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【土屋雅史氏のJ2展望】監督交代直後の甲府は山口に敗れると見る…松本のFW前田は昨季まで所属の水戸と対戦

2018.05.02

甲府で司令塔を任されているMF小塚和季 [写真]=J.LEAGUE

■成長の足跡を刻んだ古巣との対決を迎える、甲府の司令塔

 ミッドウィークの開催もあって、ここから過密日程を強いられるゴールデンウィークのJ2。今回の対象となる第12節からは、ブレイクのきっかけを与えてくれた古巣と初めて対戦する可能性のある、2人の選手をご紹介したいと思います。

 J2降格シーズンながら、第11節を終えて2勝5分4敗の16位と苦戦の続く甲府。そのチームで司令塔を任され、チームトップの4アシストを記録しているMF小塚和季にとって、今節で対峙する山口は、くすぶりかけていた自身を救ってくれた大事な古巣です。

 帝京長岡高校の中心選手だった小塚が、新潟県勢最高タイの高校選手権全国ベスト8進出を成し遂げ、地元の新潟へ大きな期待を背負って加入したのは2013年。ただ、ルーキーイヤーに公式戦の出場機会は訪れず、翌2014年もリーグ戦デビューこそ果たしたものの、なかなか定位置は掴めなかったなかで、W杯中断期に彼へオファーを出したのが、当時JFLに所属していた山口でした。

 加入早々に上野展裕監督の信頼を得た小塚は、レギュラーとしてJ3昇格にきっちり貢献。その年の夏に沼津とのアウェイゲームへ取材に行き、久々にプレーする姿を見た彼が、高校時代のように生き生きとプレーしていたことは今でも強く印象に残っています。

 2015年も期限付きでの移籍期間を延長し、山口とともにJリーグの舞台へ帰ってくると、出場停止の3試合以外はすべてのリーグ戦に先発し、劇的な展開となった最終節でチームは2年連続での昇格を達成。その最終節の試合後、「今は食生活だったり1日の過ごし方だったりも自分で考えるようになったかなと感じるので、そういう意味では大人になれたかなと思います」と語る笑顔に、確かな成長を感じたこともありました。

 新潟に帰還したものの、思ったような結果を残せなかった小塚が再挑戦の場として選んだのもやはり山口。試合に出ることを優先し、慣れ親しんだオレンジのユニフォームを纏うと、2017年シーズンはキャリアハイの8ゴール8アシストを記録し、残留争いにあえぐチームを牽引。輝きを取り戻した格好で、今季からは新潟時代に指導を仰いだ吉田達磨監督率いる甲府への完全移籍を決断。そして今節、おそらく自身にとっても特別な2年半を過ごした古巣と、初めて対戦する機会を迎える訳です。

昨季は山口のJ2残留に大きく貢献した [写真]=J.LEAGUE

 第10節までは全試合に出場していた小塚ですが、前節はベンチ入りもなく、チームも後半アディショナルタイムの失点で千葉とドロー。30日には吉田監督の契約解除が発表される事態となりました。そして、後任として指名を受けたのは、奇しくも小塚が山口時代に師事した上野氏。今節から甲府の指揮を執ることが決定しています。そんな状況下で、前節こそ新潟に敗れたとはいえ、ここまで3位と好調を維持している山口との古巣対決に挑む彼の気合は言うまでもないでしょう。このゲームはオレンジのサポーターもきっと楽しみにしている小塚の活躍にも期待しつつ、両チームのバイオリズムを考慮し、アウェイチームが勝利する可能性が高いと予想。「2」にマークしたいと思います。

■徐々にチームにフィットしてきている、松本の快足フォワード

 開幕から6試合勝ちなしと厳しい序盤戦を突き付けられながら、ようやく復調傾向にある10位の松本。そんなチーム状況と歩調を合わせるように、ようやくスタメンの座を掴みつつあるFW前田大然にとって、今節で対峙する水戸は自身のストロングポイントを改めて確認することのできた、大事な古巣です。

 大阪出身の前田は全国優勝した代のチームを見て、山梨学院大学附属高校へ越境入学。チームは2年時に選手権で全国出場を果たしたものの、前田に出場機会は訪れず、3年時もインターハイ、選手権ともに県予選で敗退。全国レベルでの目立った成績は残せませんでしたが、参戦していたプリンスリーグ関東では、桐光学園のFW小川航基や横浜FMユースのMF遠藤渓太を抑えて得点王を獲得すると、練習参加を経た後に松本への加入も決定。プロへの道を歩み出すことになりました。

 迎えた2016年。いきなり開幕節で途中出場ながらリーグ戦デビューを果たした前田でしたが、以降も出場時間は試合終盤の数分という状況が続き、天皇杯ではゴールをマークしながら、結果的にリーグ戦は9試合54分間でノーゴール。翌2017年シーズンには期限付きで水戸への移籍を決断し、新天地での飛躍を誓います。

 すると、この選択は大正解。開幕当初はベンチスタートが多かったものの、徐々にポジションを確保していくと、主にFW林陵平との“デコボコ2トップ”でゴールを量産。シーズンが終わってみれば13得点を叩き出し、圧倒的なスピードを生かしたストライカーとして一躍脚光を浴びる存在に。年末にはAFC U-23選手権に臨むU-21日本代表にも選出され、この機会は負傷離脱で大会参加こそ叶いませんでしたが、今年の3月にはパラグアイ遠征で代表再招集を受け、ベネズエラ戦で2得点を記録。森保ジャパンで挑む東京五輪に向けて、大きな注目を集めています。

爆発的なスピードを武器に、昨季は水戸で13得点を叩き出した前田 [写真]=J.LEAGUE

 個人的に「凄いなあ」と感じたのは、松本の練習を取材する機会に恵まれた今年2月のキャンプ。持久力別に分けられていたフィジカルトレーニングのトップグループに属していた前田は、その中でも他の選手に大きな差を付けて、ズバ抜けた走行距離を披露。スプリントの驚異的なスピードは認識していましたが、凄まじい持久力まで兼ね備えていることを知り、改めてその能力に驚かされました。

 緑のサポーターの小さくない期待を背負い、迎えた今季はなかなかスタメンを勝ち獲れない日々が続いていましたが、パラグアイから帰国した後は少しずつキックオフからピッチに立つ機会も増え、ここ3試合はいずれもスタメン起用。ただ、前節の愛媛戦でも10分のチャンスはゴールキーパーに阻まれ、28分の決定機はディフェンダーのスーパークリアに遭い、得点を奪えないままに65分で交替。ここまでのリーグ戦ではノーゴールと、思ったようなシーズンを送れていないことも否めない所です。

 長谷部茂利新監督の下で序盤戦のJ2を席巻した水戸は、現在2連敗中で11位まで順位を落としたとはいえ、昨年からの主力も多くプレーしており、前田に活躍させるつもりが毛頭ないことは明らか。そのマークを掻い潜り、古巣相手に彼がシーズン初ゴールを挙げられるか否かは、この一戦を楽しむ上でも大きな注目ポイントになるはずです。

 ちなみに過去10度あった両チームのリーグ戦における対戦は、松本から見て7勝2分1敗。さらにホームでは3勝1分1敗という数字が残っている上に、今季のアルウィンで戦った松本の3試合は2勝1分とここまで負けなし。やはりアルウィンでのゲームが、松本の選手に絶対的な自信を与えてくれることに疑いの余地はありません。このゲームは前田の古巣との再会に期待しつつ、松本が地の利を生かして勝ち点3を奪うと予想。「1」にマークします。

文=土屋雅史

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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J2リーグ第12節
2018年5月3日(木)14時キックオフ
ヴァンフォーレ甲府vsレノファ山口FC(山梨中銀スタジアム)

■明治安田生命J2リーグ第12節
2018年5月3日(木)14時キックオフ
松本山雅FCvs水戸ホーリーホック(松本平広域公園総合球技場)

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