今季からチームの新たな守護神に任命された、 大宮の笠原昂史(左)と、東京Vの上福元直人 (右)[写真]=J.LEAGUE
■似通ったキャリアを歩んできた、大宮と東京Vの守護神
リーグ前節はアウェイで同じ降格組の新潟に1-0で競り勝ち、ようやく15位まで浮上した大宮と、ここまで4勝6分と無敗をキープし、4位につけている東京Vが激突する“首都圏バトル4”。この一戦で注目したいのは、今季から新守護神を託された、高校の先輩後輩に当たる笠原昂史と上福元直人です。
昨季の第935回でこの2人を取り上げた時にもご紹介しましたが、笠原と上福元は高校サッカー界の名門として名高い市立船橋高校の先輩後輩。1988年生まれの笠原が1年先輩となりますが、ゴールキーパーという特殊なポジション上、両者が濃密に切磋琢磨していたであろうことは想像に難くありません。
お互いに高校3年時は高校選手権での全国大会出場は叶わず、笠原は明治大学、上福元は順天堂大学へ進学。ともに4年時には特別指定選手に指定されるなど、大学サッカー界の中でも注目される存在として、それぞれ特別指定を受けた水戸と大分に入団。ただ、足を踏み入れたプロの舞台では、なかなか正守護神としての立場をつかみ取れない時間が続きます。
2011年に笠原が加入した水戸で、不動の守護神として君臨していたのはクラブのレジェンドとも言うべき本間幸司。2013年には本間の負傷離脱を受けて、笠原もリーグ戦デビューを果たしましたが、以降も基本的には“サブの一番手”という構図が続くなかで、風向きが変わったのは2016年。シーズン中盤から最終節まで笠原がゲームに出続け、プロ6年目にして初めて本間の出場試合数を上回ると、翌2017年はリーグ戦全42試合にフル出場。ようやくその実力を開花させ、今季からは活躍の場を大宮へ移すことになりました。
一方、上福元にとってプロ1年目となる2012年の大分で、正守護神を務めていたのは清水圭介。以降も丹野研太、武田洋平と1年ごとにレギュラーが変わるなか、なかなか出場機会が訪れなかった上福元も2015年に武田の負傷離脱によってリーグ戦デビューを果たし、翌2016年シーズンはJ3を戦う大分で開幕スタメンの座を獲得。シーズン終盤にはベンチを温める日が続きましたが、初めてチームで最も多くの試合でゴールマウスを任されると、2017年はリーグ戦の出場も38試合を数え、安定したパフォーマンスを披露。笠原同様に今季は東京Vへの完全移籍を決断しました。
2016年にブレイクのきっかけをつかみ、2017年にプロ生活で初めて正守護神の座を射止め、2018年に新たなチームへ移籍するという、非常に似通ったキャリアを歩んできた2人ですが、今季のここまでは5試合連続完封に貢献し、リーグ最少失点タイの3失点と東京Vが誇る堅守の中核を担っている上福元に対し、第3節からゲームに出始めた笠原はチームの不調もあって、やや厳しい時期を強いられてきたものの、前節の新潟戦で今季初の完封勝利を達成。こちらも今節に今季初の連勝を懸けて挑みます。おそらくはロースコアが予想されるこの一戦。両守護神にも注目しながら、堅いゲームの末にスコアレスドローという結果を予想し、「0」にマークしてみます。
■J2を戦うライバルとなった“高木ブラザーズ”
ここまで6勝2分2敗の3位と好調の続いている山口と、リーグ戦4連敗中で14位と思ったように結果のついてきていない新潟が対峙する第11節。このゲームで初めての兄弟対決に挑む可能性を秘めているのが、善朗と大輔の“高木ブラザーズ”です。
大洋ホエールズで活躍した高木豊氏を父に持つサッカー兄弟として知られる俊幸、善朗、大輔の3人。いずれも小学生時代はあざみ野FCでキャリアをスタートし、そこから東京Vの下部組織でプレー。この経歴は解説者としても知られている玉乃淳氏とまったく同じだということも、プチ情報として付け加えておきます(笑)。
91年生まれの俊幸と92年生まれの善朗はジュニアユース、ユースとともにプレーした後、2009年には揃ってトップチームの2種登録選手に。その年に俊幸がリーグ戦デビューを果たすと、善朗も高校3年時の翌シーズンにリーグ戦で起用され、着々とステップアップを遂げていくなか、95年生まれの大輔も全日本少年サッカー大会で日本一に輝くなど、グングン頭角を現し、何と2010年天皇杯2回戦の町田戦では14歳ながら、2人の兄と一緒にベンチ入り。高木三兄弟の名前は広く知られる所となっていきます。
俊幸は2011年に清水へ、善朗も同じ年の6月にオランダのユトレヒトへそれぞれ移籍。2013年に東京Vのトップチームとプロ契約を交わした大輔も含め、三兄弟は別々の道を歩むことになりましたが、善朗は清水でのプレーを経て、2015年7月に東京Vへ復帰。このタイミングで大輔は、初めて兄と同じチームにプロ選手として所属することとなったのです。
そこから2年半は、アカデミー時代にも袖を通した緑のユニフォームを纏い、J1復帰を目指して共闘する日々。2015年と2017年はともに昇格争いを繰り広げ、前者では最終節で涙を飲んだものの、昨季はその最終節で劇的な勝利を収め、5位で昇格プレーオフへと進出します。福岡と対峙した準決勝。ともにベンチスタートだった善朗と大輔は、どちらも途中出場でピッチへ解き放たれましたが、1点のビハインドを跳ね返すことは叶わず、チームは敗退。そして、今季から善朗は新潟へ、大輔は山口へとそれぞれ新天地を求めたため、初めて同じカテゴリーを戦うライバルという立場になりました。
チーム同士も初対戦ならば、善朗と大輔も初対戦という注目の一戦ですが、現状は非常に対照的。山口は開幕3連勝とスタートダッシュに成功すると、ホームではここまで3勝2分と負けなし。大輔もここまでの全10試合でスタメン出場を果たしている上に、既に4得点をマークしており、前節の町田戦でもヘディングで先制点をゲット。個人としてもチームの重要なピースとして機能しています。
一方の新潟は開幕当初こそ4戦無敗と悪くないスタートを切りながら、現在は前述したようにリーグ戦4連敗中とかなり苦しい状態に。善朗も完全に定位置を確保したとは言えず、スタメンで登場した前節の大宮戦もなかなかチャンスに絡むことなく途中交替。さらなる奮起が期待されています。そんな双方を比較すると、率直に言って勢いは明らか。高木兄弟がピッチ上で再会することを期待しつつ、ここは山口がホーム無敗を勝利で継続すると予想。「1」にマークしたいと思います。
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第11節
2018年4月28日(土)16時キックオフ
大宮アルディージャvs東京ヴェルディ(NACK5スタジアム大宮)
■明治安田生命J2リーグ第11節
2018年4月28日(土)15時キックオフ
レノファ山口FCvsアルビレックス新潟(維新みらいふスタジアム)
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