「新しく入ってきた選手が新しい風を吹かすことができれば流れは変わってくる。そういうのに貢献したいと思っているので頑張りたい」
高木利弥は意気込みをそう口にした。
現在、柏レイソルは天皇杯を含めて公式戦3連敗中。前節の鹿島戦では守備が崩壊し、2-6の大敗を喫した。お世辞にもチーム状態が良いとは言えない。ただ、状況が悪いときに、新たに出場機会を得た選手が起爆剤となり好転するケースは多い。高木は、その可能性を秘めているとともに、なによりも彼自身が「この停滞したチームの流れを打破したい」と高いモチベーションを抱く。その強い気持ちが、「新しい風を吹かす」という言葉となって表れたのだ。
ユン・ソギョンと古賀太陽の移籍により、手薄になった左SBを補強すべく、高木は7月4日にジェフ千葉から柏へ移籍した。高木を獲得した理由を下平隆宏強化本部ダイレクターは次のように語った。
「彼のアップダウンできるスタミナは武器になると考えています。攻撃面はかなりアクセントになると期待していますし、左利きなので、縦に行ってからのクロス精度が高く、彼のファーストタッチの持ち方は良いので、コツさえつかめばビルドアップにも問題なく対応できると思います」
加入から3週間がすぎたばかり。戦術面、コミュニケーションなど、完全にチームにフィットしたわけではないだろう。ただ、伊東純也とは神奈川大学時代のチームメートだ。「純也のおかげでスムーズに溶け込めています」と高木が語るように、ピッチ内外におけるチームへのフィットには順調さがうかがえる。
前節の鹿島戦は85分からピッチに立ち、柏でのデビューを飾った。しかし、すでに6点を奪われ、勝敗が決まりかけていた状況だっただけに、流れを変えるには難しい状況だった。
今週のトレーニングでは主力組に入るケースが多くなり、28日の神戸戦でスタメンに名を連ねる可能性が出てきた。“新しい風”を巻き起こす絶好のチャンスが訪れようとしている。そこで期待されるのが、積極果敢な攻撃参加と左足のキックだ。柏の最大のストロングポイントは、伊東と小池龍太による右サイドアタックであることは言うまでもない。高木の存在によって左サイドが活性化されれば、自ずと“新しい風”は吹いてくるだろう。それでも本人は、いたって冷静だ。
「神戸は個人の能力が高く攻撃的なサッカーをしてくる。まずは守備でゼロに抑えることが大事。そこからの攻撃なので、守備を念頭に置きたい。攻撃は好きですし、攻撃参加は自分の武器でもあるので、守備を意識しながらそこを発揮できればいいと思う。鹿島戦の負けを次に活かさないと意味がない。しっかり準備していきたい」
最後の言葉が全てである。鹿島戦の大敗で浮かび上がった問題点を改善しない限り、状況は変わらない。まずはチームとしてその修正ができるかが大前提。それができてこそ、新しい風を吹かせることができる。高木は、その重要性をよく理解している。
文=鈴木潤