番組MCを務める岩政大樹(東京ユナイテッドFC)がプロデュースするインタビューコーナー「今まさに聞く」~北海道コンサドーレ札幌・チャナティップ篇 前編~が放送された。
2017年7月に札幌に加入したチャナティップ。その明るいキャラクターでファンからも愛され、今季から指揮を執るペトロヴィッチ監督の下、プレー面でも成長。身長158センチ、体重56キロと非常に小柄だが、9月23日時点でリーグ戦23試合出場6ゴールの好成績を残し、好調を維持する札幌をけん引している。
岩政は2014年に1年間タイのEECテロ・サーサナでプレーしているが、実はチャナティップはこの時のチームメート。リーグカップ戦の優勝を共に果たした仲間でもある。かつての“戦友”との対談は、和やかな雰囲気の中でスタートした。
岩政大樹(以下、岩政) よろしくお願いします。
チャナティップ ヨロシクオネガイシマス(笑)。
岩政 コミュニケーションは、試合中は日本語でしゃべっているんですか?
チャナティップ 「ミギ」、「ヒダリ」、「ウシロ」、「キリカエー!」。主に使用するのはこれぐらいです。「(自分を)ミテ、ミテ」、「ナイスシュ~!」。こんな感じです。
岩政 「ナイスシュ~!」は日本語じゃないけどね(笑)。
■得点能力開花の理由
岩政 日本に来て、この前も素晴らしいゴールを決めました。(J1第21節セレッソ大阪戦、第23節FC東京戦で素晴らしいゴールを決め、話題となった)
チャナティップ 育成してくれたコーチのおかげです。FWなので、点を取らなければなりません。僕は外国籍選手なので、「点を取って実績を残さなければならない」とコーチに言われたんです。そしてチームメートですね。チームメートはフレンドリーに接してくれて、さらに僕のことを信頼してくれました。でもゴールを決めた時のほとんどはラッキーでしたね。
岩政 僕がタイにいた1年間、一緒にやった時は、たぶん1年で2点ぐらいしか取らなくて、散々「ゴール前に入っていけよ!」という話をしていて。先ほどペトロヴィッチ監督にもお話を伺ったんですけど、「ゴールに向かう動きが非常に増えた」とおっしゃっていました。
チャナティップ チャンスの時にドリブルをしなかったり、シュートを打たなかったりしたら怒られました。昔、一緒にプレーしていた頃、大樹も「ゴールの前にへばりついていなければダメだ」と言っていました。
岩政 でもその辺は、異国の地である日本に来て、得点を取らなければいけない、結果を残していかなければならないという意識の変化もあるんですか?
チャナティップ 監督に認めてもらえるようプレーしたかった。それが良い意味のプレッシャーとなり、一生懸命練習して、みんなが僕のことを認めてくれるように努力しました。
■タイから日本へ
岩政 タイにいたら、あれだけのスーパースターじゃない? 自分では言えないと思うけど(笑)。そこから日本に来るというのは、いろいろな面で挑戦する意識がないと、なかなか来る意欲というのは実際には難しいと思うんですけど、「行ってみよう、やってみよう」というところに至った気持ちというのは、どういう部分が大きかったですか?
チャナティップ もっと自分を成長させたかったからです。タイにいたら一番というのは分かっていましたが、日本にはうまいプレーヤーがとてもたくさんいます。もっと先の世界へと自分を成長させたかったし、日本人に認めてもらいたかったからです。
岩政 日本にはいろいろな刺激があると思うんですけど、当時僕がタイで1年間プレーした時に、僕に対して「何で笑わないんだ?」とよく言っていたのを覚えているんですけど。そういう結果に対する厳しさみたいなものが当時の僕にはあって、今はだいぶ柔らかくなりましたけど、外国籍選手として日本に来て、あの時の僕の気持ちが少し分ったり?
チャナティップ 当時、大樹はほとんど誰とも話さず、寝具も自分で持ってきていました。大樹の態度は厳しく、でもそれは優勝したかったからで、優勝すれば(タイに来て)成功したと言えるし、彼には子供もいて、家に帰って子供に会いに行きたかったのだろうと思います。優勝してからは笑うようになりました。
岩政 タイトル取った時ね。2人で一緒にね。
チャナティップ プレー中は楽しかったですか?
岩政 あの時は楽しくないとかそういうことじゃなく、勝たなきゃいけないとか、僕もあの1年で勝負するつもりだったので、負けた悔しさや、勝っても優勝するまでは満足できないという気持ちがあったので、だから「もっと笑えよ」と言われたんだけどね。
チャナティップ 一度試合で負けたことがあったんですが、彼はとても悔しがっていました。シーサケート戦でしたよね?
岩政 おお~シーサケート戦ね(笑)。懐かしい。
チャナティップ 懐かしいです。タイにいた時はどこかに遊びに行ったり、リラックスしたりしましたか?
岩政 遊んで……ないですね。オフの日は家にいて、タイの家ってだいたいプールがついているじゃない。そこでリカバリー。ウォーキングとか。
チャナティップ スゴイネ(笑)。僕が思うに、タイは日本にいる時ほど規律が厳しくないかもしれません。タイではあちこちに遊びに出掛けて、お酒は飲まなくてもショッピングモールに行ったり、友達とリラックスしたりしましたが、大樹は寂しかったでしょうね。大樹がチームにいた時は優勝できたし、すごかったです。
岩政 ジェイ(チャナティップの愛称)は、向こうにいた時はお父さん、お母さんがよく試合を見に来ていたけど、離れて暮らすということは、友達関係も含めて寂しさは感じないですか?
チャナティップ 寂しいです。昔は恋人や父母などの家族がいて、恋人が会いに来てくれれば寂しさは吹っ飛びました。今は友達だけです。たまには父母に会いに来てもらうべきですね。
岩政 そうだよね(笑)。恋人はよく連れてきていたけどね。
チャナティップ 恋人はもういないです(苦笑)。
通訳 今は「チャライ」ですね。
チャナティップ NOチャライ! チャラクナイ。
岩政 (笑)。日本に来て、生活面も難しさはあったと思いますけど、サッカーの面ではどのあたりに難しさを感じましたか? やっぱりスピード感が難しかったですか?
チャナティップ 日本ではボールのスピードも速いし、ポジションごとの規律があって、日本の選手はボールを受けるタイミングがうまくて調和も取れています。タイの選手は、身体能力は高いと思います。でもパスのタイミングやテクニックなどが、まだあまり上手ではありません。例えば大樹はどこに、どのタイミングでボールを送ればいいか、などが分かっています。タイではそうではない。チームメートが近くに来てから考えるんです。あと、日本のほうがアグレッシブで(試合の)ペースが速いです。
毎週金曜日21時から放送されている『スカサカ!ライブ』。次回は10月5日(金)21時からの放送で、キリンチャレンジカップの日本対パナマ戦のプレビューやJ1第29節横浜F・マリノス対北海道コンサドーレ札幌の試合直後レビューなどをお届けする予定。岩政がプロデュースするインタビューコーナー「今まさに聞く」は北海道コンサドーレ札幌・チャナティップ篇の後編を放送する。
By サッカーキング編集部
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