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【土屋雅史氏のJ3展望】群馬はJ2復帰を目指し藤枝と対戦…福島は引退の鴨志田に勝利を捧げたい

2018.11.23

福島でプレーする鴨志田誉は、今季限りでの現役引退を発表している。

■1年でのJ2復帰を目指して…3位・群馬の若きストライカーに注目

 ここにきて4連敗を喫し、16位へ順位を下げた藤枝と、前節はホームで北九州に1-0で競り勝ち、1年でのJ2復帰に希望を繋いだ3位の群馬が『藤枝総合運動公園サッカー場』で対峙する第33節。楽しみなこの90分間からは、開幕直前に加入した群馬の若きストライカーに注目したいと思います。

 大島康樹。22歳。小学4年から柏の下部組織でプレーし、6年時の全日本少年サッカー大会では、3位に入ったチームの中でゴールを積み重ね、大会得点王を獲得すると、U-15でプレーしていた中学3年時の高円宮杯でも、準決勝までの全試合でゴールをマークして、再び全国大会の得点王に。生粋のストライカーとして順調にU-18へ昇格を果たします。

 2学年上に中村航輔、秋野央樹、小林祐介、中川寛斗と昇格者が4人も居並ぶチームは、夏のクラブユース選手権で日本一に輝きましたが、そのタレント集団で1年時から出場機会を得ていた大島は、2年になると9番を背負ってセンターフォワードの定位置を確保。チームの悲願でもあったプレミア昇格を懸けた参入戦でも、勝てば昇格が決まる愛媛ユース戦で先制点を叩き出す活躍を見せ、悲願達成に貢献します。

 迎えた3年時にはトップチームに2種登録されると、7月には天皇杯2回戦の岡山ネクスト戦で、80分に同じ下部組織出身でもあり、同じセンターフォワードの工藤壮人と交替でデビューを飾った上に、アディショナルタイムにはゴールまで記録。さらに4度のベンチ入りを経た第30節の仙台戦ではリーグ戦デビューも果たすなど、ネルシーニョ監督の評価も高く、トップ昇格が決定。工藤以降はなかなか下部組織から育ってこなかった本格派のストライカーとして、大きな期待を集めながら、プロの道を歩み出すことになりました。

 ただ、ルーキーイヤーのチームが3トップを採用する中で、工藤、レアンドロ、クリスティアーノ、大津祐樹、武富孝介など実力者がひしめくポジション争いには割って入れず、リーグ戦の出場はわずかに1試合。むしろJ3に参入していたJ-22選抜に招集される回数が多く、柏での存在感を高め切れません。

 2年目のシーズン途中には、J3を戦う富山に育成型期限付き移籍で加わったものの、5試合で1得点と結果を出し切れず、柏へ帰還した2017年もルヴァン杯で得たチャンスを生かすまでには至らずに、リーグ戦での出場機会は一度も訪れないまま、シーズン終了後には契約満了が発表されます。以降は新天地を求めて様々なチームに練習参加しながらも、なかなか所属が定まりませんでしたが、2018年シーズンの開幕2日前に栃木への加入が決定。そこからさらに、育成型期限付きで移籍することになった群馬が、新たなプレーの場になったのです。

 序盤戦はチームも大島もややもたついたものの、第11節ではF東京U-23を相手にハットトリックを見舞い、その存在を強烈にアピールしてみせると、固め取りを中心に着々とゴール数を伸ばし、第31節までに重ねた数字は9ゴール。そして、前節の北九州では後半33分にヘディングで決勝点を奪って自身のゴール数を二桁に乗せており、ここから迎える負けられない2試合でも大車輪の活躍が期待されています。

育成型期限付き移籍で加わった群馬で、大島は印象的な活躍を見せている。

 藤枝もホーム最終戦を白星で締めくくりたい所ですが、2位の鹿児島に3ポイント差を付けられている群馬は、負ければ鹿児島の結果によってJ2復帰の可能性が絶たれるだけに、是が非でも勝ち点3を手にしたいゲームです。そんな一戦では大島が結果を残すか否かにも注目しつつ、やはりアウェイチームの執念が上回ると予想。「2」で勝負します。

■現役引退発表の“ミスターいぶし銀”……福島の鴨志田がホーム最終戦に臨む

 4連敗に加え、8試合未勝利という苦しい時期から一転、ここ2試合は連勝を飾った9位の福島が、こちらも4連敗を前々節に脱したばかりの8位秋田を、ホームの『とうほう・みんなのスタジアム』で迎え撃つ一戦。このゲームでは今季限りでの現役引退が発表された、福島の“ミスターいぶし銀”をご紹介します。

 神奈川県出身の鴨志田誉は、綾瀬市の綾北中学校から県立の強豪校として知られる座間高校に進学。インターハイ予選は2年時に桐光学園、3年時に厚木北と、ともに全国出場権を勝ち獲ったチームの前に敗退。選手権予選でも1次予選の壁に阻まれて早期敗退となってしまい、冬の全国にも手が届きませんでしたが、鴨志田は地元の神奈川大学でサッカーを続ける選択肢を選びます。

 入学時に所属していた神奈川県リーグを勝ち抜き、2年時に関東2部リーグへ参入すると、鴨志田はいきなり前期第2節の慶應義塾大学戦でゴールを決めるなど、早々に重要なピースとして活躍。1学年上に石神直哉を、2学年下には藤川祐司や三平和司を擁したチームも関東の舞台で6位、4位と確実に好結果を残していく中で、4年時には激戦の2部リーグで初の優勝を果たし、これまた初の1部昇格が決定。後輩たちに最高の置き土産を残して、鴨志田は当時JFLに在籍していた栃木で次のキャリアをスタートさせることになります。

 当時の栃木は、山形でJ2上位争いを経験し、京都をJ1昇格に導いた柱谷幸一監督が2007年のシーズン途中で就任しており、プロ契約選手の増加やトレーニングを夜から昼に変更するなど、環境面にも大きな変化があったタイミング。柱谷監督はシーズンスタートから指揮を執ることのできた2008年、タフなJFLを1年通して戦うために、多少経験はなくてもフレッシュなパワーが必要だと考え、大卒選手を大量に獲得。その7人の中で唯一セレクションを通過し、チームに加わったのが鴨志田でした。

 個人的に柱谷監督とは親交があったので、このシーズンの栃木はかなりの試合を取材する機会に恵まれたのですが、序盤こそ出場機会のなかった鴨志田は、5月過ぎからスタメンに定着し始めると、持ち前のハードワークと気の利くプレーで夏前に記録した6連勝を支える原動力に。そのままシーズン終盤までポジションを守り続け、悲願のJリーグ昇格に主力選手として貢献するまでに成長を遂げたのです。

 松田浩監督が就任したJリーグ初年度の2009年。経験値の高い選手が数多く加入したにもかかわらず、周囲の予想を良い意味で裏切る格好で、鴨志田は熾烈なポジション争いを制し、ボランチとしてチーム最多となるリーグ戦48試合に出場。5月の富山戦ではゴールも記録し、首脳陣とサポーターの厚い信頼を勝ち得ます。何回かミックスゾーンで話を伺ったこともありますが、見た目通りにとにかくマジメな人という印象。真摯に答えてくれる姿勢が嬉しかったことを記憶しています。

 2011年に契約満了となった鴨志田は、翌シーズンにまだ東北社会人1部リーグを戦っていた福島へ移籍。ここでもJFL昇格とJリーグ昇格を経験し、2014年からは再びJリーガーとしてのキャリアを積み上げ、ゲームによってはサイドバックも務めるなど、まさに“いぶし銀”というフレーズが似合う選手として、福島でも確固たる地位を確立。そして、現役引退が先日クラブから発表されたように、プロ11年目を迎えた今季でスパイクを脱ぐ決断を下すことになりましたが、常に全力でプレーするその姿が、ともに戦ってきた多くの選手へ小さくない影響を与えていたであろうことは間違いないでしょう。

鴨志田の献身的なプレーは、ともに戦ってきた多くの選手にとっても模範だったことだろう。

 勝ち点1差と非常に拮抗した状況で迎える“東北ダービー”だけに、互いに負けられない一戦ではあるものの、福島はやはりクラブを8年に渡って支えてきた石堂和人と平秀斗の現役引退も発表されており、ホーム最終戦を是が非でも彼らの花道にしたい所。今回はサポーターも含めたその想いが、スタジアムを包み込むと信じ、福島が勝ち点3を獲得する予想の「1」にマークします!

文=土屋雅史
写真=ⒸJ.LEAGUE

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※本文中の「1」はホームチーム勝利、「0」は引き分け、「2」はアウェイチーム勝利。

■明治安田生命J3リーグ第33節
2018年11月24日(土)13時キックオフ
藤枝MYFCvsザスパクサツ群馬(藤枝総合運動公園サッカー場)

■明治安田生命J3リーグ第33節
2018年11月25日(日)13時キックオフ
福島ユナイテッドFCvsブラウブリッツ秋田(とうほう・みんなのスタジアム)

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