栃木のジョニー・レオーニ(左)と徳島のダニー・カルバハル(右)は豊富な経験を有しているゴールキーパーだ [写真]=J.LEAGUE
■熊本を引っ張る2トップは、同じ大学の先輩後輩
リーグ第5節の大宮戦に続き、前節は新潟も3-1で退け、ホームゲームで昨年のJ1勢を連続で撃破し6位に浮上した熊本。今節はここまで無敗で2位につける町田との序盤戦の大一番に臨みますが、このゲームで注目したいのは同じ中央大学出身の長身2トップです。
昨季から熊本でプレーしているFW安柄俊と、広島からの期限付き移籍で今季熊本へ加入したFW皆川佑介。開幕節で後半途中から2トップを組むと、第2節以降はスタートからコンビを組むことも多く、前述の大宮戦でもアベックゴールで勝利の立役者となった2人は、中央大学の先輩後輩。1年生の前期リーグから出場機会を掴んだ皆川に対し、1年先輩の安は2年生ながら既にレギュラー格でしたが、ポジション争いを繰り広げながら、同時にピッチに立つ回数も増えていきます。
当時の中央大はドイスボランチがMF永木亮太とMF六平光成で、中盤にはMF佐藤謙介の名前も。守備の要はDF大岩一貴、GK畑実、前線にはFW林容平とのちのJリーガーがズラリと居並ぶ陣容。DF今井智基やFW澤田崇、MF田辺圭佑などもメンバー入りとの当落線上という豪華布陣で、リーグの優勝争いに絡んでいくような好チームでした。
ただ、安が3年時、皆川が2年時も、比較的タイプの重なる両者は、スタメンの前者に替わって途中出場で後者が送り出されるというパターンが多く、リーグ戦で同時にスタメン起用されたのは後期終盤の4試合のみ。安が4年時、皆川が3年時もその構図に大きな変化はなく、リーグ戦でキックオフからコンビを組んだのは1試合だけで、リーグ後期とインカレは皆川の負傷離脱もあって、同時起用の機会もないまま安は卒業し、川崎へ。そう考えると、“リーグ戦”で2人がアベックゴールを決めたのは、大学時代を通じても大宮戦が初めてということになるはずです。
新潟戦でもスタメンで最前線に解き放たれた安と皆川。安は2ゴールという主役級の活躍を見せましたが、特に2点目は皆川がニアに相手ディフェンダーを引き連れて飛び込んだことで、ファーが空いたという側面も見逃せず、前線からの果敢なプレスも含めて、この2トップが対戦相手の脅威になりつつあることは疑いようがなさそうです。
今節対戦する町田は7試合で6失点と、堅守をベースに勝ち点を積み重ねているソリッドな好チーム。攻撃面では特にセットプレーの得点が多く、MF平戸太貴はアシストランキング首位独走の6アシストを記録しており、今のリーグでは屈指の“負けにくい”チームだと言えるでしょう。このゲームは安と皆川の活躍に期待しつつ、町田の安定感も考慮して、ロースコアのドローと予想。「0」にマークします。
■国際経験豊富な両GKに注目
悪夢の開幕3連敗から一転、ホームでは連勝を飾るなど、確実に復調傾向にある18位の栃木が、連敗、3連勝、再び連敗となかなか結果が安定しない12位の徳島とグリスタで対峙する一戦。このゲームは代表経験者の両守護神に注目したいと思います。
ジョニー・レオーニ、33歳。元スイス代表GK。フル代表のキャップ数は、2011年8月10日にリヒテンシュタインとの国際親善試合で記録した1試合のみですが、彼のキャリアで特筆すべきはW杯のスカッドに入っていたこと。南アフリカで開催された2010年大会に臨むスイス代表を率いていた名将オットマー・ヒッツフェルトは、当時国内の名門クラブであるFCチューリッヒでプレーしていたレオーニを、ディエゴ・ベナーリオ、マルコ・ヴェルフリに次ぐ第3GKの位置付けで、世界行きのメンバーへ招集します。
本大会はベナーリオが全試合にスタメンフル出場。チームは初戦で優勝候補筆頭のスペインを倒すビッグサプライズを起こしながら、その後の2試合の結果が振るわず、グループリーグ敗退となりましたが、大きな経験を携えて帰国したレオーニはその後もコンスタントに代表へ招集され続け、前述したように2011年には念願の代表デビューも経験。以降は現代表の守護神を務めるヤン・ゾマーの台頭もあって、キャップは1を記録したにとどまっているものの、れっきとしたW杯経験者であることは間違いのない事実。UEFAチャンピオンズリーグではミランやレアル・マドリーとも対戦している彼の経験値は、Jリーグのゴールキーパーの中でも特筆すべきものだと言えるでしょう。
ダニー・カルバハル、29歳。現役コスタリカ代表。2011年と2016年のコパ・アメリカ、2015年のゴールド杯と各種大会のスカッドに名を連ねながら、なかなか代表デビューが遠かった彼の初キャップは2017年1月18日のニカラグア戦。すると、同年のゴールド杯でもグループリーグで出場機会を得るなど、代表の中で存在感を発揮。正守護神にはレアル・マドリーのケイラー・ナバスが君臨していますが、来るべきロシアW杯のメンバー入りを虎視眈々と狙っています。
そんなカルバハルは、北中米カリブ海王者として挑んだ2009年のFIFA U-20W杯経験者。DFクリスティアン・ガンボアやFWマルコ・ウレーニャなど2014年W杯ベスト8メンバーを擁し、世界4位となったチームで試合出場こそなかったものの、貴重な体験を積み上げるなど、コスタリカ国籍のゴールキーパーの中でも国際経験は屈指。先月の代表戦では招集外となったため、逆転でW杯のメンバーに選出されるか否かは、徳島サポーターならずとも気になるところです。
前節は栃木も徳島もともに前半早々に2失点を喫した上、退場者を出してしまうという非常に似通ったシチュエーションのなかで、結果的に黒星を突き付けられる展開に。レオーニ、カルバハル、両者ともチームに勝ち点をもたらすビッグセーブを繰り出すには至りませんでした。とはいえ、昨年も安定したパフォーマンスでJ2昇格に貢献したレオーニと対照的に、カルバハルはまだチームに勝利を引き寄せるような個の力を見せているとは言い切れず、そろそろ真価を発揮したいはず。それぞれ出場停止の選手を抱えるなか、両守護神の奮闘にも期待しながら、ここはカルバハルと徳島がアウェイで勝ち点3を奪取すると予想。「2」にマークしたいと思います。
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第8節
2018年4月8日(日)14時キックオフ
FC町田ゼルビアvsロアッソ熊本(町田市立陸上競技場)
■明治安田生命J2リーグ第8節
2018年4月8日(日)14時キックオフ
栃木SCvs徳島ヴォルティス(栃木県グリーンスタジアム)
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