昨年きらめいた原石・遠野大弥はJ2の舞台で磨かれて、今年光を放つことはできるのか [写真提供]=アビスパ福岡
遠野大弥(とおの だいや)。その名の通り宝石のごとく輝く才能を持つ新鋭だ。しかし、その才能はまだ“原石”だと思われていた。そう、今季の明治安田生命J2リーグ開幕戦までは――。
フアンマ・デルガド、城後寿、木戸皓貴、森本貴幸……。アビスパ福岡のFW陣には百戦錬磨の実力者がそろう。今季就任した長谷部茂利新監督は、ソリッドな守備をベースにしたインテンシティの高いサッカーで水戸ホーリーホックを躍進させた知将。レギュラーの座をつかむには相当なアピールが必要かと思われたが、開幕の“福岡ダービー”に先発し決勝ゴールを叩き込んだのは遠野だった。
Honda FC(JFL)からJ1の名門・川崎フロンターレに加入し、即レンタルで福岡にやってきた。昨年の今頃は本田技研工業株式会社(静岡県浜松市)での社業もこなしていた苦労人が、今見る景色とは? 鬼木達、長谷部茂利という名将2人の眼鏡にかなった“宝石”は、さらに輝くのか――。
インタビュー=三島大輔
写真=アビスパ福岡
――開幕戦で素晴らしい活躍を見せた後、予期せぬ中断期間に入ることとなりました。その間はどのように過ごされていましたか?
遠野 今はクラブの選手寮に住んでいるんですが、トレーニング器具が常備されていたり、グラウンドがついていたりするので、そういった施設を使ってコンディション維持に努めていました。思ったよりストレスなく過ごせていました。
――チーム活動の再開は5月19日からでしたね。久々に仲間と一緒にサッカーをしたときはどう感じられましたか?
遠野 やっぱりめちゃくちゃ楽しいな、と実感しましたね。チームメートとともにプレーできることは本当に幸せなことです。それに、僕たちはピッチ上で役割を全うすることが仕事なので、やっとそれを果たせるという喜びも本当に大きかったです。
――改めて、遠野選手の経歴を振り返らせてください。静岡県の藤枝明誠高校から、2017年にHonda FCに加入されていますが、その経緯を教えていただけますか?
遠野 実は、大学に進学するつもりでいたんです。入学願書も用意していたんですが、県大会の決勝で僕のプレーを見たHonda FCの方が、願書提出の一週間前にオファーをくれました。とても迷いましたね。でも、「せっかくサッカーをするならレベルの高いところでプレーしたい」という思いが勝って、最終的にはHonda FCにお世話になることに決めました。
――高校を卒業後、社会人として働きながらサッカーに取り組むのは難しさもあったと思います。生活も大きく変化したと思いますが、当時は一週間をどんな風に過ごしていましたか?
遠野 週に3日は自動車製造工場で働いていました。作業着姿で、車の部品製造に携わっていました。僕はエンジンの担当でしたね。仕事は午前中だけで、午後からはサッカーの練習。そのあとに筋トレをやります。週に1日、月曜日か金曜日のどちらかは、午前中にサッカーの練習をして午後がお休み。土日に公式戦がある週は、翌週月曜日が完全オフ。その繰り返しでした。
――フィジカル的にもメンタル的にも、かなりハードな生活だったのではないですか?
遠野 ハードでしたね。仕事は覚えなければいけないことがたくさんあって、サッカーと両立する難しさをすごく感じました。でも、サッカーにおいては楽しさしかなかったです。練習や試合が、僕にとってはストレス発散になっていました。
――Honda FCの練習で、特に印象に残っているメニューはありますか?
遠野 走る量が尋常ではなかったです。毎週火曜日は「フィジカルトレーニングの日」と決まっているのですが、その日はめちゃくちゃ走った記憶があります。インターバル走やシャトルランなど、とにかくたくさん走らされて(笑)。当時は「キツイな」と思っていましたが、その経験が今の僕の運動量を生かしたプレースタイルにつながっていますし、福岡のアグレッシブなサッカーにフィットできた要因でもあると思います。
――Honda FC加入当初はプロのサッカー選手になることをそれほど意識していなかったとか?
遠野 そうですね。Honda FCは相当ハイレベルなチームでしたので、まずは試合に出ることを目標に、目の前の課題に全力で向き合うという気持ちで取り組んでいました。その中で、3年目の去年はかなり試合に絡めるようになり、JFLベストイレブンに選んでいただき、天皇杯ではJリーグのクラブ相手に結果を出すことができました。それが相当な自信になり、「もっともっと上を目指したい。プロにチャレンジしたい!」という気持ちが強くなりましたね。
――その天皇杯での快進撃が、遠野選手がJリーグクラブから注目されるきっかけになったと思います。Honda FCは破竹の勢いで勝ち上がっていきましたが、チームのムードやご自身の心境はいかがでしたか?
遠野 「このチームはプロ相手でも勝てるな」と感じていました。カテゴリーが下の僕たちは失うものが何もない。実力的にもプロに負けていないと思っていましたし、ぶつかり合えば勝てるという強い自信がありました。実際に、Jリーグのクラブ相手に得点や勝利という結果を出せたことが本当に大きな自信になりました。ただ、鹿島アントラーズには2年連続で負けてしまったので、いつか借りを返したいです。
――それがプロでの目標ですね。
遠野 はい。絶対にリベンジします!
――そして、2019年末にはJ1の川崎フロンターレへの加入が発表されます。川崎Fからオファーを受けたときはどう感じられましたか?
遠野 とてもうれしかったです! 僕はHonda FC時代からJリーグの試合をたくさん見ていたのですが、特にフロンターレの試合はいつもチェックしていました。攻撃的で面白いサッカーだな、と思っていたので、そのクラブから自分が評価されたのがとてもうれしかったです。その反面、レベルの高さも感じていたので、「自分が通用するかな…」という不安もありました。
――川崎F加入からすぐに福岡にレンタルとなるわけですが、その経緯は?
遠野 フロンターレ加入が決まった後、一番最初にアビスパがレンタルのオファーを出してくれたんです。フロンターレへのオファーも即決で承諾しましたが、アビスパへのレンタルも悩まず決めました。決め手は、シゲさん(長谷部茂利監督)が一番大きいかな。周囲から新しい監督が来ることは聞いていて、「シゲさんは素晴らしい監督だよ」と。実際、シゲさんに指導してもらって、人間的にも成長できていると感じています。
――開幕戦のギラヴァンツ北九州戦では、その長谷部監督の抜擢を受けて先発出場。見事に決勝ゴールも記録しました。改めて、この試合を振り返っていただけますか?
遠野 まず、先発で出たことに驚く人が多いですが、キャンプのときから「あるかも」と思っていました。キャンプ最後の練習試合でもプレーさせてもらって、シゲさんからの信頼を感じていましたから。でも、いざ試合に入ると緊張しましたね(笑)。試合で緊張したのは久々でしたが、やっていくうちにサポーターの声援がどんどん力になって。声援が背中を押してくれて、ゴールすることができました。
――一生に一度のプロデビュー戦で決勝ゴール。ご自身でも、「持ってるな」と感じたのでは?
遠野 正直、自分は「持ってる選手」だな、と思いますね(笑)。さっき話した高校時代の県大会決勝でも2ゴールを決めて、Honda FC加入につながりましたし、昨年の天皇杯でも(北海道コンサドーレ)札幌を相手に2ゴール決めることができました。振り返れば、大事な試合で活躍できているなと思います。
――開幕戦では、もちろんうまくいかなかった部分も出たと思います。ご自身で最も「課題だな」と感じたことは?
遠野 決定力ですね。シュート自体は8本打ちましたが、大きく枠を外すなど可能性が感じられないものも多かった。そこの精度は上げていきたいです。それに、もっと味方との連係を高めていかないと。パスの本数を増やして、決定機を作れる選手になりたいですね。
――今季、残り41試合の戦いが始まります。個人としてはどんな目標を掲げていますか?
遠野 大きな目標としては、二桁得点・二桁アシストを目指したいです。全試合に出場したいですが、今季はハードスケジュールになりますし、チームとしても総力戦になるはず。ケガだけはしないように気を付けて、1年を通してチームに貢献したいです。
――見ている人にアピールしたい、ご自身のストロングポイントは?
遠野 ポジショニングや、ボールを受けてからターンして前を向く技術に自信があります。そこから仕掛けて運んでいくプレーを見てほしいですね。フアンマや城後(寿)さんのように、圧倒的な存在感で敵を引き付けてくれる頼もしい味方もいるので、そういった選手たちとの連係にも注目してほしいです!
——チーム目標は当然J1昇格ですが、長谷部監督は常々「勝点81」を目標に掲げています。改めて、その目標に向けての意気込みを聞かせてください。
遠野 昇格という明確な目標に向かって、チーム全体が一つになって取り組んでいます。絶対に妥協せず、「J1に上がるぞ」という強い気持ちで1試合1試合戦っていきます。そうすれば、勝点81という数字にも絶対届くはずです。僕たちが戦う姿を、勝つ姿を、楽しんで見ていただければと思っています。
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By サッカーキング編集部
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