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【コラム】復帰戦で2アシスト…ロシアW杯へ力強い一歩を踏み出した杉本健勇

2018.02.11

復帰戦で勝利に貢献した杉本健勇 [写真]=瀬藤尚美

 2017明治安田生命J1リーグ最終節のアルビレックス新潟戦。シーズン通算22点を奪って初の得点王に王手をかけていた杉本健勇セレッソ大阪)がまさかの不発に終わった。奇しくも同じ日、ライバル・小林悠(川崎フロンターレ)が大宮アルディージャ相手でハットトリックを達成。杉本との2点差を跳ね返して通算23得点をゲットし、逆転でタイトルに輝いた。

「まだまだ自分には力がない証拠」とC大阪のエースは気丈に前を向いたが、直後に左肋骨骨折と右足首負傷が判明。2017年東アジアカップ(E-1選手権)と2018年元日の天皇杯決勝、横浜F・マリノス戦を棒に振って手術に踏み切った。確実視されていた1月のスペイン移籍も封印した。それから2カ月が経過し、大型FWは完全復帰。満を持して2月10日の「FUJI XEROX SUPER CUP 2018」の舞台に立った。

 相手は因縁の川崎。手中にしかけていた得点王タイトルをさらった小林がキャプテンマークを巻いて1トップに陣取っており、長年背中を追いかけ続けてきた大久保嘉人もベンチに控えている。4カ月後に迫った2018 FIFAワールドカップロシア最終登録メンバー入りを考えても、彼らとの直接対決には絶対に負けられない。3カ月前のJリーグYBCルヴァンカップ決勝では、同じ埼玉スタジアムで自身が先制弾を決めて川崎を粉砕しているだけに、その再現も思い描いたはずだ。今季、C大阪は韓国人FWヤン・ドンヒョンや高木俊幸など新戦力を数多く補強したが、尹晶煥監督は背番号9を最前線に起用。絶大な信頼を示した。その期待に応えるべく、杉本にはゴールという結果が求められた。

「フロンターレは今日、コンディションが万全ではなかった」と尹監督が語ったように、序盤から両者の仕上がり具合には差が感じられた。精彩を欠く川崎に対し、C大阪は運動量と動きの質で圧倒。杉本自身も谷口彰悟、奈良竜樹の両DFとの競り合いに勝ち続ける。前半26分には右に開いた山村和也からの折り返しを確実にキープし、山口蛍の先制弾をいち早くお膳立てしてみせた。

 1-0でリードした後半開始早々にも、キム・ジンヒョンのロングボールを巧みに頭で落とし、清武弘嗣の2点目をアシスト。後半頭から入ったキム・ドンヒョンとの連携もスムーズで、背番号9が思い描いた通りのゴールになったという。

「2点目は狙っていた形なんですよね。ドンヒョンが入ってヘディングも競り合いも強いんで、競った後の後ろを狙っとこうと思った瞬間にあの場面が訪れた。キヨ君もいい形で入りましたし、冷静に決めてくれたんでよかったです」と杉本は笑顔をのぞかせた。

杉本健勇

杉本は2アシストの活躍で勝利に貢献した [写真]=瀬藤尚美

 最終的にC大阪は高木が追加点を奪って3-2で勝利。杉本自身も81分間プレーし、体のキレや鋭さはケガのブランクを一切感じさせなかった。ただ、自ら清武に衝突したり、自身のフリーのシュートをフカしたりとややホロ苦いシーンも散見された。ライバル・小林と大久保が1点ずつ取ったのに対し、杉本本人にゴールがなかったことも、一抹の悔しさを覚えたことだろう。

「チームが勝ったんでそれで全然いい。ただ、個人的にチャンスがあったんで、そこは悔しいですね。嘉人さんの最後のゴールシーンもやっぱ動き方がうまかった。そこは勉強になりました。俺もどんどんあそこ(ゴール前)に入っていかなアカン。やっぱうまいなと思いました」と背番号9は偉大な先輩へのリスペクトを改めて口にした。

 この男が点取屋として覚醒したのも、大久保の存在によるところが大だ。川崎移籍を選びながら、出場機会を思うように得られず苦しんだ2015年、10歳年上の小柄なアタッカーは点を取りまくっていた。

「嘉人さんは『俺にボールをよこせ』と強く要求して、ホントに結果を出す。そういう姿を見せられたら誰も文句は言えない。自分ももっともっと周りに要求できるFWにならなアカンと思ったんです」と言う杉本は、ジュニアユース時代から過ごした古巣に復帰した2016年から目の色を変えてゴールに突き進むようになった。ちょうどその年、キャプテンマークを巻いた柿谷曜一朗が長期離脱を余儀なくされたことで「俺がやらなアカン」という自覚が強まり、左サイドを主戦場にしながらもJ2で14ゴールをマーク。大いに自身を深めた。そして2017年、尹監督から最前線に据えられたことで苦しみながらも絶対的エースに君臨した。大久保、小林、柿谷といった年長者FWのいいところを見て、貪欲にいい部分を吸収し、自らのレベルアップにつなげていったからこそ、今の彼がある。

「これからACL(AFCチャンピオンズリーグ)とJの掛け持ちがあるけど、試合が沢山あるってことは選手として光栄なこと。ホントにみんなの力が必要になるから1つになって戦いたい。個人的にはもっと上げていく必要はあるし、これからって感じですね。ゴール前に入っていくところだったり、シュートの回数も増やしていかないといけない」と杉本はさらなる飛躍を期している。

 ロシア本番に滑り込もうと思うなら、確かに目に見える数字を残すことが肝要だ。ACLとJでゴールを量産すれば、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も必ず彼を招集するだろう。欧州組の大迫勇也(ケルン)が体調不良、岡崎慎司(レスター)がケガでそれぞれ数試合の欠場を余儀なくされるなど、他のFW陣が停滞気味な時だけに、大きなインパクトを残せば有利な立場に立てる。このタイミングを自分のものにできるか否かも大舞台に立つための必須条件だ。富士ゼロックスで無得点に終わった悔しさを晴らすべく、ここからの大型FWの爆発に大きな期待を寄せたい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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