今季から千葉でプレーするゲリア [写真]=J.LEAGUE
10月14日のJ2第37節モンテディオ山形戦、ジェフユナイテッド千葉は2-1で勝利を収め、約2カ月半ぶりにファン・サポーターが待ちわびたホームでの白星を勝ち取った。その中、今季9試合目の出場となったゲリアがピッチでアグレッシブなプレーを見せていた。得点には結びつかなかったが6分、町田也真人とのパス交換から低い弾道の鋭いクロスを入れるも相手GKの対応に遭う。その後も躍動を続けた千葉の右サイドバックは61分にPA手前から強烈なシュートを狙って行った。
「(得点を決めようと)今日はトライしたのですが残念です(笑)。チームとしてポジティブでアグレッシブな姿勢を見せることが出来ました。今日のようなサッカーをベースに攻守で激しさを失わないこと。一つプレーが終わっても止めずにアクションを続ける姿勢が勝利には必要です」と語る声のトーンと表情からは、自身のプレーとチームの勝利に対する手応えを感じさせた。
母国オーストラリアではAリーグのメルボルン・ビクトリーに所属。100試合以上に出場し、2016年にはオーストラリア代表にも選出されている。ただ、彼にとって千葉でのシーズン序盤は順風満帆とは程遠かった。日本のサッカーに順応できずに時間がかかりベンチを温める日が続いた。攻守でテンポが速く、勤勉で規律正しい日本サッカーの印象を「スピードの部分が一番大きいところ。技術的にも一つのミスが致命的になりやすいです」と話す。
しかし、ラインコントロールやアプローチの仕方など、フアン・エスナイデル監督が志向する戦術を日々のトレーニングから体に染み込ませていった。すり合わせと吸収の夏を過ごし、11試合ぶりの出場となったJ2第31節レノファ山口FC戦(4-0)では、ケガで交代をする72分まで安定感のあるプレーを披露した。
エスナイデル監督は「今までハードワークをし、レギュラーを取るために素晴らしい仕事をしてきました。山口戦に関して言えばある程度、場所(先発)を勝ち取ったと思っています。ここに来た時に比べるとかなり良くなりました。将来に関しては安心です」と笑顔を見せてひと息つくと、「ボールを持った時にポジティブなプレーが出来たこと、攻撃的になれたこと、後ろにパスを出すのではなく前に出すこと、ボールのない時に良い攻撃が出来たこと、一番大事な守備がしっかりとしたこと。彼の弱点は守備でしたが山口戦に関しては本当に良かったと思います。その意味で完全形に近いモノでした。常に良い取り組みで何かを学ぼうという姿がありました」と続けた。
ボールを大事にしながらつないで行き、サイドアタックの色が濃いサッカーは、ゲリアのフィロソフィーにもピタリと合っている。日ごろの練習でアピールをしつつ、山口戦で名を上げ、現段階では右サイドバックのファーストチョイスとなり千葉にとっては不可欠な戦力となった。
また、チームメイトとの連係も次第に確立され、右サイドから崩し切りチャンスメークするシーンも増えている。言う間でもなくサッカーは攻守一体のチームスポーツだ。サイドバックは最終ラインの一角として、しっかりと守備を締めながらサイドを駆け上がり攻撃に参加をすることが求められている。中盤の町田は「(ゲリアとは)ボールの出し方や受け方、相手の背後に走ることについての話をします。彼はボールを持った時にパスを刺すのは上手いので隙間を見つけ、僕が動いて助けたい」と、ここぞで時を見計らい後押しする。仲間のサポートを受けながら、その攻撃力を遺憾なく発揮するゲリアはこう言う。
「彼も僕のことを分かってくれているし、僕も彼のことを理解しようとしているので、お互いの特長が出やすい環境になっています。共にハードワークが出来ています」
そして、今節はJ2でナンバーワンの得点力を誇り、首位争いの渦中にいる大分トリニータと対戦する。ハードな守備と相手に引けを取らない攻撃力で白星を手にし、今季初となる3連勝を掴みたい。リーグ戦も残すところ5試合。J1参入プレーオフ進出は非常に厳しい状況だが、一つでも多くの勝利を積み上げ、一人でも多くのサポーターに笑顔を届けるためにも目の前に試合に全力で戦うことが最大のミッションとなる。ゲリアは「数字的に可能な勝点を積み上げるだけです。今日(山形戦)のようなゲームを続ければ、良い方向に向かうと信じています」と気合いを滲ませた。
自らの限界を超えるプレーと千葉の誇りを見せられるか。スケールアップを図るゲリアの“観る者を熱くさせるパフォーマンス”に期待が高まる。
文=石田達也
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