村井満チェアマンは、Jリーグ発展の最も軸となるべき地域とのかかわりについて「川崎が好例」の一つと話す
Jリーグが一つの節目となる25周年を迎えた今、「Jリーグ百年構想」を軸に村井満(むらい・みつる)チェアマンに話を聞く意味は決して小さくない。四半世紀の歩みのなかで、Jリーグはいかにしてファンやサポーターを増やしてきたのか。JリーグとJクラブが展開してきた試みの意義をあらためてトップに語ってもらうことは、新たな歴史につながるはずだ。
2018シーズンは2月23日(金)に開幕し、12月まで白熱した試合が繰り広げられる。ゴールシーンや攻守の場面のたびに各地のスタジアムで大きな歓声がわき上がる──“今ここ“でしか味わえない胸の高鳴りを提供するJリーグにおいては、各クラブの努力やパートナー企業のサポートが大きな価値を持っているという。
構成=菅野浩二
写真=兼子愼一郎
協力=公益社団法人日本プロサッカーリーグ、一般財団法人スポーツヒューマンキャピタル
■地域の人々に寄り添った活動は川崎の取り組みが好例

クラブ、サポーター、地域が一丸となって川崎はJ1制覇を果たした Photo by Gettyimages
「Jリーグ百年構想~スポーツでもっと幸せな国へ。~」というスローガンを果たすため、あるいは「サッカーの水準向上および普及」「豊かなスポーツ文化の振興や国民の健康への発展」「国際社会における交流および親善への貢献」といった理念を実現するため、私たちJリーグがしっかり向き合う場所は大きく分けて3つあると考えています。一つは各クラブが本拠地を置くホームタウン、そしてもう一つは海外、そして最後の一つはJリーグという組織本体です。
今回は、Jリーグ発展の最も軸となるべき地域とのかかわりの重要性についてお話いたします。
ホームタウンや地域の人々に寄り添った活動という意味では、2017シーズンのJリーグでクラブ初のタイトルを獲得した川崎フロンターレが好例でしょう。川崎は、チーム力を上げていくのと並行して、地域との交流をとことん徹底しました。ピッチの内外を問わずホームタウンに根ざした企画を次々と展開し、選手自らも参加。川崎の選手たちはピッチ内にとどまらない活動を通して地域との距離を時間をかけて縮め、ファンを少しずつ増やしてきました。

近年でいえば、川崎浴場組合連合会などとのコラボレーションでお風呂での親子のコミュニケーションの大切さをアピールしたり、川崎市内のスーパーマーケットで「かわさき応援バナナ」の販促活動を行ったり、小学校の授業に参加したりといった活動が代表例です。川崎はそうした地域とのかかわりを継続しながらホームタウンで多くの方から愛されるクラブに成長し、同時にJ1で優勝できる力をつけてきたのです。
ファンを増やす、ひいては「入場料収入」の増収を図るという意味でも、川崎の努力には目を見張るものがあります。ホームスタジアムの等々力陸上競技場の陸上トラックにフォーミュラカーを走らせたり、スタジアム近くのイベント広場「フロンパーク」に仮面ライダーを招いたり、「イッツァスモウワールド」と銘打って相撲部屋の春日山部屋の協力のもと、相撲文化に触れる機会を設けたりと、試合以外にもスタジアム観戦が楽しめる企画を実施してきました。
つまり、等々力陸上競技場に足を運んだ方の「顧客体験」においては観戦以外の満足度も高いはずです。私たちの調査によると「スタジアム初観戦」の理由には「誘われたから」というものが占める割合が多く、試合以外のエンターテインメントも積極的に提供している川崎の取り組みは、結果的に“誘い誘われ”を効果的に引き起こし、地域のファンを増やすような構造になっているといえるでしょう。
Jクラブのホームタウン活動や社会連携については、J.LEAGUE PUB Report 2017 Winter(Jリーグ パブ リポート 2017 ウィンター)で総括しています。ぜひ一度目を通し、Jリーグがめざす方向を理解していただければ、と思います。
■地域密着は明治安田生命保険相互会社様の存在も大きい

2018シーズン、初のJ1を戦うV・ファーレン長崎 Photo by Gettyimages
また、サッカーを通じた地域密着や社会貢献については、私たちのタイトルパートナーである明治安田生命保険相互会社様の存在も非常に大きいものです。全54クラブとパートナー契約をかわし、日本全国で年間200回にも及ぶ小学生向けサッカー教室を開催していただいています。さらに、昨年1年だけで27万人を超える方をスタジアムに動員していただきました。現在のJリーグにとって、地域社会の活性化や子どもたちの健全育成といった夢を共有してくださるうえ、Jリーグ公式アプリ「Club J.LEAGUE」の開発にも協力いただきサッカー文化の成熟を後押ししてくださっている明治安田生命保険相互会社様は、今のJリーグにとって文字どおりなくてはならないパートナーといえます。
「ビジネス」というとすぐに「お金」をイメージしがちですが、その「お金」を支払ってくれるのは「人」です。川崎や明治安田生命保険相互会社様などの取り組みが示すように、私たちJリーグはまず「人と人とのかかわり」に重きを置くべきと考えています。さまざまな試みを通して「地元のクラブを応援したい」「Jリーグはおもしろい」「スタジアム観戦は楽しい」と思ってくださる人を一人でも多く増やせば、めぐりめぐって各クラブの財政基盤も強化されていくはずです。
私たちJリーグも54のクラブも、「Jリーグはおもしろい」「スタジアム観戦は楽しい」と感じていただけるような工夫や努力を続けていきます。勝利をめざして両者が攻撃を仕掛け合う場面、互いに繰り広げる一対一の攻防、意外性に富んだパスや迫力あふれるドリブル突破、ゴールが決まった時にスタジアムを包む大歓声……スポーツの醍醐味はやはり生観戦の鮮度です。2018シーズン、25周年を迎えたJリーグの感動をぜひスタジアムで心ゆくまで味わってください。

\教えてくれた人/
村井満(むらい・みつる)さん
公益社団法人日本プロサッカーリーグの5代目チェアマン。早稲田大学卒業後、日本リクルートセンター(現リクルートホールディングス)入社。同社執行役員やリクルートエージェント(現リクルートキャリア)社長などを歴任し、2008年よりJリーグ社外理事。2014年1月31日から現職。埼玉県立浦和高等学校ではサッカー部に所属し、GKとしてプレーした。世界のサッカーを初体験したのは大学時代の1979年。日本で開催され、若きディエゴ・マラドーナを擁するU-20アルゼンチン代表が優勝を果たしたFIFA U-20ワールドカップを生観戦した。
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By サッカーキング編集部
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