徳島は、4季チームを率いたリカルド監督と別れ、新たな戦いに挑む [写真]=柏原敏
見どころは、指揮官交代による変化だ。
周知のとおり、徳島ヴォルティスを4シーズン率いて悲願のJ1昇格に導いたリカルド・ロドリゲス監督(現・浦和レッズ)は昇格を機に退任。そこで、クラブは新たな指揮官としてダニエル・ポヤトス監督を招聘した。レアル・マドリードでアンダー世代の監督を歴任し、U-17&U-19バーレーン代表指揮官、アトレティコ・マドリードの分析コーチ、パナシナイコス指揮官などの経歴を持つ。
就任時、ポヤトス監督は「私と同じ考え方を持っているチームだと感じた。しっかりとボールを保持してつなぎ、試合を支配し、数多くのチャンスを作りながらプレーしている」と言及。徳島はクラブ哲学に「アグレッシブ(攻撃的)、コレクティブ(組織的)、ダイナミック(躍動的)」(岸田一宏社長)の3要素を掲げているが、その体現と昨シーズンの継続を期待できる指揮官を迎え入れることができた。とはいえ、指揮官が代われば、その戦術的手法は変化する。
注目すべき変化は、立ち位置。
昨シーズンまではビルドアップ時のボランチの関わり方、サイドで数的優位を作るための流動的なポジショニングなどの柔軟さが目立った。しかし、今シーズンは柔軟さを尊重しながらも、昨シーズンと比較するとプレーエリアには基本となる約束事が設定されている。ボール保持位置によってラインの高さは変化するものの、仮にピッチを縦5レーン・横6ブロックに分割してマス目状に線を引いたとすれば、ポジションごとに自分の任されるエリアはおおよそ決められているように見える。その手法は、攻撃時にボールを失った際の即時奪還から連続攻撃につなげる仕組み、カウンター阻止に直結する守備の安定といった攻守両側面のロジックがうかがえる。
ところで、読者の皆さんは『釣り』をしたことがあるだろうか?
徳島県は、ホームスタジアムのある鳴門市に代表されるように豊かな海へと面しており、食卓には海の恵みが並ぶ。ゆえに釣りや漁業も身近な存在なのだが、昨シーズンの徳島を例えるならば擬似餌を用いた『ルアーフィッシング』だ。いかにその疑似餌(ボール)を本物の魚のように見せ、相手を自分たちの優位な状況に引き込んで釣り上げるか。一方、今シーズンの徳島は『地引網』のような追い込み漁。ピッチの端から端まで網を張り、ジワリジワリと岸(ゴール)へ追い込んで捕獲する。練習を俯瞰で見ていると、そのような違いが感じられる。もちろん、どちらの方法も魚を獲るのは簡単ではない。前者は疑似餌を動かす技術が不自然であれば魚は食いつかず、後者は網に穴が開いていれば魚はスルリと逃げ出してしまう。
さてさて、今シーズン徳島は一体何匹の魚を釣り上げられるだろうか。こうご期待!
【KEY PLAYER】23 鈴木徳真
ピックアップしたのは、鈴木徳真だ。
プロ3年目を迎えるボランチで、高校時代は前橋育英高校(群馬)で主将を務め、世代別代表にも名を連ねた。筑波大学(茨城)を経て、プロ生活をスタート。文字に起こすと絵に描いたようなエリート街道だ。
しかし、鈴木徳は昨シーズンの今頃、「俺の心の中は雑草魂」と話してくれた。詳しく聞くと「町クラブで育ち、高校・大学は名門に行かせてもらいましたが、とにかく“こいつには絶対負けたくねえ!”というハングリーさでやってきました。劣等感を感じているわけではないですが、比較されて周りの方が上手いと言われ続けて“絶対負けねえ!”と思ってやってきたんです」と語った。冷静そうな外見とは裏腹に、心には常にアツいものを秘めている。
新生・徳島。ボランチは昨シーズン以上に重要な役割を任されそうだ。前述のとおり、今シーズンのチームは網を張るようにして前進していく。ロジック通りの試合運びをするためには、ピッチ中央で構えるボランチが綻びを与えるわけにはいかない。鈴木徳は自身の特長を「危機察知能力」としているが、予測して奪いに行ったり、スペースを埋めたりといった能力が必ず求められる。それでいて、彼は止める・蹴るの基本技術も高い。
初のJ1挑戦だが、鈴木徳は昨シーズン以上に輝く。そんな予感がする。
文=柏原敏
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