DAZNと18のスポーツメディアで取り組む「DAZN Jリーグ推進委員会」が、メディア連動企画として「DAZN Jリーグ推進委員会 月間表彰」をスタートさせた。サッカーキングでは今シーズンの明治安田生命J2リーグにおいて、月間MIP(Most Impressive Player)を選定し、その受賞者へのインタビューを掲載する。9月のJ2リーグ月間MIPには、栃木SCに所属する明本考浩選手を選出した。
取材=三島大輔
写真=栃木SC
2020年9月 J2リーグ月間MIP
明本考浩(栃木SC)
——まずは明本選手のキャリアについて伺っていきます。サッカーを始めたきっかけから教えてください。
明本 始めたきっかけは家族の影響です。父がサッカー経験者で、3歳年上の兄もサッカーを始めていました。兄がサッカーをしている横で、僕も一緒にボールを蹴り始めたみたいです。やっぱり兄の影響が強いと思いますね。僕が小学生で栃木SCのサッカースクールからサッカーを始めて、栃木SCジュニアを選んだのも、先に兄が栃木SCジュニアでプレーしていたからです。
——栃木ではジュニアから、ジュニアユース、ユースと在籍していましたが、トップ昇格を果たせませんでした。
明本 今になって振り返ると、単純にトップへ昇格するための実力を備えていませんでした。だけど当時は無駄にプライドが高かった。内心は「なんでトップに上がれないんだ」と思っていましたから(苦笑)。結果的には大学に進んだあとに栃木へ戻ってこれたので良かったですよね。もしもユースからトップに昇格していたら、プロでは通用しないレベルのままだったと思います。
——ユース時代はFWで10番という攻撃的な選手でした。大学進学を経て、現在はボランチや2列目を主戦場にハードワークをいとわない姿が印象的なプレーヤーに変化しています。
明本 そうですね。ユース時代は攻撃を重視していて、あまり守備をしない選手でした(苦笑)。大学時代はそういった欠点を見つめ直す4年間になりました。大学サッカーはユースと比較するとスピード感が全く違いました。そこで自分自身がとても成長できたと思っています。国士舘大学ではボランチのポジションでプレーすることが多くなりました。そこで自分が一番考えていたのはボールを奪うこと。それができないと攻撃も始まらないですからね(笑)。ボランチで守備ができないと全然使い物にならないじゃないですか。守備の強度は先輩のプレーを参考にしていました。すると、ボールを狩る部分に関して自分なりに手応えを感じた。それからは常にその部分を意識して練習するようになりました。
——プレーする位置を下げたことで、どのようなプレースタイルを意識していましたか?
明本 国士舘は一対一の練習が多かったんですけど、入学当時の自分にはパワーが足りなかった。自分は負けず嫌いなので、やられるのは悔しかったですね。そういった練習をこなしているうちに、粘り強く守備をするスタイルが身についたと思います。
——大学時代にはユニバーシアード日本代表や全日本大学選抜に選出され、栃木を含む複数クラブからオファーが届いていました。改めて栃木を選んだ理由について聞かせてください。
明本 ジュニアからお世話になったこのクラブにいち早く恩返しをしたかった。そういう強い思いがありましたから。栃木というチームを選びました。即決でしたね。
——昨シーズンは栃木にとって苦しい1年になりました。
明本 そうですね。勝てない時期が続きましたけど、当時の僕にできることは、すべての試合を見ることだけでした。ユース時代のチームメイトで、一つ年上の黒﨑(隼人)選手に「頑張ってくれ」と常に連絡していました。その思いが伝わったのかは分からないですけど、ああいう戦いをしてJ2に残留してくれたのはすごく感謝しています。本当に感動しましたね。最終節の千葉戦、あのタシくん(田代雅也)のゴールは一人で叫んでいました(笑)。
——昨年11月に追い上げた時期の戦い方がチームのベースになり、今シーズンはメンバーや戦術が明確になった上で開幕を迎えました。明本選手はどのような手応えを得ていましたか?
明本 キャンプの時から田坂(和昭)監督は去年のラスト10試合について言及していました。常に「ああいう戦いを今年はベースにしていく」と。自分たちからアクションを起こすアグレッシブなサッカーがコンセプトだったので、自分自身にもすごく合っていると感じました。僕は「走る」とか「戦う姿勢」を一番見せないといけないと思っています。それが今の自分の好調さを引き出している要因でもあります。キャンプの時からコンディションは良かったですし、「やっていけそうだな」という自信がありました。また、栃木の先輩方が優しく接してくれて、僕をのびのびプレーさせてくれています。それも自分にとって好調を維持できている大きな要因の一つです。
——田坂監督が称するようにストーミング戦術を採用し、Jリーグにおいてすごく色のあるチームに仕上がっています。チームとしてどのような共通認識を持っていますか?
明本 一人もサボらずに全員で走りきる。それが今の栃木のスタイルになっています。この守備の形は栃木にいる選手でしか表現できないと思いますね。積極的に前からボールを奪いに行くことがチームの共通認識としてあります。「奪ったら素早く攻撃に」が自分たちのコンセプトなので。それを90分間やり続けることが大事になります。
——9月は3勝2分3敗。9月終了時点ではリーグ8位という結果でした。改めて9月という枠でチームの状況を振り返ってください?
明本 連戦が続いた中での3勝2分。欲を言えば負ける試合をなくしたかった。引き分けに持ち込みたかったですね。それでも、チーム全員が一致団結して戦えた1カ月だったと思います。
——過密日程の中でも栃木の選手たちは常に豊富な運動量を求められています。毎試合見ていて、シンプルにすごいなと(笑)。
明本 シーズン前はフィジカルトレーニングを重点的に取り組んでいました。その中で選手たちは鍛えられたと思います。それが生きたのか、夏場の苦しい連戦でも僕らの戦い方をピッチで表現できた。それはチームとしてすごくプラスだと思います。これからどんどん涼しくなってくると思うので、僕たちは90分の最後の最後まで走りきれるはずです。これから連勝できるようにしていきたいですね。
——そのスタイルを見事に披露したのが第17節の水戸戦でした。前半に先制を許しながらも、後半のアディショナルタイムに柳育崇選手が逆転弾。あの試合を振り返ってください。
明本 早い時間に失点してしまったので、なんとか追いつこうと。後半は相手ディフェンスラインの疲労感が見て取れたなので、「いけるぞ!」とチームを鼓舞し続けていました。あの試合は誰一人も諦めずに戦った。水戸の選手の足が止まってきた一方で、僕たちは止まることがなかった。そこに差が生まれたと思います。最後まで誰も諦めずに走り切った結果、あのゴールが生まれました。
——9月は上位に位置する徳島、京都、福岡に敗戦を喫しました。
明本 徳島戦に関しては、試合を通して高い位置でプレスを掛け続けようとしていた。だけど、うまくハメられずに全体として引いてしまうシーンがありました。アグレッシブに前から行けたら、結果は変わっていたのかなと思います。福岡戦に関してはどちらに転ぶか分からないゲームを落としてしまった。サッカーではセットプレー1本が勝利を分けることもある。ああいった試合をものにするかどうか。それはチームの課題です。
——明本選手自身はルーキーイヤーにもかかわらず、第24節まで全試合に出場しました。
明本 出場しているときは常にピッチを走り回らないといけないと思っています。監督が「もう走れていないな」と思ったら、交代してもらって全然構わない。試合に出ている以上は、90分間走りきって戦おうと思っています。また、その中で攻撃のクオリティも見せていかないといけません。シーズンの最初の頃と比較すると、落ち着きのあるプレーが要所でできるようになったと感じています。余裕があるわけではないですけど、周りを見て判断することが徐々にできるようになったのかなと。試合を重ねるにつれて、どうしたらいいかを自分で考えられていると実感しています。
——今後も過密日程は続きます。10月以降でポイントになる部分はどんなところだと思いますか?
明本 今シーズンの栃木は連勝が二つまでしかありません。10月は3連勝以上を目指したいと思っています。とはいえ、少なくとも1カ月で負け越さないことが僕たちには大事になりますね。
——12月には新スタジアムであるカンセキスタジアムとちぎで試合が開催される予定です。栃木出身者としてどのような思いを持っていますか?
明本 本当にすごくうれしいことです。早く新スタジアムで試合をしたいです。そして、自分が新スタジアムでの初ゴールを決めたいですね(笑)。
——栃木のエンブレムを長くつけてきてました。プロになって新しく芽生えた感情はありますか?
明本 このチームをJ1に昇格させる。それは長年思っていたことです。プロでもこのエンブレムをつけられているので、このチームをJ1に昇格させたいと強く思っています。
——栃木には明本選手をはじめ、森俊貴選手や黒崎選手といったユース組が台頭しています。明本選手にとって、彼らはどのような存在ですか?
明本 同期の森選手は小学生時代から一緒に切磋琢磨してきた関係です。なので、プロでまた同じチームで戦えていることは本当にうれしいですね。二人でしっかり栃木を背負っていかないといけない、もっと栃木を強くしたいとと強く意識しています。今のチームにはアカデミー出身の選手の割合が増えてきてますけど、いずれスタメン11人でアカデミーの出身者になってほしい。僕は後輩たちに対して背中で表現しなければいけないと思っています。ユースからトップ昇格が増えていくように働きかけたいですね。
——先日、ユースの練習に顔を出して選手たちに声をかけた姿をSNSにて拝見しました。
明本 クラブユースという彼らにとって節目の大会があったので激励に行こうかなと。僕たちも同じ経験をしてきましたし、トップの選手が来てくれたらモチベーションも上がると思います。僕はトップとアカデミーがより近い関係になることがプラスに働くと思っています。これからも積極的に練習には顔を出したいと思います。僕はまだまだプロ選手として未熟ですけど、僕が経験したことをユースの選手に伝えたり、進路に困っている選手がいたら大学進学を進めたりと、自分が経験したことを少ないながらも彼らに還元できると思っています。同じ経験をしてきた身として、しっかりサポートしていきたいです。
——明本選手個人として、栃木をどのようなクラブにしていきたいですか? また、ご自身としてどんなプレーで貢献していきたいですか?
明本 今シーズンはJ1昇格という思いがあります。今後はクラブをもっと成長させていきたい、もっと大きなチームにしたいと思っています。自分にできることをしっかりやっていきたいですね。選手としてはっと前線の選手である以上、もっとゴールやアシストにこだわらないといけません。そうしなければ、このチームを上には持っていけない。自分だけではなく、チームのために何ができるのかを日々考えてプレーしていきたいと思っています。
——ファン・サポーターに向けて、最後に10月以降の意気込みを聞かせてください。
明本 折り返し地点になりましたけど、栃木はここからギアを上げて、勝ち点3を積み上げる必要があります。前線の選手としてしっかり体を張って、1試合でも多く勝てるように、そして1試合でも勝利に貢献できるように頑張っていきたいと思います。応援よろしくお願いします!
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By 三島大輔
サッカーキング編集部