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“変えないこと”で狙う飛躍…ミシャが見据える「3年目の到達点」【J1クラブ展望/札幌】

2020.02.17

札幌の指揮官として3年目のシーズンを迎えたミハイロ・ペトロヴィッチ監督 [写真]=J.LEAGUE

 今季に限らず、開幕前はどのチームも新戦力と既存選手、戦術との融合こそが開幕を迎えるにあたってのテーマとなるのが一般的だが、そのほぼ対極にあるのが今季の札幌だと言えるだろう。昨季を戦ったチームからはFW岩崎悠人が湘南に期限付き移籍をしたのみで、それ以外の選手は全員が残留。大卒ルーキー3選手も昨季すでに特別指定選手として公式戦出場や練習参加を果たしており、既存戦力と評していい。2月に入ってからブラジル人FWドウグラス・オリベイラとタイ人GKカウィンを獲得したものの、加入のタイミングを考えれば開幕時に向けた即戦力補強ではないと見るべきであり、やはり昨季のメンバーを完全なる土台、本体としてミハイロ・ペトロヴィッチ監督の就任3年目となるシーズンの開幕に突入しようとしているのだ。

 そうしたマネジメントについてペトロヴィッチ監督は「他のチームから実力のある選手を積極的に迎え入れるのもやり方のひとつ。でも、私はそういうことを好むタイプの監督ではないし、札幌もそうしたクラブではない」とし、そして次のように強調する。

「私が札幌でやっているのは『チーム作り』。完成されたものを買ってくることではない。選手をしっかり指導し、育てる。そうやって強くなる。それが私の仕事のやり方だ」

 就任1年目となった一昨季はクラブ史上最高の4位。昨季はクラブ史上初のカップファイナル進出を達成。堅守速攻スタイルでなんとか戦い続けてきたチームに、攻撃的なスタイルとハードワークを徹底して刷り込んできたペトロヴィッチ監督。ポゼッションを重視しながらも、機を見てシンプルな速攻をも織り交ぜる効率的な戦術で札幌は右肩上がりの強化がなされている最中である。今季の目標は「トップ3入り。タイトル獲得」(ペトロヴィッチ監督)だ。

 客観的に見れば、昨季リーグ戦10位のチームがトップ3を目指すのは簡単なことではない。即効性のある戦力補強を積極的に行う必要があったのではないか? そういう指摘も的を射ているように思う。だが、前出の指揮官の言葉が札幌のやり方なのである。そして、一昨季の4位入りと昨季のカップファイナリストへの躍進を、果たして誰がリアルに予想しただろうか。あらゆる予想や期待を上回ってきたのが過去2年の札幌である。今季はこれまでのベースに加えて「プロフェッショナルに成績を上げるため」に、“個の守備力強化”にフォーカスしていくとのこと。ひとつの節目とも言える3年目を迎えるペトロヴィッチ札幌が、どういった戦いを見せてくれるのか非常に楽しみである。すでにルヴァンカップが開幕しているように、今季は例年以上にシーズンスタートが早いため、メンバーに大きな変化がないというのは大きなアドバンテージになるかもしれない。

【KEY PLAYER】10 宮澤裕樹

ポジションによって変幻自在にプレースタイルを変える宮澤。チームに厚みをもたらす存在だ [写真]=J.LEAGUE


 そんなチームのキーマンには地元北海道出身でキャプテンの宮澤裕樹を押したい。敢えて“MF”宮澤としていないのは、この選手の配置によってチームのテイストも若干、変わるからである。リベロならば後方からのパス配給で攻撃に厚みをつけ、ボランチならば相手の2手先を読むプレーで中盤を牽引するプレーが魅力的であり、ペトロヴィッチスタイルに状況に応じて変化をつけてくれそうである。そして、キャプテンとしての言葉にも意気込みを感じる。昨季のチームでほぼそのまま今季に挑むにあたり、「顔ぶれはあまり変わらないが、ポジション争いはまたイチから再スタートになる。昨季スタメンだった選手が、今季もそのまま試合に出られると思わせない雰囲気作りをしていきたい」とする。実際に宮澤自身もリベロならば身体能力の高い韓国人DFキム・ミンテとの定位置争いがあるし、ボランチだとしても深井一希や荒野拓馬、駒井善成さらにはルーキーの田中駿汰や高嶺朋樹らとの激しい戦いがある。「自分もしっかりアピールしなければいけない」と例年以上に気を引き締めている印象だ。

 積極的な補強はないながらも、チームの継続性、指揮官の指導力、そして競争原理。そうした要素を武器に、成熟したペトロヴィッチサッカーで今季も札幌はさらなる高みを目指す。

文=斉藤宏則

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