今季は14位でフィニッシュ [写真]=J.LEAGUE
J2リーグ最終節となった栃木FC戦、ジェフユナイテッド千葉はボールを保持するものの守備に重心を置いた相手を最後まで崩せずスコアレスドロー。この結果、16勝7分け19敗、72得点・72失点で14位フィニッシュとなった。J2降格以降、最低順位と最多失点を記録する悔いの残るシーズンとなった。
『勝ち点3が1に。勝点1が0に』。勝ち切れる試合を落とす安定感に欠けた1年だった。「選手のパフォーマンスを引き出すことが出来ず、それによって思っていた結果は出ませんでしたが、やれることはやり切りました。その意味では選手に心から感謝をしています(フアン・エスナイデル監督)」
今季は『継続+進化』をテーマに掲げ、高いレベルでの競争を生み出す強化方針を打ち出してスタートをした。しかし、開幕戦の東京ヴェルディ戦、9分に増嶋竜也が一発退場となり数的不利の状況になると、土壇場で勝ち越し点を許し敗戦。水戸ホーリーホックとのホーム開幕戦では決定力を欠いたことに加え、指揮官が退席を命じられるアクシデントも。結果的に勝ち点1にとどまった。続くホームでのFC岐阜戦も落とすと、第4節の徳島ヴォルティス戦では退場者を一人出し力負けを喫する。第5節のカマタマーレ讃岐戦で今季初勝利を挙げたが、新シーズンへの船出となる開幕戦から羅針盤に狂いが生じ、スタートダッシュが完全に遅れたことも大きく躓いた原因の一つだろう。
また、相手チームの“千葉対策”を上回れなかったこともあるが、ハイライン&ハイプレスを強調したスタイルの中で、最終ラインの不安定さが目立った。チーム全体として失点を喫すると自信を失って崩れてしまい、安定感のない戦いぶりを露呈。前半戦は8勝4分け9敗で折り返した。後半戦も3連敗からスタート。連勝は2で止まり、連敗の数は増えていく。攻撃の強みを守備の脆さが上回り、失点が失点を呼ぶ“負のサイクル”に引き込まれ、後半戦は8勝3分け10敗と勝ち点を伸ばすことが出来なかった。
ハマれば強いがハマらないと自信がなくなる。結果が出ればチームはまとまるが、その逆も然りだった。シーズン途中からキャプテンに就任した佐藤勇人はこう胸の内を打ち明けた。
「自分たちは、J2のこの順位にいることを自覚をしないといけない。良い選手が揃っていると言われるが、この順位にいることは『良い選手ではない』ということを感じて現実を受け入れないと進めない。敗戦の数、失点数もそうだが一人ひとりが責任を感じないといけない」
そしてケガで出遅れながらも、チームにアクセントをもたらした町田也真人は「安定感をテーマにしてきたが安定感を出せない。自分たちの実力のなさを痛感した2年目だった」と振り返った。J1昇格への道のりが決して甘くはないことは分かっていたが、どこか昨季の7連勝があったことで「もしかしたら」という慢心があったことも反省点だろう。
ただ、そんなシーズンにも収穫はあった。ルーキー鳥海晃司の奮闘や第3GKだった大野哲煥の台頭。そして途中加入の下平匠と工藤浩平が選手層に厚みをもたらした。そして何よりも船山貴之がキャリアタイとなる19得点を挙げ、チームの攻撃をけん引したことだ。船山はチームメイトへの感謝を、もどかしさを交えながらこう話した。
「自分が得点を取れているのは、みんなが守ってくれたり、パスをくれたり、潰れてくれたり。たまたま自分がそこにいることが多いだけです。チームの結果が出ていないことは、自分が良くてもあまり意味のないことなのかと思います。いや、意味はなくはないけど言い方が難しいですね(笑)」
また中盤戦はベンチを温めていたベテランの佐藤優也や増嶋らが努めて雰囲気を変えようと戦っていたことも記したい。ボールがラインからこぼれた時は、ベンチを勢いよく飛び出し審判に「マイボール」と声を張りアピール。佐藤が「いろんな立場になってもチームのために何ができるかを考えています」と言えば、増嶋は勝利を挙げたり得点が生まれた時には「みんなで喜べる雰囲気を作ることができればと思っていました」と自分のことのように喜び歓喜の輪を作っていた。
終盤戦の第40節・徳島戦で彼ら2人に出番が訪れると、佐藤はゴールに鍵をかけ、増嶋は1ゴール1アシストの大活躍を見せ、同級生コンビが勝利を呼び込む大仕事をやってのけたことは特筆に値する。8試合ぶりの無失点勝利とその後2試合の無失点試合は偶然ではなく、プレスの位置を変えたことで監督と選手の中で勝つために必要な方程式“アグレッシブに行きながら勝ち点を稼げるサッカー”への解を導き出してもいた。プレッシングの位置を定め、勝ち点にこだわるサッカーにシフトしたことで、来季につながる可能性の一端は見せた。
リーグ2位の得点力が示す通り、攻撃的なマインドと姿勢はチームに浸透している。そして『0から1を作り出すことよりも、1を2にすること』を選択したクラブはエスナイデル監督との契約を更新し、3年目となる指揮官に命運を委ねた。来季は攻撃力を維持しながら、守備意識のレベルを高めるブラッシュアップこそが自動昇格への絶対条件になるだろう。
町田はこう言った。「(終盤戦)一人ひとりのストロングポイントを出せていて、助け合いが出来ている。自分たちは“チーム”になれていた」と潔いまでの前向きな思いが詰まっていた。どん底を味わったからこそ、何も失うものはない。暗闇の中でも僅かな希望の光は灯っている。希望を現実にしようとする努力があれば必ずや目的地に辿り着くことが出来ると信じている。来季こそは千葉が“昇格に値するチーム”ということを証明しなければならない。
文=石田達也
※選手名に誤りがあったため修正いたしました(4日 19時15分)。
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