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大幅刷新を機に本来の攻撃的なスタイルに回帰【J1クラブ展望/鳥栖】

2020.02.17

[写真]=J.LEAGUE

 今季は鳥栖にとって大きな転換点となる。近年はビッグネームを補強してタイトル獲得を目指したが、2シーズン連続で残留決定が最終節までもつれ込む苦しい戦いが続いた。さらに補強を支えていた大型スポンサーの相次ぐ撤退により、経営戦略の見直しも余儀なくされた。その結果、多くの主力が他チームへ移籍することになった。チームは育成路線へと舵を切り、大幅な若返りを図った。

 そんなシーズンに指揮を執るのが、金明輝監督だ。2季連続で途中就任からチームを残留に導いた青年監督が、今季初めてスタートから指揮を執ることになった。近年、躍進目覚ましい下部組織の土台を作っただけに、その育成手腕には確かなものがある。過去2年はいずれも途中就任で残留のために守備に重きを置かざるを得なかったが、本来は攻撃的なスタイルが信条。「ユースでやっていたのが自分の本来、やりたいこと」と指揮官は語る。今季は4−3−3のシステムで高い位置からのアグレッシブな守備とボールを握り、自分たち主体でゲームを進めていくことを目指していく。

 始動からまずは徹底的に走り込んだ。ポゼッションの意識だけが先行し、昨季に薄れていた体力的な土台作りをするためだ。その後、沖縄キャンプで戦術的なフェーズに入ると、金明輝監督なりのやり方を押し出した。ミーティングは練習前のみにし、宿舎では実施せず。選手が自由に使える時間を増やし、ストレス軽減とともに体のケアなどに充てる時間を増やした。さらに約2週間で行った練習試合は3試合にとどまった。他クラブと比べて少ないが、金明輝監督は「試合を増やすとリカバリーに時間を取られ、どうしても戦術の落とし込みの時間が減ってしまう」と新しいスタイルの構築のために自己流を貫いた。結果的に練習時や、ホテルでの選手間のコミュニケーションはかなり増えた。昨季までの“与えられたものを遂行する”という雰囲気から、“自分たちで作り上げる”という雰囲気に変わった。

 ダイナミックさ、スピード感は近年でもベストなものを出せるだろう。小屋松知哉、内田裕斗、林大地、森下龍矢など、サイドと前線には適した人材が加わった。また、松岡大起を筆頭に下部組織で指導を仰ぎ、金明輝監督のスタイルを熟知した選手たちが多くいるのも頼もしい点だ。鳥栖はビッグネーム路線と同時に、下部組織の充実を進めてきた。一方は頓挫せざるを得なかったが、鳥栖にはもう一つの強みがある。トップダウンではなく下部組織から作り上げてきたスタイルがトップチームにも波及し、新たな鳥栖を作り上げていく。今季はその第一歩となるシーズンだ。

【KEY PLAYER】MF 41 松岡大起

[写真]=J.LEAGUE


 始動以来、昨季と明らかに立ち居振る舞いが変わった選手がいる。それが松岡大起だ。昨季はクラブ史上初めて、高校3年生にしてプロ契約を結んだ。18歳とは思えない堂々としたプレーで確かな戦力になっていたが、プレー以外の面では先輩たちへの遠慮も見られた。それが今季は練習から激しく声を出し、チームを盛り上げている。

「ユースでも監督と選手という関係で一緒にやらせてもらっていて、(金明輝)監督のやろうとしていることは明確に理解している。それを知っている自分がリーダーシップを取っていかないといけない」

 中学まで熊本で過ごしていた松岡を、鳥栖U−18にスカウトしたのが金明輝監督だ。金明輝監督にとって、松岡はまさに自分のサッカーを体現する申し子。恩師がシーズンのスタートから指揮を執り、本来、志向するサッカーを作り上げる。そのことが松岡にリーダーとしての自覚を促していた。

 今季は主にアンカーやインサイドハーフでプレーすることが濃厚だ。特にアンカーでは「声を出して前をうまく動かさないと守備がハマらなくなる」ことも、松岡に“声”を意識させている。「同年代で、もう海外で戦っている選手もいる」と、久保建英の存在も刺激になっている。18歳の新リーダーが鳥栖をけん引する。

文=杉山文宣

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