5位と好調を維持する琉球。今節は相模原ギオンスタジアムに乗り込む。
■JFLや地域リーグも経験した、盛岡の“30歳コンビ”
リーグ前節の福島戦で引き分け、連敗を4で食い止めた16位の盛岡と、5戦未勝利の2連敗中で最下位に沈む北九州という、何とか浮上のきっかけを掴みたい両チームが対戦する第13節。この一戦からは盛岡でプレーする2人の“元JFLリーガー”に注目してみました。
2011年まで群馬県高崎市を拠点に活動していたアルテ高崎。このチームの在籍経験を有するのが、盛岡でプレーする益子義浩と田中舜の2人です。中学時代は横浜FMジュニアユース、高校時代は都立駒場高校でプレーした益子は、名門の国士舘大学へ進学すると、養父雄仁や柴﨑晃誠が最上級生だった1年の後期からリーグ戦で出場機会を獲得。同級生に柏好文、伊東俊、内藤圭佑を筆頭に9人のJリーガーを擁したチームで、中盤にアクセントを加える存在として重宝され、卒業後は大学の同期に当たる松尾昇悟とともにアルテ高崎へ入団します。
この頃のアルテ高崎は常に残留争いを強いられており、益子が加入した2010年もリーグ17位でJFL入替戦へ。私も取材した三洋電機洲本との入替戦第2戦は、後藤義一監督も「もうやりたくないです。胃が痛いよ……」とこぼすほどの緊張感が。岩間雄大や岩舘直らも出場したそのゲームで、益子はベンチで90分を過ごしましたが、チームは1-1で引き分け、2戦合計4-1で何とか残留を達成。翌シーズンもJFLを舞台に戦うことが決まりました。
その“翌シーズン”にアルテへと加入したのが田中。中学時代はACNジュビロ沼津で、現在は沼津の指揮を執る吉田謙監督の指導を仰ぎ、清水東高校時代は内田篤人、多々良敦斗と2人のJリーガーを同級生に持ちながら、全国大会への出場は叶わず。立教大学を卒業し、一時は大手銀行に就職しながらも、サッカーへの情熱を捨てられずに、アルテで“現役復帰”を果たします。
2011年シーズンのアルテも苦戦の連続。益子はリーグ戦31試合出場、田中は30試合出場と、2人とも主力としてチームを牽引したものの、16位という結果に。本来は入替戦に回る順位の中、他チームの昇格や脱退で残留は決まりましたが、シーズンオフにクラブはJFLからの退会を決定。事実上チームは消滅という形になり、益子は東北1部の福島へ、田中は北信越1部のJAPANサッカーカレッジへ移籍し、地域リーグからの再出発を余儀なくされることになったのです。
JFL昇格も経験した福島で3シーズンを過ごした益子は、2015年に盛岡へと完全移籍。一方の田中は2013年に東北1部時代の盛岡へと一足先に加わっており、両者はJリーグのステージで4年ぶりにチームメイトに。田中は2016年から前述した中学時代の恩師でもある吉田監督の下、沼津での2年間のプレーを経て、今季から盛岡へ完全移籍で復帰。第9節のFC東京U-23戦で2人は久々に同時出場を果たしており、チーム最年長の30歳コンビはまだまだサッカーへの意欲を燃やし続けているはずです。
16位と17位の対決だけに、言うまでもなく意地のぶつかり合う激戦必至。昨季の対戦成績は北九州のシーズンダブルでしたが、今回の90分間にあまりデータは意味をなさないかもしれません。とにかく好ゲームを期待したい一戦は、それでもここまでの2勝をいずれもホームで挙げている盛岡が、公式戦7試合ぶりの白星を手繰り寄せると予想。「1」で勝負します!
■プロとしての第一歩を踏み出した、琉球のニューカマー
4戦無敗から一転して2連敗を喫し、現在は12位につけている相模原と、長野にホームで2-0と快勝を収めた前節を受けて、5位へとジャンプアップした琉球が、相模原ギオンスタジアムで対峙する今節。このゲームではJリーグデビュー戦でいきなりゴールを奪った、琉球のニューカマーをご紹介したいと思います。
既に2018年シーズンのJ3開幕戦を終えた3月15日。琉球から発表された新加入選手のリリースを見て、思わず「おっ!」と声を上げたのを覚えています。171センチと小柄な部類に入るサイズながら、とにかく仕掛ける姿勢と抜群の得点感覚が常に印象的だったフォワード。“和田凌”の名前がそのリリースには記されていました。
千葉の下部組織に在籍していた和田は、既に中学3年時に活動の場を移していたU-18でもレギュラーを獲得。その年のJユース杯では高円宮杯全日本ユースでベスト4に入るなど、2010年の高校年代ではトップクラスの実力を有していた三菱養和SCユースからもゴールをマークし、周囲の注目を集めます。
初めて彼のプレーを見たのは2012年のプリンス関東。年始の高校選手権で市立船橋の日本一に貢献した、小出悠太と種岡岐将のセンターバックコンビ相手にも臆さず仕掛けまくり、ヘディングで決勝点まで記録。聞けば手術明けで復帰したばかりとのことでしたが、まるでウェイン・ルーニーのような推進力は、とにかく圧巻の一言。当時の菅澤大我コーチも「アレはゴリゴリタイプだね」と称していました。
とりわけ強烈なインパクトを放ったのは2013年クラ選関東予選のFC東京U-18戦。後半に入ってハーフカウンターから左足で豪快な先制ゴールを叩き込むと、同点で迎えた終盤にもこぼれ球に詰めて勝ち越し弾を決めた上に、アディショナルタイムには華麗なループでハットトリックを達成。副島博志監督も「得点もそうですけど、守備の献身性も含めて成長を感じます」と試合後に評価を。改めてそのポテンシャルを見せ付けられ、末恐ろしさすら覚えたことを記憶しています。
ただ、トップチームへの昇格は見送られ、進学した阪南大学でも河田篤秀や外山凌、前田央樹、同期の山口一真など、卒業後にプロへと進むことになる強力フォワード陣の中で、なかなか出場機会を得られなかった和田。大学時代に唯一プレーを見たのは、昨年末のインカレ2回戦。2点ビハインドの後半途中から出場したものの、シュートシーンは訪れずにチームも敗退。個人的にも彼の今後が気になっていただけに、琉球への加入は嬉しいトピックスでした。
そして前節の長野戦。スタメンでのJリーグデビューを果たした和田は、序盤から“ゴリゴリ”の姿勢を披露すると、65分に中川風希のスルーパスからGKと1対1の場面を迎えます。右足で思い切り振り切ったボールは、豪快にゴールネットへ。その一連はまさに、千葉U-18時代から何度も見ていた彼の形。勝利に貢献する鮮烈なデビューを飾り、とうとうプロとしての第一歩を踏み出した和田の、今後の活躍にも大いに期待したい所です。
相模原は2試合続けて後半終盤に決勝ゴールを許し、痛い連敗を突き付けられているだけに、3試合ぶりに帰還するホームで巻き返しを図りたいのが今節。なお、両チームのリーグ戦における対戦成績は、相模原から見て3勝5分2敗とドローが多い構図に。ここは両チームの調子とデータを考慮して、ドロー決着を予想。「0」にマークします。
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。
■明治安田生命J3リーグ第13節
2018年6月10日(日)13時キックオフ
グルージャ盛岡vsギラヴァンツ北九州(いわぎんスタジアム)
■明治安田生命J3リーグ第13節
2018年6月10日(日)14時キックオフ
SC相模原vsFC琉球(相模原ギオンスタジアム)
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