サイドを駆け抜け、長野の攻撃を牽引するFW三上陽輔 [写真]=J.LEAGUE
■加入したばかりの相模原で存在感を示すセンターバック
ディフェンディングチャンピオンながら、やや苦しい序盤戦を経て、現在は9位につけている秋田と、なかなか安定した結果を出し切れず、前節もホームで敗れた13位の相模原がA-スタで激突する一戦。このゲームからは、6月に相模原に加入したばかりのセンターバックをご紹介したいと思います。
184センチ、74キロの恵まれた体格を誇る森本大貴は米子北高校出身。高校時代はキャプテンを務め、3年時の高校選手権では2回戦で、奇しくもこのタイミングでチームメイトになった田中雄大を擁する青森山田高校と対戦し、PK戦で惜敗したものの、森本自身は1得点をマーク。進学した関東学院大学でも4年時にキャプテンを任され、チームを関東リーグ昇格に導き、大卒ルーキーとして今シーズンから松本へ加入します。
「サッカー自体の考え方もそうですし、フィジカル面だったり、いろいろな面で大学とは全然違うなと思いました」というプロの世界。反町康治監督の指導の下、成長している実感はあったものの、リーグ戦に出場するまでには至らず、「自分の中で試合に出たいという気持ちがあったので」相模原への育成型期限付き移籍を決断。6月からは大学の4年間を過ごした神奈川の地に戻り、新たなチャレンジを始めることになりました。
すると、第14節の福島戦では加入直後にもかかわらず、スタメンフル出場で相模原デビュー。「まだこっちに来て短いんですけど、ゾーンで守備するというよりは相手に対人で取りに行くという感じなので、自分の持ち味を結構出せると思います」と語ったように、チームスタイルにもフィットしながら3試合続けて90分間を戦い抜き、センターバックの定位置を確保。「続けて練習してきているので、その部分は負けたくない」という空中戦の強さを武器に、相模原守備陣の中で存在感を高めています。
そんな森本の大きな刺激になっているのは、学年的には入れ違いにあたる高校の先輩が世界の舞台で戦う姿。「今も全部試合も見ていますし、意識してやっています。僕もディフェンスをやっていたので、『昌子さんみたいになりたいな』と思っていました」と自ら口にする昌子源の存在が、彼に与えている影響は非常に大きいそうで、「高校時代も何度か練習に来てくれたので、連絡を取る機会もありました。W杯後にまたゴハンに連れて行ってもらって、いろいろ話を聞きたいです」とのこと。同じ米子北出身のセンターバックとして、「まだ僕も若いですし、今は盗める所を盗んで、ちょっとずつ近付けていけたらいいなと思っています」という森本も、“先輩”のようにさらなる飛躍が期待されているのは間違いありません。
前節のG大阪U-23戦は、3失点を喫して2-3というスコアでホーム黒星。「失点が多かったですし、自分としても止められる所もいっぱいありましたし、不甲斐ない試合だったと思います」と口にしながら、着実に積み上げているものへの手応えは掴んでいる様子。「試合の中でミスすることやできたことを知ることは自分の中で大きいことで、練習の中では味わえないことが多いので、良い経験になっています」というその経験を、チームの勝利に還元できるかどうかが、これからの森本の価値を左右していくはずです。
今節対峙する秋田は、先週末のリーグ戦はお休み。直近の鹿児島戦では終盤の失点で追いつかれてのドローと、決して好リズムとも言い切れない所。ここは「自分は別に上手い選手ではないので、気持ちであったり、泥臭さを忘れずにやっていきたいと思います」ときっぱり話した森本の奮闘に期待しつつ、アウェイで相模原が勝利を挙げる「2」へのマークで勝負します!
■ポリバレントさが武器の、長野のサイドプレーヤー
監督交替以降は1勝1分1敗と、まだ完全な復調傾向とも言い切れない14位の長野が、こちらも監督の入れ替わりを経て、少しずつ勝ち点を積み重ねている15位の富山とホームで対峙する第17節。この90分間からは、古巣対決を迎える長野のサイドプレーヤーにスポットを当てたいと考えています。
中学年代から札幌の下部組織で育った三上陽輔は、フォワードとしての才を見込まれ、まだ高校3年生だった2010年3月にトップチームへ2種登録されると、5月30日に行われたJ2第15節の富山戦でJリーグデビュー。そこから少しずつ出場時間を積み重ね、第30節の甲府戦ではJリーグ初ゴールまで記録。秋口には正式にトップチームへの昇格が決定し、晴れてプロ選手としてのキャリアをスタートさせます。
翌2011年シーズンも東日本大震災による中断以降はスタメンで起用され、第12節の鳥取と対峙したホームゲームでは2得点を奪うなど、順調にステップアップしているように思われましたが、J1昇格争いを繰り広げるチームの中で、6月以降は徐々にベンチスタートの回数も増え、終盤戦ではなかなかメンバーに食い込むこともできなくなっていきます。
J1へのチャレンジとなった2012年シーズンは、トップディビジョンで苦しむチームと歩調を合わせるように、三上自体にも活躍の場が回ってくる機会が少なく、リーグ戦は2試合に途中出場したのみ。再びJ2でのプレーとなった翌2013年シーズンも、第25節からはリーグ4試合で3得点と、ブレイクの予感を漂わせたものの、終わってみれば13試合4得点という数字に対し、クラブは契約満了を通告。三上はプロデビューの相手になった富山へと、新天地を求めることになりました。
加入初年度の2014年は定位置を掴むまでに至らなかったなかで、富山にとってJ3での再スタートを余儀なくされた翌2015年は、熱血漢で知られる岸野靖之監督の下、ポジションがストライカーからボランチやサイドバックへ変化した三上は、コンスタントに出番を与えられ、シーズン途中で就任した澤入重雄監督からの信頼も厚く、プロ5年目にしてキャリアハイのリーグ戦27試合に出場。翌2016年シーズンもレギュラーとしてリーグ戦27試合に登場し、ようやくそのポテンシャルを発揮する場に恵まれます。
そんな三上に触手を伸ばしたのが、同じJ3のライバルクラブであり、悲願のJ2昇格を至上命令に掲げる長野。完全移籍で加わったチームで、ポジション争いに身を置くなか、昨年のJ3第21節のホーム鳥取戦では2得点をマーク。偶然そのゲームを長野Uスタジアムで取材していたこともあり、その嗅覚鋭いドッピエッタからは、やはり本来のゴールセンスを感じたことをはっきりと覚えています。
迎えた今シーズンも右サイドバックを主戦場に、レギュラークラスとして奮闘中ですが、ゲームによっては最前線やサイドハーフでの出場も。ポリバレントさも武器に携えつつ、サイドの活性化を担う三上のプレーが、巻き返しを図る長野にとっては欠かせません。ちなみに昨シーズンの対戦は、三上がフル出場した第10節では、1-0でホームの長野が勝利を収めれば、三上が欠場した富山での第32節も2-1でアウェイチームが競り勝ち、長野がシーズンダブルを達成。今回の対戦は三上の活躍に期待しつつ、そんな相性も考慮すると、ホームの長野が手堅く勝ち切ると予想。「1」にマークします。
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。
■明治安田生命J3リーグ第17節
2018年7月8日(日)15時キックオフ
ブラウブリッツ秋田vsSC相模原(あきぎんスタジアム)
■明治安田生命J3リーグ第17節
2018年7月8日(日)17時キックオフ
AC長野パルセイロvsカターレ富山(長野Uスタジアム)
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