DAZNと18のスポーツメディアで取り組む「DAZN Jリーグ推進委員会」が、その活動の一環としてメディア連動企画を実施。Jリーグ再開に向けて、「THIS IS MY CLUB -FOR RESTART WITH LOVE- Supported by DAZN Jリーグ推進委員会」を立ち上げた。サッカーキングでは、徳島ヴォルティスで在籍最年長となる長谷川徹選手に“クラブ愛”について語ってもらった。
インタビュー=三島大輔
写真=徳島ヴォルティス
――今年で徳島ヴォルティス在籍が10年目となりました。振り返ってみていかがですか?
長谷川徹(以下、長谷川) 移籍がつきもののサッカーというスポーツの中で、10年という長期間在籍させていただいていることには感謝しかないですね。クラブやサポーターからの大きな愛を感じています。僕はもともと名古屋グランパスの出身ですが、徳島に来た2011年当時はスタッフや選手に元名古屋の人が何人かいて。そのおかげですんなりとチームに溶け込めましたし、地元の人たちも最初から本当によくしてくれました。
――愛知県出身で、名古屋には育成組織から所属していましたね。ずっと名古屋で育ってきて、徳島への加入は大きな変化だったと思います。もう随分と前のことですが、名古屋を出ることを決めた際の心境はどのようなものだったのでしょうか。
長谷川 もちろん名古屋に恩を感じる気持ちはありましたし、楢﨑正剛さんから学んだこともたくさんありました。でも、「もっともっと試合に絡みたい」という思いが移籍につながりました。愛知県以外で暮らしたこともなかったのですが、それも挑戦かな、と。選手としても、人間としても挑戦したいと思ってチャレンジしました。
――そんな強い気持ちを持ってやってきた徳島では、2013年にはクラブ悲願のJ1昇格を果たします。当時のチーム内の雰囲気や街全体の盛り上がりはいかがでしたか?
長谷川 チームのムードは最高でしたね。試合をやっていて、勝点を落とす気がしませんでした。完全に勢いに乗っていましたね。徳島の街も一つになって盛り上がって、後押ししてくれました。どこに行っても声を掛けてくださいましたし、「J1でヴォルティスが見られる!」という街の期待を感じました。
――翌年は松井謙弥選手とのポジション争いを制して、正守護神に定着。名古屋を出た際に抱いた「試合に出たい」という思いを、J1の舞台でついに果たしましたね。J1でシーズンをとおしてゴールマウスを守り続けた感想はいかがでしたか?
長谷川 個人としてもチームとしても、J1での経験は本当に悔しさが残るものでした。街の皆さんから感じた大きな期待に応えられず、ホームでの試合で一つも勝利することができなかった。ホーム最終戦では、何が何でもファン・サポーターの前で、徳島県民の皆さんの前で勝利するんだという強い気持ちで臨みましたが、逆にガンバ大阪のリーグ優勝を目の前で見せられる結果となってしまいました。それが本当に本当に悔しくて。その悔しさが、今もこうして徳島で挑戦し続ける原動力になっています。
――2017年からはリカルド・ロドリゲス監督が就任しました。特色のあるサッカーをする監督ですが、ロドリゲス監督になって徳島が変わった点はどんなところですか?
長谷川 頭を使って、考えてサッカーをすることが求められるようになりましたね。GKもビルドアップに参加して、パスコースの選択はもちろん、自分がパスを出したさらにその先のことも考えてプレーしなければいけません。試合だけじゃなくて、練習からそういった“頭の強度”が高いプレーが求められます。本当に勉強になりますね。
――就任4年目となり、ロドリゲス監督のサッカーが成熟してきているように感じます。今季はどのような点を重点的に高めていますか?
長谷川 おっしゃるとおり、完成度はかなり上がっています。なので、どこかのポイントを重点的に、というよりは、今までやってきたことに自信を持って、さらに積み重ねていくだけです。それはキャンプからずっと取り組んでいて、大きな手応えを感じています。あとはピッチで表現するだけですね。
――着実に積み重ねてきた結果として、昨シーズンはJ1参入プレーオフに進出し、昇格まであと一歩のところに迫りましたね?
長谷川 うまくいったこともたくさんあったシーズンでしたが、すべてが順調、というわけではありませんでした。思いどおりのサッカーができずに難しさを感じた時期もあって。ただ、その中で選手たちが自主的に話し合い、困難を乗り越えていきました。そういう経験を繰り返すことで強くなった、という実感があります。だからこそ、最後の最後で昇格の壁を乗り越えたかった。昇格に届かなかったということは、何かが足りなかったということ。その足りなかったものを今年こそつかむ。そういう思いが今シーズンにつながっています。
――ロドリゲス監督就任以前も含めて、在籍10年間で徳島というチームの成長具合をどのように感じていますか?
長谷川 選手やスタッフ一人ひとりの意識が、加入した当初とは全然違いますね。「J1を目指す」という目標に対して、全員が高い意識で取り組むようになったと思います。それに、ファン・サポーターや徳島県民の皆さんも、「J1に行ける、J1で勝てる」と信じて応援してくれています。地域とクラブとが一体となって、目標に取り組めるようになったと思います。
――長谷川選手ご自身は、徳島に来てからどんな部分が成長したと感じられますか?
長谷川 僕自身が成長できているかは、正直分かりません。ただ、「チームがJ1に昇格するために自分ができることは何か?」ということを考えて、行動で示すようになったと思います。それだけはやめてはいけないと思いますし、そういう姿勢や行動を、若い選手たちに感じてもらいたいですね。僕は副キャプテンも務めさせてもらっていますが、キャプテンの岩尾(憲)を筆頭に、言葉でチームを引っ張っていく選手はそろっています。僕は僕なりに、行動や意識でチームを牽引できたらと思っています。
――今季の開幕戦では、新加入選手の西谷和希選手、杉森考起選手らの活躍もあって、快勝スタートとなりました。開幕戦の印象はいかがですか?
長谷川 新しい選手たちが入ってもチームとして意思統一をしっかりとして、一つになって戦えている。それが結果にも表れていると思います。徳島は毎年メンバーの入れ替わりも激しいですが、クラブが持つ一体感の中で若い選手たちものびのびとプレーできています。そして、ベテラン選手が要所でしっかりと引き締める。とてもバランスのいいチームに仕上がったなと感じています。
――素晴らしいスタートダッシュを切った中で、予期せぬ中断期間に入ることになってしまいました。期間中はクラブとして、個人としてどんな取り組みをされていましたか?
長谷川 すごく難しい時期でしたが、徳島県では医療従事者の方々を始めとした県民の皆さんの努力のおかげで、比較的少ない感染者数に抑えることができました。その中で、僕たちは他クラブより多少早くチーム活動を再開できました。調整は当然難しい部分がありましたが、チーム内、GK同士でもしっかりとコミュニケーションを取りながら高めあうことができています。県民の皆さんの努力に、本当に感謝しています。
――リーグ戦再開に当たり、今季はレギュレーションが変更されると発表になりました。J1参入プレーオフが行われないことで、目標はJ1昇格圏の2位以内に絞られました。過密日程となりますが、改めて今シーズンの意気込みを聞かせてください。
長谷川 自分たちの目標を、シーズンを通じてブレることなくやり通すこと。現チームの中で徳島でJ1の経験がある選手は僕だけとなりましたが、絶対にもう一度、チームをJ1に連れて行きたい。徳島県民の皆さんに、もう一度J1で戦う姿を見せたいと思っています。そのために、シーズンをとおしてしっかり戦い抜きます。
――長谷川選手から見て、徳島ヴォルティスというクラブが特に優れていると感じる点はどこですか?
長谷川 チーム力ですね。試合の中で、チーム全員が一つになって戦える。その部分ではJ1にも負けていないと思います。さらに言えば、クラブ内だけではなくて、徳島県全体が一つになって戦えています。徳島県民の皆さんは熱い方ばかり。ファン・サポーターの後押しが本当に力になります。クラブとファン・サポーターの一体感はJリーグで一番じゃないかな。
――では、そんなファン・サポーターの皆さんにメッセージをいただけますか?
長谷川 新型コロナウイルスの感染拡大防止のために練習でのファンサービスが中止となり、無観客での試合の再開が決定しました。ファン・サポーターの皆さんと直接ふれあえる機会がないことを歯がゆく思っています。そんな中で、皆さんはDAZNやサッカーキング、地元の新聞といったいろいろなメディアをたくさんチェックしてくれていると思います。だからこそ僕たちは結果で、ファン・サポーターの皆さんに喜びを届けられるよう最大限努力していきます。またお会いして、直接声援をいただける日が来るのを信じて。引き続き応援してください!
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By 三島大輔
サッカーキング編集部