大学卒業後はサッカーと社業に取り組んだ加藤大樹 [写真]=Jリーグ
「こんなに(試合)に出られた年はなかった。一年を通して充実している。試合の中で成長できているという感覚もある」。
そう話すのは、ツエーゲン金沢のMF加藤大樹。山口から完全移籍加入した今季、序盤は途中出場が多かったものの、徐々にチームにフィットすると、いまや欠かせぬ存在に。左サイドハーフのポジションを確保し、主力としてプレーしている。
加藤の武器はなんと言っても抜群のスピード。攻守にアップダウンを繰り返すタフな選手で、スペースに供給されたボールに対し、例えそれがアバウトなものであったとしても、相手DFよりも先に追いつく圧巻の走りを披露する。チームメイトも加藤の特徴を理解しているため、ボールを奪って早い段階でシンプルに相手SB裏のスペースを脅かす場面もある。対戦相手にしてみれば、いわゆる“よーい、どん”の状況になると抑えるのは難しいだろう。
加藤はびわこ成蹊スポーツ大学出身。卒業後の進路にはプロ入りを希望していたが、すぐには叶わなかった。そこにJFLのSP京都FCから声がかかり、加入を決断。2015年はサッカーと社業に取り組んだ。「朝はサッカー、昼から仕事。練習して、社宅に帰ってご飯を食べて、すぐに仕事に行っていた。工場で送り状を発行して仕分けしていた。やって良かったと思う」。
2016年、SP京都FCの活動停止に伴い、加藤のキャリアにも変化があった。その当時、レノファ山口を率いていた上野展裕監督(現甲府)が大学時代の加藤のプレーを見ていた縁もあり、加藤は山口に練習参加し、移籍を果たす。「山口に入って一年目は全く通用しなかった。だけど、コーチとかが結構指導してくれて練習した。最初はベンチ外が続いたけど、雨の群馬戦(16年・第11節)で点を決めてからは途中出場させてもらえるようになった」。
山口に2年在籍したのち、金沢へ活躍の場を移す。今季はリーグ戦36試合に出場しているが、この数字はキャリア最多となる。「試合の中での状況判断、自分の持ち味のスピードが十分通用するというのは分かったし、自信にもなった。こっち(金沢)に来るまではそんなに自信はなかったけど、試合に出て自分の特徴を出すにつれて自信にもなるし、いけるという風に思う」。
充実感をにじませる中でも、課題は明確に見据えている。「僕だったらクロスが多い。付けるボールとか、落とすボールとか、全般的に下手くそだから…(苦笑)。そこはもっと高めていきたい」。速さでサイドを制圧したところからの精度が高まれば、まさに鬼に金棒。「いまの段階の理想は相手のサイドバックの背後を取って、ゴールへ向かうか、中の人に合わせるか」と話す。
シーズン残り3試合へ向け、加藤は「もっと自分のストロングポイントを出したい。強烈な印象、インパクトを与える3試合にしたい」と意気込む。「もっと成長できるし、もっと結果も出せる」。ピッチを駆けるスピードスター。その走りに、終着点はなさそうだ。
文=野中拓也
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