長崎MF中村慶太(左)は今季7得点と好調 [写真]=J.LEAGUE
■U-17代表で寝食も共にした3人が、両軍に分かれて火花を散らす
リーグ前節は名古屋に2-3で競り負けたものの、依然として首位をキープしている湘南が、讃岐に2-1と勝利し、連敗を3でストップした16位の愛媛をホームに迎える好カード。この一戦には、現在開催中のFIFA U-17W杯に参戦経験のある3人の選手に再会の可能性が秘められています。
城福浩監督に率いられ、2006年のU-17アジア選手権で12年ぶりにアジアの頂点に立った当時のU-17日本代表。昨シーズンから湘南で再びチームメイトとなった山田直輝と端戸仁は、立ち上げ当初からこの代表に招集されており、10番を背負った山田は中盤で、一方の端戸はセンターフォワードとウイングを併用されながら、チームの中で欠かせないピースとなっていきます。また、今シーズンは磐田からの期限付き移籍で愛媛へ新天地を求めた田中裕人も、アジア選手権を共に戦ったメンバーの1人。こちらはタイトな守備力を生かして中盤を走り回り、攻撃に特徴を持つ選手の多いチームにあって、存在感を高めていきました。
とりわけ、1ヶ月近くもシンガポールで寝食を共にしたアジア選手権は、山田や端戸にとって本大会よりも印象に残っているそうで、高校生だった彼らは宿舎でさまざまな遊びを考え出し、それを繰り返す日々を送ったとのこと。“かくれんぼ”や“枕投げ”など、修学旅行のような遊びをしては、みんなで笑い合っていたようです。
そんな状況下で田中が持ち味を発揮したのは、チームのリーダー格でもあった柿谷曜一朗が繰り出す“ムチャぶり”。三文字のアルファベットの頭文字を提示し、「これが何の略かを面白く言え」的なことを要求。その答えに笑った人が次の解答者になるということで、凄い雰囲気の中で行われていたらしい“ムチャぶり”だった訳ですが、そこは大阪出身者だけあって、田中はハイパフォーマンスを繰り出していたとのこと。山田も「ヒロトは関西人だからメッチャ面白かったです」と素直にそのセンスを認めていました(笑)。
3人揃って出場したFIFA U-17W杯からは今年でちょうど10年。今や中堅選手として各々のチームでJ1昇格を目指して奮闘している彼らにとって、ハイティーンで体感した世界の経験が、その後のサッカーキャリアに与えた影響は決して小さくなかったはず。また、チームは違っても、あのシンガポールの1ヶ月を共有した仲間の絆は、我々の想像以上に強いものがあるはずです。そんな山田、端戸、田中がピッチ上で再会することを願いつつ、今回はチーム状況も鑑みて、ホーム湘南勝利の「1」を予想したいと思います。
■長崎を勝利に導くか?試合終盤に強い男、中村慶太
20勝7分10敗で3位に付けている長崎と、20勝5分12敗で4位の名古屋。2ポイント差でしのぎを削る両雄が、長崎のホーム・トランスコスモススタジアム長崎で激突する今節最大のビッグマッチ。このゲームでは珍しくデータを引用して、ゲームの見どころをご紹介しようと考えています。
今シーズンの先制点を取った場合の結果は、長崎が17勝2分1敗で、名古屋が13勝3敗。勝率で見ると前者が湘南に続くリーグ2位の.850で、名古屋もリーグ3位の.813。どちらのチームも先制点を取った場合には、8割を超える確率で勝利を収めていることが分かります。
逆に先制点を取られた場合を見てみると、長崎は3勝2分9敗で勝率が.214であるのに対し、名古屋は7勝4分9敗で勝率が.333。さすがリーグでダントツのトップを数える77得点を奪っているチームだけあって、先制されても3試合に1試合は逆転勝利まで持っていっている計算になります。この数字を見ると、長崎が先制した場合の展開は非常に興味深いと言えそうです。
また、両チームの共通項として、時間帯別得点(※90分間を15分ごとに区切り、それぞれの時間帯での得点を算出したデータ)で最も多いのが、76分から試合終了までの得点というデータが。長崎は全得点の3割を超える15得点、名古屋も全得点の4分の1近い20得点を、この試合終盤の時間帯に挙げているんです。
さらに、試合終盤の得点が劇的な勝ち点獲得に繋がっている回数も非常に多いのは、両チームに共通するデータ。長崎は76分以降に決勝ゴールを叩き込んで勝った試合が7試合あり、そのなかで3度の逆転勝利はすべてこの7試合の中に該当。とりわけ第34節の千葉戦では90+7分に、前節の山口戦では84分に決勝ゴールをマークしており、シーズン終盤に向けて勢いの付く勝ち方が続いていますし、名古屋も第5節の松本戦、第7節の讃岐戦、第14節のホーム町田戦、第16節の横浜C戦で、76分以降に決勝ゴールをマーク。加えて激闘となった第28節のアウェイ町田戦も、90+3分にガブリエル・シャビエルが直接FKをそのままゴールネットへ。双方揃って、それこそ試合終了の瞬間まで勝敗の分からないゲームを何度も繰り広げてきました。
そんなリサーチを進める中、痺れる時間帯で結果を残してきたある選手の名前が浮かび上がります。その選手は長崎の中村慶太。ここまで7得点を奪っているアタッカーは、その内の実に5得点を76分以降に記録しており、第14節の大分戦と第26節の岐阜戦では、共に90+6分という凄まじい時間に勝利を手繰り寄せる劇的な決勝弾を。前述した山口戦でもチームに勝ち点3をもたらす決勝ゴールをゲット。彼の存在は名古屋にとっても脅威になってくるのは間違いありません。
あるいは今シーズンのJ1昇格争いの行方を左右するようなビッグマッチ。好ゲーム必至の90分間は、特に両チームが得意としている76分以降のゴールにも注目しつつ、中村慶太という“ラッキーボーイ”の存在も加味して、ホームの長崎が意地を見せるという「1」で勝負します。
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェーチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第38節
2017年10月21日(土)16時キックオフ
湘南ベルマーレvs愛媛FC(Shonan BMW スタジアム平塚)
■明治安田生命J2リーグ第38節
2017年10月21日(土)19時キックオフ
V・ファーレン長崎vs名古屋グランパス(トランスコスモススタジアム長崎)
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