千葉の矢田(左)と茶島(右)[写真]=J.LEAGUE
敵将の長谷部茂利監督が「97分間、ずっと攻められていた」と認めるほどの圧巻の内容だった。ボール支配率はジェフユナイテッド千葉が65パーセント、水戸ホーリーホックが35パーセント。オープンな展開になった終盤を除けば、千葉が常にイニシアチブを握り、攻めこむ時間帯は比率以上に長く感じられた。
攻撃のタクトを振るったのは、“ダブル司令塔”の矢田旭と茶島雄介だ。矢田は昨夏名古屋グランパスから、茶島は今季サンフレッチェ広島から加入と、どちらも在籍歴は短く、チームメートになるのも初めてだが、互いに持ち味を発揮している。4-3-3の両インサイドに配され、矢田はゲームメーカーとして中盤に安定をもたらし、茶島はチャンスメーカーとして積極的に前線に絡んでいく。
84分までプレーした茶島は、狭いスペースでボールを受けながらも、「自分のいいところ」と自認する持ち前の鋭いターンで幾度も相手をはがし、スルーパスやサイドチェンジなどでチャンスを演出。10分には強烈なミドルシュートで相手ゴールを脅かすシーンもあった。
矢田は「もっとシュートに絡んでいきたかった」と認めるとおり、決定機には関与できなかったものの、堅実なボール運びやピンポイントキックで流動性を生み出した。さらにシステム変更時にはバランサーとして、攻守の不足部分を的確にカバーした。
相手を圧倒するもゴールが遠かった。矢田も茶島も確かな手応えを掴んだ一方で、結果を悔やむ。「ゲームを作るところは良かった。僕ら中盤の選手がもっとシュートを打てれば点も入っていた」(矢田)、「チームにも自分にも得点のチャンスがたくさんあった。あとは点を取るところだけ」(茶島)。もっとも、こうしたゲームはバルセロナにも起こり得る。
トップは昨季19得点の長身FWラリベイ、両ワイドはピッチ上を縦横無尽に駆け回る町田也真人、積極果敢なドリブラーの為田大貴と、前線にはタレントが揃う。中盤の底には、ひと回り大きく成長した熊谷アンドリューが君臨。“ダブル司令塔”と連動するこの強力なアタッカー陣がバリエーションに富んだ攻撃を仕掛ける。2試合で勝ち点1と数字上は苦しいスタートとなったが、チームの完成度は昨季の序盤とは比べものにならないほど高い。矢田は自信を持って言う。「どんな相手でもボールを支配できる」。7連勝フィニッシュの昨季終盤の、あるいはそれ以上の力強さを備えた千葉が今度こそ……と期待せずにはいられない。
文=安田勇斗
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