今季のツエーゲン金沢は各ポジションで激しい競争が繰り広げられているのだが、その中でも日に日に存在感を増しているのがDF毛利駿也だ。順天堂大学から加入したルーキーは、第1節・愛媛FC戦に途中出場してプロデビューを果たすと、その後も出場機会を重ねている。第7節を終えて5試合に出場し、そのうち3試合は先発だった。左右両サイドバックでプレー可能だが、最近は右サイドバックを主戦場にしており、早くもスタメン争いの最右翼だ。
「両足を使えるのは自分の強み」。右利きの毛利は、サッカーにおいては事実上の両利きだ。小学生の頃、遊びでボールを蹴る際にあえて左足を使い、中村俊輔や本田圭佑の真似をしていたという。「練習でも『今日は左足を多めに使おう』という日もあった」と振り返る。厳密には、クロスの種類やシュートの球質によって蹴りやすい足があるようだが、両足が使えるだけに攻撃時の選択肢が多く、右サイドでボールを前進させるプレーも見られる。スピードを活かした攻撃参加が持ち味で、やはりそこからのクロスは見どころの一つ。ただ、それだけではなく、味方とのパス交換やコンビネーションで局面を打開して中に入っていく。
第7節・横浜FC戦、佐藤洸一が得点を挙げた場面。敵陣右サイドでボールを受けた毛利は、サイドからのクロスではなく中に侵入。「左(足)でもシュートが打てるので、運びながらゴールを伺っていた。マラニョンに当てて、リターンをもらって左で打とうと思っていた。マラニョンが自分でいったけど、それが(マラニョンのアシストから)点につながったので良かった。ただ、イメージとしては左足で打つというイメージだった」。毛利はこの試合で精度の高いクロスから決定機を演出。そして、86分にはプロ初ゴールを挙げた。
最近のパフォーマンスを見る限り、プロ1年目のスタートは上々の滑り出しに映るが、「細かい部分でまだうまくいっていない部分がある。そこを直していかないとうまい相手だと一瞬でやられてしまうので、そこを突き詰めていきたい」と話す。プロの世界の場合、例えば守備のポジショニングなら、センチメートル単位の誤差が命取りになると毛利は考える。「まだ意識してやっているので、無意識にできるくらいまで刷り込みたい」
課題もあるとはいえ、毛利のプロサッカー生活はまだ始まったばかり。「こんなに幸せなことはない。高校、大学だと授業があって、アルバイトをして、練習する感じだった。24時間サッカーのことを考えることができるし、良い環境でできる。スタッフもいろんなことをやってくれる。もちろんうまくいかないこともあるけど、うまくいかないことも大事。選手生命はそんなに長くないので、この時間は大事」
幸せを噛みしめるルーキーから、ブレイクの予感が漂う。
文=野中拓也