町田の土岐田洸平(左)と山形の本田拓也(右)は、法政大学時代のチームメイトだ [写真]=J.LEAGUE
■法政大学で強烈な輝きを放った、町田の背番号10と山形のキャプテン
リーグ前節の讃岐戦は台風で延期となったものの、現在は3戦未勝利で3位に後退した町田が、松本相手に終了間際で追い付き、勝ち点1を手にしながら、こちらも4戦未勝利と足踏み状態の9位・山形をホームに迎える第36節。このゲームでは、30歳を超えた大学時代の同級生に再会の可能性があります。
町田で背番号10を背負い、ボランチの位置でゲームを引き締める役割を担う土岐田洸平と、山形の中盤で持ち味のアグレッシブなボール奪取を見せつつ、若いチームを牽引する本田拓也。33歳と32歳の2人は法政大学時代のチームメイトでした。
彼らが揃って入学したのは2004年。秋本倫孝や田森大己、谷田悠介、井上平など卒業後にプロへと進むことになる先輩が数多く在籍する環境下で、なんと本田は同級生の市川雅彦とともに1年生の前期リーグ開幕戦にスタメン出場。以降も完全にスタメンへと定着し、結果的に1部昇格を果たすチームの中核を託され、2部リーグの新人賞に輝きます。2年時には1部2位という好成績と合わせてリーグベストイレブンも受賞。北京五輪を目指すU-21日本代表にも選出され、周囲の大きな注目を集めていきます。
一方の土岐田が大学時代に主戦場としてプレーしていたのはフォワード。市川に稲葉久人、井上とのちのJリーガーとポジションを争いながら、献身的なプレーと周囲を生かす上手さを武器に、少しずつ存在感を高めていくと、4年の後期リーグではとうとうスタメンを奪取。リーグ3位に入ったチームの貴重なピースとして活躍を続け、大宮内定を勝ち獲ってみせたのです。
2人にとって大学生活最後の大会となったインカレでは大躍進を遂げます。グループリーグを首位で抜け出すと、準々決勝の東京学芸大学戦は先制されたものの、土岐田と本田のゴールで逆転勝利。準決勝の中京大学戦はやはり同級生の菊岡拓朗が1ゴール2アシストと躍動し、同校として28年ぶりにファイナルへと駒を進めることになりました。
最後の相手は早稲田大学。大榎克己監督率いるエンジ軍団も兵藤慎剛、渡邉千真、鈴木修人、横山知伸、松本怜などスーパーな顔ぶれが。試合は後半に2点を奪った早稲田が勝利し、法政は惜しくも準優勝となりましたが、入部した頃は2部に所属していたチームを、3年で日本一を争う所まで持って行った土岐田と本田の代の強さは、今でも強く記憶に残っています。
それから11年。前述したように卒業後は大宮へ加入した土岐田は、サイドハーフやサイドバックを務めるようになり、大分時代にはセンターバックを務めることも。2015年からは自らが生まれ育った町田へ戻り、やはりユーティリティ性を生かして、様々なポジションを高水準でこなし、今季はボランチで新境地を開拓。清水でプロキャリアをスタートさせた本田は、北京五輪で世界を経験し、鹿島でも2シーズン半に渡ってプレーしながら再び清水へ帰還。2017年からは山形のキャプテンとして、健在ぶりをアピールし続けています。
直近のゲームはお互いにベンチで90分間を過ごしていますが、土岐田のコンバートによって、揃って出場することになればピッチ中央でのマッチアップは不可避。この再会を見逃す訳には行きません。そんな彼らのプレーも注視しつつ、やや停滞しつつある両チームの対戦はドローが濃厚かなと考え、「0」で勝負したいと思います。
■甲府の背番号24は、貪欲に成長を誓う
リーグ前節の栃木戦を劇的に制し、7戦無敗の5位と好調の続く東京Vと、第34節の岡山戦で今季2度目の連勝を飾った14位の甲府が、味スタで激突する一戦。このカードからは、この終盤戦に差し掛かって定位置を確保しつつある、甲府の背番号24に注目しました。
昨季、びわこ成蹊スポーツ大学から甲府に加入した曽根田穣は、もともと愛媛の下部組織出身。1つ上に藤直也や近藤貫太も在籍していたユースで実力を磨き、大学時代は関西選抜にも選出されていたアタッカーは、大卒ルーキーとしてプロサッカー選手の道を切り拓いたものの、残留争いを強いられたチームの中で1年目のリーグ戦出場は3試合。「ずっと試合に出たらやれるという自信は去年から持ち続けていました」とは本人ですが、なかなかその試合に出場するチャンスが訪れません。
今年も序盤のリーグ戦ではベンチ入りも果たせず、ルヴァン杯の途中出場が限られた実戦経験の場という日々が続きましたが、第18節の金沢戦で途中出場ながら今季のリーグ戦で初めて登場すると、いきなりゴールを記録。チームは1-3で敗れたものの、スタメンに抜擢された翌節の大分戦でもゴールを奪い、いきなり2戦連発と凄まじいアピールに成功。以降は飛躍的に出場時間を伸ばしていきます。
今の状況について「周りの人たちが僕を理解してくれて、ボールを良いタイミングで入れてくれるようになったので、前向きでプレーする機会も多くなりましたし、逆に後ろ向きにプレーする時にミスはあるんですけど、自信を持ってやれているのは間違いないです」と言い切った曽根田。ただ、ここまでは12試合で4ゴール3アシストと、一定の結果を残していますが、「点に絡むことは自信にもなりますけど、試合の中でイージーなミスもたくさんしているので、まだ改善することはたくさんありますね」としっかり足元も見つめています。
第35節が台風で延期になったため、実質の前節に当たる岡山戦では2アシストを記録するなど、シャドーの一角として勝利に貢献したものの、「周りの選手たちも監督も、ある程度自由にというか、『好きにやっていいよ』と言ってくれているので、やりやすい環境ではありますね」と口にしながら、「この前の試合も今日の試合も得点はしていないですし、アシストよりは得点にこだわってプレーしているので、そういう面ではまだ不甲斐なさは残っています」と続けた言葉に滲むゴールへの意欲。それでも、「あまりミドルシュートとかは持ってないので(笑)、なるべくゴールに近付いて近付いて、確実に決めていくタイプなので」と報道陣を笑わせるあたりに良い意味での余裕も感じました。
甲府のアタッカー陣はジュニオール・バホス、金園英学、小塚和季、堀米勇輝、太田修介などJ2の中でも人材豊富なだけに、曽根田も常に危機感を持っているとのこと。「前線のメンバーは力のある選手が多いですし、その中から監督に自分を選んでもらうためには練習の中で今まで以上にこだわってやっていかないといけない部分もたくさんありますし、手を抜いたりというのは全くないです。今までと同じ気持ちで臨んではいます」と話す背番号24の今後の飛躍にも、大いに注目したい所です。
そんな甲府と東京Vの対戦ですが、少し気になるデータが。東京Vのホームゲームは、過去にリーグ戦で5回実現しており、東京Vから見て1分4敗。一度も勝ったことがないんです! 今の状況を考えると東京Vの方が好調に思えるものの、数字の事実も見逃せない所。ここはその両方を考慮してドロー決着を予想。「0」にマークします!
文=土屋雅史
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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。
■明治安田生命J2リーグ第36節
2018年10月7日(日)16時キックオフ
FC町田ゼルビアvsモンテディオ山形(町田市立陸上競技場)
■明治安田生命J2リーグ第36節
2018年10月6日(土)15時キックオフ
東京ヴェルディvsヴァンフォーレ甲府(味の素スタジアム)
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