今季岐阜へと加わった山岸祐也 [写真]=J.LEAGUE
■苦労をステップアップに変えた、岐阜の背番号9
大宮相手にアウェイで引き分け、連敗を5でストップした最下位の讃岐と、怒涛の3連勝で8位まで順位を上げてきた岐阜が、ピカスタで対峙する一戦。このゲームでは、リーグ前節の水戸戦で移籍後初ゴールを叩き出し、存在感をアピールしたばかりでもある岐阜の9番をフィーチャーしたいと思います。
今季から岐阜へと加入した山岸祐也は千葉県出身。小学年代と中学年代を柏ラッセルで過ごした後、福島県の尚志高校へ進学すると、2年時には高校選手権をベンチメンバーとして経験。そして、3年時の選手権ではチームのエースとして再び全国の舞台に帰還し、福島県勢初となるベスト4進出を手繰り寄せ、国立のピッチで得点も記録します。
実はその選手権直前の高円宮杯プレミアリーグEASTで、大敗を喫した相手に「オマエら選手権出るのかよ」などと言われたことに発奮。「試合中は負けていて何も言い返せなかったから、『その悔しさを選手権にぶつけよう』というのはみんなで言っていたんです」と明かした山岸。強気のメンタルは流通経済大学時代もそのままで、1年時からトップチームには絡んでいたものの、「自分はできると思っているのに、スタッフと噛み合わなくて、最初の頃は言い合ったりしましたね」とのこと。何回もトップチームから落とされ、復帰して、を繰り返しながら、「そこから這い上がって来て、という経験が凄く生かされています」とも口に。苦労を自身のステップアップに繋げる意欲は昔から変わらないようです。
プロキャリアをスタートさせた群馬では、1年目からリーグ戦33試合に出場し、5得点をマーク。上々のルーキーイヤーを過ごしましたが、仲も良かった同期入団の瀬川祐輔と中村駿が揃って移籍した昨季はキャプテンの重責を託されたなかで、チームの不調に飲み込まれる格好で自身のパフォーマンスも上がらず、無念のJ3降格を突き付けられます。そして、数クラブのオファーの中から、新天地として選んだのが岐阜。大木武監督が展開する独特なスタイルへ、トライする決断を下しました。
2018年シーズンも開幕スタメンこそ勝ち獲ったものの、以降はけがもあってなかなか出場機会を得られない日々の連続。久々に途中出場でピッチに立った第7節の甲府戦後、大木監督は「新加入なのでキャンプからずっとチャンスを与えてきたんですけど、なかなかそこで良いパフォーマンスが出てこなかった」と明言しつつ、「彼は点を取れますね。例えばミニゲームの練習をやっても、一番点を取るのは彼ですね」という評価も。それでも結果という意味では期待に応え切れない状況下で、実に14節ぶりのスタメン起用となった前節。山岸の蓄えてきたパワーは、とうとう爆発の時を迎えます。
まずは18分に遠藤保仁を彷彿とさせるような“コロコロPK”で今季の初ゴールを奪うと、後半にも相手の隙を突いて追加点となるPKを獲得。さらに、65分には高い位置でボールを奪った流れから、宮本航汰のシュートがこぼれた所にきっちり反応して、自身2点目をゲット。終わってみれば3ゴールに絡む活躍で、チームの3連勝に大きく貢献。ようやくホームで岐阜のサポーターに、自らの価値を証明するプレーが披露できたのではないでしょうか。
最下位と苦境が続く讃岐の前節は、先制しながら一時は大宮に逆転されたものの、ショートコーナーから佐々木匠のクロスという先制点と同じ形で同点弾をマークし、久々に勝ち点を獲得。17試合目にして初めて手にした複数得点も追い風にしたい所です。なお、両チームのリーグ戦における対戦成績は、讃岐から見て3勝1分4敗とほぼ五分のデータが。ここは山岸のさらなる活躍にも期待しつつ、岐阜の好調さが讃岐の勢いを抑え込むと予想。「2」にマークします。
■チームの重要なポジションを担う“東京五輪世代”
ゴールデンウィーク以降は黒星がかさみ、現在は2連敗中の17位熊本と、前節は徳島に競り勝って今季2度目の連勝を達成した2位福岡が、水前寺でぶつかる『バトル・オブ・九州』。この一戦からは熊本の下部組織で育った、期待の20歳にスポットを当てたいと考えています。
甲斐敬介、森川泰臣、嶋田慎太郎、上村周平に続き、熊本ユース出身として5人目のトップ昇格者となった米原秀亮。既に高校2年生だった2015年の天皇杯1回戦でトップチームデビューを飾っていたこともあって、実質プロ1年目の昨季も期待を集めていましたが、残留争いを繰り広げていたチーム状況と自身のけがも重なって、リーグ戦の出場は3試合にとどまります。
ところが、渋谷洋樹監督が新たに就任した今季は、3バックの左でいきなり開幕スタメンを勝ち獲ると、以降は3-5-2の布陣の中で中盤アンカーの定位置を確保。指揮官も「彼に期待しているのはコネクトして縦にボールを入れるとか、背後に入れるとか、そこのジャッジを間違えないこと」と話すなど、司令塔としての役割を期待されながら、実戦経験を着々と積み重ねています。
本人はもともと中盤の選手ということもあり、「やっぱりアンカーになって、ゴールに繋がるパスだったり、自分の所でゲームを創れるので楽しいですね」とのこと。第7節の新潟戦では安柄俊に絶妙のスルーパスを繰り出し、アシストを記録。「それが自分の特長でもありますし、アンカーの所から前に入ればチャンスも広がると思うので、そこは試合も練習も意識してやっています」とも語っており、攻撃面では試合を追うごとに手応えの増している感じが窺えます。
ただ、まだ中盤で不用意にボールを失う場面も。2試合の最終ライン起用を経て、ドイスボランチの一角で出場した前節の大分戦も、米原のロストからカウンターを受けるシーンが散見。後半は少し最終ラインに落ちながら、ビルドアップに積極的に加わったことで、チーム自体も攻撃の時間を増やすことに成功しましたが、そのポテンシャルを考えれば、シビアなゾーンでの輝きも求めたい所。本人も「自分が良ければチームも良くなると思いますし、自分が悪ければ良くない試合になると思うので、一番重要なポジションなのかなと思います」と自覚は十分。より決定的なシーンに絡んでいくことが、さらなるステップアップには必要な要素かもしれません。
東京五輪世代に当たる1998年4月20日生まれ。「オリンピックは狙いたい所ではありますが、今はまずは熊本で結果を残したいですね」と話しつつ、「少し前までは『まだオリンピックって現実的じゃないな』と思っていたんですけど、試合に出続ければいろいろな人が見てくれますし、『少しは近付いているのかな』と思いますね」という成長の実感も口にしています。184センチというサイズに、レフティというスペックも相まって、一気にブレイクする可能性も。思わず期待したくなる雰囲気を纏っている選手であることは間違いないでしょう。
熊本と福岡のリーグ戦における対戦成績は、熊本から見て5勝5分8敗とやや分が悪く、ホームゲームに限って見ても3勝2分4敗とやはり黒星が先行しています。そんな中での今節は「自分がチームを引っ張れるくらいの気持ちで、年齢関係なくやっていきたいですね」と言い切る米原のプレーにも注目しつつ、熊本が粘り強く勝ち点を引き寄せると予想し、両者が1ポイントずつを分け合う「0」にマークしてみます!
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第18節
2018年6月10日(日)14時キックオフ
カマタマーレ讃岐vsFC岐阜(Pikaraスタジアム)
■明治安田生命J2リーグ第18節
2018年6月10日(日)14時キックオフ
ロアッソ熊本vsアビスパ福岡(熊本市水前寺競技場)
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