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ジョー(名古屋)「プロ意識を持ってプロになる」【外国籍J戦士に聞く強化への道筋】

2018.05.04

[写真]=黒川真衣

 日本サッカーがより発展を遂げていくためには何が必要か。Jリーグでプレーする外国籍選手にヒントを聞く企画“外国籍J戦士に聞く強化への道筋”の第2回は、名古屋グランパスのブラジル人FWジョーが登場する。

 名門・コリンチャンスの育成組織出身で、元ブラジル代表の肩書きを持つ世界屈指のストライカーは初挑戦のJリーグで何を感じているのか。サッカー王国ブラジルの文化や育成方法、そして今後のJリーグに求められる要素について語ってもらった。

インタビュー・文=三島大輔
写真=黒川真衣

■ブラジル人にとってサッカーは“呼吸”のようなもの

――ブラジルは『サッカー王国』とも称されています。ブラジル人にとってサッカーとはどんなものですか?
ジョー サッカーは小さな頃から身近なものです。例えるなら“呼吸”のようなものでしょうか。各家庭にサッカー文化があって、それはひいおじいちゃん、おじいちゃん、お父さん……と代々続いている。おじいちゃんがサッカー選手で、その息子のお父さんもサッカー選手ということも珍しくない。サッカーはブラジルの文化であり、ブラジル人はサッカーとともに生きているんです。

――ジョー選手が生まれたサンパウロ州にはコリンチャンス、パルメイラス、サントス、サンパウロといったビッグクラブがあります。ご自分の家庭のサッカー文化はいかがでしたか?
ジョー 母と兄、自分はコリンチアーノ(コリンチャンスのファン)で、父だけがサンパウロのファンでした。コリンチャンスはサンパウロ州のどの地域でも圧倒的な人気を誇っているんですよ。

――サッカーを始めたきっかけは何ですか?
ジョー 父がやっていたのがきっかけですね。父は息子2人を「プロサッカー選手にしたい」という夢を持っていて、まずは兄弟そろってフットサルから始めました。自分が6歳の時ですね。

――サッカーに転向したのはいつ頃ですか?
ジョー その1年後、7歳の時にコリンチャンスの育成組織に入団しました。当時はまだフットサルとサッカーを両立していたんですけどね。

――サッカーをプレーする環境はいかがでしたか?
ジョー 父が『45 Futebol Clube』というサッカークラブの監督でした。チームのグラウンドがあったので、そこでシュート練習や走り込みをしていましたね。

――プロサッカー選手になろうと決心したのはいつ頃ですか?
ジョー 心が動き始めたのは10歳の頃。「プロサッカー選手になりたい!」という思いがどんどん強くなっていきました。コリンチャンスの試合をたくさん見に行って、練習もより一層頑張って取り組みましたね。家族の生活をより良いものにしたいという思いも決心を後押ししました。

■すべての分野でプロに近い扱いを受けていた

――ブラジルでプロサッカー選手を目指す場合、どのようなルートをたどるのでしょうか?
ジョー ブラジルでプロになる方法は一つ。それはクラブの育成組織に入ることです。カテゴリーを上げていくとプロへの道が拓ける。日本のように高校や大学からプロになるというのは、ブラジルサッカーの歴史をさかのぼってもないはずです。

――ブラジルの義務教育制度について教えてください。
ジョー 期間は8年ですね。サッカーに専念するために途中で学校を辞めてしまう選手もいましたが、自分は義務教育を終えました。

――学生時代、平日と休日はどのように過ごしていましたか? おそらくサッカー漬けの生活だったと思いますが。
ジョー 平日は学校に通っていて、週末はフットサルとサッカーの試合が両方ありました。自分の記憶だと休日はなかったですね(笑)。たまに両方の試合がない日もあるのですが、近所の友達と一緒にボールを蹴っていました。

――7歳でコリンチャンスの育成組織に入団したということですが、コリンチャンスを選んだきっかけは何だったのでしょうか?
ジョー 自分の住んでいた地域から一番近かったからです。パルメイラスもサンパウロも遠いし、サントスは違う市でした。それに自分はコリンチアーノでしたからね。

――コリンチャンスでは16歳の若さでトップチームデビューを果たしました。育成組織からプロになる選手は本当に一握りだと思います。やはり、競争は激しかったですか?
ジョー ブラジルではどの地域にもうまい選手がたくさんいます。コリンチャンスの育成組織は競争も激しいし、人数も多い。うまい選手が次から次へと入ってくる。そこで自分がプロになれたのは“奇跡”と言ってもいいくらいのことなんです。競争が激しいことは分かっていたので、もちろん自分なりに努力はしました。

――当時、ジョー選手と同期でプロになった選手は何人いましたか?
ジョー 自分とエドゥアルド・ハチーニョ(コリンチャンスやフルミネンセ、ロシアのCSKAモスクワなどに在籍)、そして昨季までヴィッセル神戸でプレーしていたニウトンの3人だけでした。数百人いる中からプロになれるのはほんのわずかですし、プロとして続けていけるのも本当にわずかなんです。

――世界各国にいろいろな育成方法がありますが、ブラジルの育成年代で強調して教えられたことはありますか?
ジョー “プロ意識”だと思いますね。ブラジルでは育成年代から選手たちのことをプロとして扱ってくれて、クラブから生活支給も受けます。プロになってからどう振る舞うかではなく、プロ意識を持った状態でプロになるべきということを一番最初に教わります。そこが他国との大きな違いだと思うし、自分がここまでプロを続けてこられた秘訣ですね。

――具体的にはどんなことを教わるのですか?
ジョー トレーニングメニューから食事の時間まで厳しく管理されていました。すべての分野でプロに近い扱いを受けていましたね。たまに保護者から「厳しすぎるんじゃないか?」というクレームが入るんですけど、自分はプロになるために必要なことだと思っていました。

■ブラジルと日本の違いは“感情”

――今季から名古屋に加入しました。来日前、日本のサッカーについてどんなイメージを抱いていましたか?
ジョー 自分の中ではスピード感のあるサッカー、そして全員がよく走るというイメージがありました。ただ、各選手のクオリティに関しては正直それほどでもないだろうと思っていたので、多くの選手のクオリティが高いことにすごく驚きました。

――ジョー選手が昨季までプレーしていたブラジル全国選手権と比べると、Jリーグはより集団で戦うイメージがあります。実際にプレーしてみていかがですか?
ジョー まずブラジルと日本では“感情”に違いがありますね。ブラジルの選手はとにかく競り合いや勝利に対する意欲が強い。日本人と比べて感情をむき出しにしながらプレーしているんです。感情を表に出すという部分に関して、Jリーグにはちょっと物足りなさを感じますね。ただ、Jリーグがすごいのは、どの選手も技術が高く、平均してみんなうまいところですね。そこは実際にプレーしていて感じる一番の違いです。

――Jリーグで新たに学んだことはありますか?
ジョー “動き”ですね。ただ動くのではなく、どんな意味を持って動くのか。そこを学んでいます。ブラジルではどちらかと言うとボールを持ってから何をするかがメインだったのですが、日本の場合はその前に動くということがすごく大事になってくる。そこは今後のプロ生活にとって、すごく勉強になっている部分です。

――ピッチ上で足りないと感じる部分はありますか?
ジョー 一つ挙げるとすれば詰めの弱さ。守備の局面で相手に詰める時はもっと詰めていかないといけない。それと個の競争心をより高めていくことも必要かもしれないですね。日本の選手は両足を使えるし、技術があってパスがうまくてスピード感もある。競争心が高まれば、Jリーグはこれからもっと成長するはずです。

――Jリーグが世界を代表するリーグになるために、今後どんなことが必要でしょうか?
ジョー Jリーグではみんなが何度も何度も同じプレーをしますが、ブラジルでは一つのプレーを毎回違う形で見せることが求められる。いわゆるアドリブ力や対応力です。毎回同じ方向に進むのではなく、いろいろなことにトライすることが大事だと思います。チャレンジ精神を高めていけば、世界から注目を浴びるし、Jリーグがどんなリーグなのかが世界に広まるはずです。

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By 三島大輔

サッカーキング編集部

サッカーキング編集部所属。 週刊J2&月刊J3 MC。Jリーグ&ブラジルサッカーウォッチャー。

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