クルピ監督の起用に応えた髙江麗央 [写真]=J.LEAGUE
4月21日に行われた今季最初の『大阪ダービー』は、ガンバ大阪の勝利で幕を閉じた。明治安田生命J1リーグでは最下位に沈むガンバと、4連勝で首位獲りを目指すセレッソ大阪の対戦ということで、前評判では俄然セレッソ勝利の予想をした人が多かったはずだが、ガンバのレヴィー・クルピ監督は試合前日にこんな話をしていた。
「セレッソの方が、我々よりいい状態にあるとは思います。ですが、ブラジルでは『ダービーはダービー』と言われるように、何が起きるか分からないのがダービーです。そしてもちろん、私は何かを起こす自信もあります。そのために明日は、戦術的なもの、技術的なもの、そして選手の選択まで『何かを起こすため』に確信を持って選択したいと思います」
その3つ目、『選手の選択』という部分でクルピ監督が抜擢したのが髙江麗央だ。その髙江はトップチームでの公式戦デビューを飾った直近のJリーグYBCルヴァンカップ第4節・浦和レッズ戦と同様、ボランチの一角を担い、90分間に渡ってイキイキと躍動。試合後にはクルピ監督をうならせた。
「ルヴァンカップでの彼はプレーに迷いがなく、ミスを恐れず気迫のこもったプレーをしていました。例えミスが出たとしても、自分のプレーをやり続ける存在感もあったと思います。それもあって今日の大阪ダービーでも起用しましたが、彼のプレーは非常に良かったと思います」
昨年、東福岡高校より加入した髙江。高校時代は積極果敢なドリブルと運動量を持ち味とする攻撃的MFだったが、明治安田生命J3リーグを戦うガンバ大阪U-23のチーム事情もあり、また宮本恒靖監督曰く「彼のスピード、運動量といった持ち味を考慮して」、シーズン途中からは殆どの試合をサイドバックやウイングバックとしてプレー。本人も物足りなさを感じていた守備力に磨きをかけながら、かつJ3とはいえコンスタントに公式戦の経験を積みながら、プロ1年目を戦い抜いた。
そうして迎えたプロ2年目の今季。新指揮官に就任したクルピ監督が若手選手の起用に積極的だという前評判を意識してのことだろう。髙江は始動に際し「練習からアピールして、チャンスを掴みたい」と話していた。しかし、蓋を開けてみれば開幕前の練習試合では一度もトップチームで起用されることはなく、開幕後も他の若手選手がチャンスを掴む中、昨年同様J3でのプレーが続いていた。しかも与えられたポジションは昨季とは違うボランチ。またしても宮本監督による抜擢だった。
「昨年もサイドバックでいいプレーを見せてくれましたが、今年の一次キャンプの際にボランチで起用した時、キックの良さ、運動量、セカンドボールへの反応やボール奪取のところで良さが見られたので、ボランチで使ってみることにしました」
事実、J3開幕からボランチとして出場した髙江は、昨季培ったボール奪取力などの守備力も存分に発揮しつつ、また高宇洋という『相棒』の存在にも支えられ、攻守に躍動を見せた。開幕5連敗で始まった昨季とは対照的に、開幕戦から白星スタートに成功。以降も白星先行の戦いを続けているが、好調の理由の一つに高と髙江が構成するダブルボランチの安定感があると言っても過言ではない。
そうしてJ3の舞台で自身を磨いてきた中で掴み取った念願のJ1リーグデビュー。満員の大阪ダービーを戦い終えた髙江は目を輝かせて試合を振り返った。
「せっかくもらったチャンスなので結果を残してやろうと思っていました。相手の中盤には日本代表の選手もいたし、強い気持ちで試合に臨みました。昨年から宮本監督をはじめ、コーチ陣の皆さんにいろんなことを教えてもらったことで、全然できなかった守備も少しずつできるようになってきたし、いろんなポジションを経験させてもらいピッチでできることも増えてきたのですごく感謝しています。ただ2試合先発して出た課題もたくさんあるので、それをしっかり修正してまた練習からアピールを続けたい。J3でも大阪ダービーは経験していましたが、お客さんの数も断然多くて、一つひとつのプレーに湧いたり、悲鳴が聞こえたりして……。今日はそういうところも楽しみながらプレーできました」
その言葉にもあるように、今回の活躍が『単発』では意味がないということは髙江自身も自覚するところだ。ケガで離脱中の今野泰幸が戦列に復帰すれば、クルピ監督の頭にある『ボランチ』の序列が変わることも考えられるだけに、尚更だろう。だが、例えどういう状況になろうとも髙江が、それに一喜一憂することはないはずだ。昨年から今日まで、周りのアドバイスを真摯に受け入れ、自身を磨き続けていれば必ず「チャンス」は舞い込んでくるし、日々の努力がそのチャンスを活かす最強の手段になると肌身で感じたはずだから。
文=高村美砂
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