2017シーズンのJ1リーグを制し、念願の初タイトルを獲得した川崎フロンターレ [写真]=JL/Getty Images for DAZN
川崎フロンターレの2017年シーズンは、これ以上ない形で幕を閉じることとなった。
チームの中心にいたのが、得点王とJリーグ年間MVPに輝いたキャプテンの小林悠と、バンディエラとしてトップ下に君臨した中村憲剛であることに異論はないだろう。
年間通じての高いパフォーマンス維持はもちろんのこと、チームの連携がかみ合わずに低空飛行が続いたシーズン序盤には、彼らが前線で孤軍奮闘。勝てないながらも負けない粘り強さを表現し、チームをけん引した。シーズンが進むにつれて、阿部浩之や家長昭博といった新加入組が持ち味を生かし始めると、前線は安定した得点力を発揮。最終節での5得点が象徴的だが、「攻撃のフロンターレ」の看板そのままに、リーグトップの71得点を叩き出した。
その一方で、鬼木フロンターレとして新しく積み重ねてきた変化が、結果に結びついたとも言える。それを示すのが、まずリーグ最少となる年間負け数「4」である。
平たく言えば、簡単に負けないチームになったということだ。実際、今季は負けてもおかしくなかった苦しい試合を、引き分けや勝ちに持ってくる踏ん張りが光った。そういった粘り強さを生んでいるのは、チームのスタイルとも密接に関係している。中村が言う。
「今年に関しては、守備のところでのハードワーク、球際のところ。それをオニさん(鬼木達監督)が植え付けてくれている。守備に関しても拠り所がある。それができたことで、粘り強く闘えるチームになってきている」
難しい試合を負けなかった、あるいは勝ち切ってきたという「経験値」は、特にリーグ終盤になると、選手の中で大きなチーム力に還元されていった。2点差を10人で逆転した第29節のベガルタ仙台戦や、泥だらけのピッチで2点差を追いついた第31節の柏レイソル戦が、まさにそうだ。当時、ケガにより戦列を離れていた阿部浩之も、外から見ていて勝ち切れるチームになってきていると、その変化に手応えを口にしていた。
「外から見ている分には、失点しているときのメンタルというか、浮き沈みが少なくなったと思う。今までだったら、例えば前のレイソル戦なら引き分けにまで持っていけなかったし、(逆転した)仙台戦もそう。そういうゲームに持っていけるようになってきた」
最後はリーグ戦15試合負けなしでシーズンを駆け抜けたが、負けにくくなった要因は、リーグ3番目の少なさとなる失点数「32」が如実に示している。
失点しなければ負けないのは、サッカーにおける一つの真理だ。勝たなくては終わりだったラスト3試合は、いずれも無失点勝利。特に第33節の浦和レッズ戦では、アジアチャンピオンになった相手のホームで、猛攻に晒されながらも完封した。この試合後の奈良竜樹のコメントは、チームの成長をよく示しているものだ。
「自分たちのリズムではなかったし、理想のサッカーには程遠かったが、そういうところで勝てなくて涙を飲んできたクラブでもある。チームとしては2点目を取りに行っていましたが、1点取っていたので、どんな形でもゼロで抑えれば勝てる。そこの割り切りであったり、意思統一はできていた。いろんなことを考えたら、泥臭くても結果をもぎ取ることが最優先。危ないシーンもあったけど、みんなでなんとか掴み取れました」
簡単には負けないことで積み重ねてきた経験値と、それを支えたチームとしての堅陣。そしてなにより自分たちでクラブの歴史を変えるという信念が、強く持てたシーズンだった。タイトルのかかった試合前に、キャプテンの小林が語る言葉は実に印象的だった。
「シルバーコレクターという歴史があったと言っても、今のフロンターレは今までの歴史のフロンターレとは違う。昨年の悔しさを今年にぶつけるというフロンターレだと思っている。今までの方に感謝しなくてはいけないが、今やっているのは自分たち。自分たちが歴史を塗り替えられることをしないといけない」
クラブの歴史を動かし、チームがさらに強くなるためには必要な要素だった初タイトルも手に入れた。ここからさらにどんな成長が待っているのか。来年はさらに楽しみなシーズンになりそうだ。
文=いしかわごう
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