思ってましたし、こういう試合はセットプレーが勝敗を大きく左右するという意識があった。自分がそこで決めてやろうと考えていたから、最後にボールが来たのかな」と植田は試合後のミックスゾーンで興奮冷めやらぬ様子を見せていた。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が視察が訪れる中での劇的弾は非常にインパクトが大きかった。

 2018 FIFAワールドカップ ロシア出場が決まり、センターバックの底上げは日本にとって至上命題だ。本大会への第一歩となった9月5日のサウジアラビア代表戦(ジェッダ)は昌子源(鹿島)を軸に植田か三浦弦太(G大阪)を組ませる若いセンターバックコンビで行くのではないか見方もあったが、指揮官は吉田麻也(サウサンプトン)の起用にこだわった。アジア最終予選全試合フル出場の守備の大黒柱への絶対的信頼を示す起用ではあったが、植田はそれをじっとベンチから見つめるしかなかった。ハビエル・アギーレ監督時代の2015年アジアカップ(オーストラリア)でA代表初招集されてから2年9カ月。そろそろ脇役の立場から脱しなければならないはずだ。

「自分はいつも代表に行っても試合に出れない。すごい悔しさを感じる中で、もっと成長しなければいけないと分かってます。来年のロシアまで残り少ないとは思いますけど、日々の練習からやっていけば、Jリーグでもかなり上達すると思う。自分はまず1対1で負けないことが一番だと思うし、空中戦もそう。自分が得意だと考えていることをもう一段階、二段階上げていかないと世界では戦えない。自分はもっともっとスキルアップしていかないといけないと思います」と本人も10月の2連戦(6日・ニュージーランド代表戦/豊田 10日・ハイチ代表戦/横浜)での代表デビュー、そしてロシアへの強い意欲をにじませた。

10月の2連戦で代表デビューを目指す [写真]=Getty Images

 常勝軍団で一緒にプレーしている昌子が代表最終ラインの一角に食い込んだのも、植田のいい刺激になっている。昌子もアルベルト・ザッケローニ監督時代の2014年4月の国内組合宿(千葉)で初めてA代表候補入り。アギーレ体制移行後の同年10月のジャマイカ代表(新潟)、ブラジル代表(シンガポール)の2連戦で初めてリストに名を連ねたが、初キャップを飾るのは翌2015年3月のウズベキスタン代表戦(東京)までずれ込んだ。その後も定着は叶わず、今年6月のイラク代表戦(テヘラン)でレギュラー格に参入するまで約3年もの時間を要した。そういう苦しい経験が糧になると2つ年上の先輩は言う。

「センターバックっていうのはチャンスが来るまでホントに時間がかかる。出れない時にメンタルが鍛えられるのが代表なのかなと。センターバックは89分いいプレーをしてても、1つの失点で評価が一気に下がる。辛いポジションでもあるから、やっぱりメンタルが強くなきゃいけない。ナオはリオ五輪でチームを離れて、帰ってきたらポジションがなかったりとか、俺より全然苦しい経験をしているけど、そういう時の振舞い方なんかはホントにすごい。ナオみたいな人間が今回みたいにチームを救う仕事をするんだと思います」

 太鼓判を押す昌子に呼応するように、植田も内に秘めた熱い思いを口にした。

「いつも隣でやってる選手が日の丸を背負って戦っているんで、『自分も』って気持ちになりますし、『負けてられないな』『いつか追い越してやる』って思いになってます。鹿島も1位だからと言って油断はしてないし、油断すれば足元をすくわれる。これからも厳しさを持った練習をして、どんどん優勝へ進んでいきたいです」と。

 大津高校1年の時にサプライズ選出されたU-16日本代表でセンターバックとしての基本を叩き込んだ菊原志郎コーチ(現横浜F・マリノスジュニアユース監督)も「植田は目が澄んでいて、本当に純粋な少年だった。言われたことを必死に吸収しようという姿勢も強く示していたんで、『もしかしたら、ひょっとするかも』という期待が湧いてきました」と話したことがある。そういう期待を抱かせるものを植田は持っている。打点の高いヘディングでゴールを奪える武器もその一つ。センターバックとしての守備はもちろんのこと、得点力という付加価値も前面に押し出して、次こそハリルホジッチ監督の度肝を抜く働きを見せてほしいものだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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