J1復帰初年度だが、目標勝点を70に定めた柏レイソルは本気でタイトルを取りにいく [写真]=J.LEAGUE
昨季のJ2リーグを制し、柏レイソルは1年でのJ1リーグへの復帰を果たした。ただ、これはあくまで通過点に過ぎない。ネルシーニョ監督はリーグ、天皇杯、ルヴァンカップ、いずれのタイトルも「勝ちにいく」と明言。リーグ戦に関してはシーズンの目標勝点を70に定め「前半戦の17試合で勝点35を取ることが目標」と具体的な数字を示した。
昨季は横浜F・マリノスが勝点70でJ1を制した。一昨年を見ても、優勝した川崎フロンターレの勝点は69である。勝点70に目標を設定するということはすなわち、柏は紛れもなくJ1優勝を狙っている。
昨季1年間の戦いを通じて確固たるベースができ上がった。チームの戦い方に関しては、ネルシーニョ監督が「昨年積み上げてきたものを今年も継続してやるだけ」と言うとおり変化はない。ポゼッション、カウンター、ハイプレス、リトリート……。対戦相手の特徴や試合状況に応じて柔軟にスタイルを変化させ、勝利を手にするために最善の策を用いて戦う。海外移籍の噂が上がっていたオルンガ、中村航輔も残留し、昨年の主力メンバー全員がチームに残ったことで、その戦い方を踏襲できる強みがある。
オルンガ、クリスティアーノという強烈な二枚看板に加え、圧倒的なボール奪取能力を有するヒシャルジソン、元U-20ブラジル代表の経歴を持つクリエイティブなMFマテウス・サヴィオなど外国籍選手が注目を集めるが、攻撃に絶妙なアクセントを加える江坂任や、昨季は左サイドハーフとして新境地を切り開き、“J2優勝陰のMVP”と評される瀬川祐輔などタレントは豊富だ。
今季はそこに実力派の新戦力を加えた。韓国代表GKキム・スンギュ、昨年のJ2で日本人最多の22得点を記録した呉屋大翔、U-23日本代表候補の大南拓磨を始め、ルーキー4選手を除いた新加入選手9名は、前所属クラブではレギュラーとして君臨していた選手である。
「各ポジションに少なくとも2人以上のレギュラークラスをそろえている。チーム内の競争は、強いチームを作るためには必要な要素」(ネルシーニョ監督)
誰もポジションが確約されておらず、昨年の主力選手でも気を緩めればすぐにメンバーから外されてしまう。毎週、熾烈な争いが繰り広げられ、その競争に勝ち抜いた者だけが、試合に出場できる権利を与えられる。熾烈な競争と、チームマネジメントに長けた名将の手腕があれば、チーム力の飛躍的な向上も十分期待できるだろう。
柏のスローガンはポルトガル語で『勝利』を意味する“VITORIA”だ。ネルシーニョ監督指揮下の柏の哲学は勝つことにある。果たして、昇格後即優勝を成し遂げた2011年の再現なるか。
【KEY PLAYER】FW 14 オルンガ
昨季のJ2では、ケニア代表と並行して戦うタイトな日程を強いられながらも、出場30試合で27得点を記録するハイアベレージを残した。193センチの長身で、屈強なフィジカルと抜群のスピード、柔軟な足下のテクニックを兼備する。さらに左利きらしく独特のセンスを持ち合わせているストライカーだ。
柏に加入したのは2018年8月。ただ、その時はシーズン途中の移籍ということもあり、出場10試合で3得点と能力の片鱗をわずかに披露しただけで終わったが、来日2年目となった昨季はチームにフィット。ネルシーニョ監督の意識付けによってハードワークを覚えたことで、その規格外の能力が最大限に引き出された。中でも昨季のJ2最終節・京都サンガ戦では一人で8得点を叩き出し、1試合当たりのJリーグ新記録を樹立した。日本のサッカーシーンに衝撃を与えたのは記憶に新しい。
ピッチ上では対戦相手に脅威を与えるストライカーだが、ピッチを離れれば心優しき青年に様変わり。大学でエンジニアの資格を取得した経歴があるように非常に博識で、彼の発する言葉の一つひとつから知性が感じられる。もちろんチームメートとの関係性も良好だ。日本食では鰻が大好物で、瀬川祐輔に「アシストをしてくれたら鰻を御馳走するよ」と約束したのは有名な話である。
文=鈴木潤
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By 鈴木潤