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【コラム】イニエスタとポドルスキの“つなぎ役”担う19歳…急激な成長曲線を描く郷家友太

2018.08.13

プロ1年目で中盤の軸となっている郷家(中央)[写真]=J.LEAGUE

 南アフリカW杯王者であるスペイン代表の軸を担ったアンドレス・イニエスタ、4年後のブラジルW杯でドイツ代表の優勝に貢献したルーカス・ポドルスキがJリーグの舞台で初共演した11日のヴィッセル神戸対ジュビロ磐田の一戦。開始15分にはポドルスキの世界基準のパスからイニエスタがJリーグ初ゴールを奪う。縦のボールに素早く反応し、止めに来た大井健太郎を反転で、さらにGKカミンスキーをもドリブルで抜き去って右足で決めた芸術弾は見る者に驚きと感動を与えた。

 同じピッチに立っていた藤田直之が「すげえ」と思いながら世界の妙技にくぎ付けにされる中、プロ1年目・19歳の郷家友太も世界基準を実感していた。「2人が揃っていて緊張しちゃいました(笑)。ルーカスの縦パスは『あれが世界レベルなんだ』というのを間近で見れた」とイニエスタとともにインサイドハーフを務めた若武者は目を輝かせた。

 ワールドクラスの2人の間に陣取った背番号27は凄まじい運動量でアップダウンを繰り返し、攻守両面でチームに貢献する。この日の郷家の走行距離は両チーム最多の10.507キロ。最後には足がつるほどだったが、運動量が少なかった30代の2人を補いつつ、攻撃時は何度もペナルティエリア内へ侵入。守備でも前から相手を追い、プレスバックにも確実に行っていた。もちろん勝利を引き寄せたのはイニエスタとFC岐阜から加入したばかりの古橋亨梧の得点によるものだったが、チームを円滑に回したのは185センチの若きMFのハードワークがあったから。そこはこの春まで在籍していた高校サッカーの名門・青森山田で叩き込まれた部分に違いない。

郷家友太

名門・青森山田で名を馳せた [写真]=Getty Images

 高校2年時の選手権制覇で一躍知名度を高めた郷家は、今季から神戸に加入すると瞬く間に出番を得た。開幕直後の3月7日、ルヴァンカップのV・ファーレン長崎戦でプロデビューを飾り、同月18日のセレッソ大阪戦でJ1初先発。さらに4月18日、ルヴァンカップの長崎戦でプロ初得点ととんとん拍子に階段を駆け上がり、ここまでのJ1では21試合中14試合に出場。イニエスタ、ポドルスキ共演のつなぎ役に抜擢されるまでになったのだ。

「イニエスタと同じチームになって、1本1本のパスやシュートの精度だったりを日々、間近で見れるようになった。そこは自分に足りない部分だから絶対に改善しないといけないという自覚が強まりました。イニエスタは目が合ったらパスが出てきそうな雰囲気があるので、信じて前へ行けばいいと思ってやれてます」と同じ中盤を形成するイニエスタとの信頼関係も日に日に深まっている。

 同時に、彼自身の技術や戦術眼も短期間で劇的に変化している印象だ。若い選手は何か一つのきっかけで急激な成長曲線を描くことがあるが、今の郷家はまさにそういう状況なのだろう。欧州へ移籍した堂安律(フローニンゲン)や冨安健洋(シントトロイデン)ら同世代の面々でさえも、これだけのクオリティのスターと同じピッチでプレーする機会はないのだから、この環境を最大限生かさなければあまりにもったいない。

「僕が目指しているのは、ラキティッチ選手やモドリッチ選手。点も決めれてゲームメークもできる。何でもやれる選手になりたいと思ってます。彼らは高校時代から好きな選手で、今回のロシアW杯で見る機会も多かったけど、僕に足りない部分がきちんとできていて本当に参考になりました。そしてヴィッセルにイニエスタも来てくれた。いいお手本になっているし、僕自身の前を向く意識、チャンスに顔を出す部分も増えたと思う。より精度を上げていきたいですね」と本人も飽くなき向上心をのぞかせる。

郷家友太

プロデビューから約5カ月、成長曲線を描き続けている [写真]=J.LEAGUE

 郷家にとって目先の目標は所属する神戸のACL出場権獲得だが、10月のAFC U-19選手権(インドネシア)も大きな関門になる。ここで4位以内に入って世界への切符を掴めば、2019年にポーランドで開催されるU-20W杯に参加できる。その翌年には東京五輪があり、さらに2022年にはカタールW杯がある。ボランチもこなせる185センチの大型MFというのはこれまでの日本代表にはあまりいなかっただけに、関係者の期待も大きい。4年後に青森山田の先輩・柴崎岳(ヘタフェ)と中盤を形成するようなことになれば、恩師・黒田剛監督に最高の恩返しができるのではないだろうか。

「U-19代表の遠征でロシアに行かせてもらって、日本代表の試合も見ましたけど、本当にいい刺激を受けたし、僕も階段を一つひとつ上っていければいいと思います。そのためにもヴィッセルで試合に出続けること。そうしないとコンディションも整わないし、代表にも選ばれない。ここで出続けて、活躍することに意味があると思います」

 こういうフレッシュな人材が今のJリーグに出てきているのは心強い限り。郷家には大物外国人コンビを自分から動かすような発信力や存在感を示し、成長スピードをさらに高めてほしいものだ。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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