福岡は、不吉な“5年ジンクス”を打破することができるか [写真]=avispa fukuoka
昨シーズンは、J2リーグ最少失点数(29失点)の堅守が、アビスパ福岡をJ1昇格へと導いた。前線から連動したプレッシングでボールを奪うと、サイドを起点に縦へ鋭くカウンターを仕掛け、先制点を奪って“ウノゼロ(1-0)”で勝利するという必勝パターンが定着したシーズンだった。それは、長谷部茂利監督が「1人が動き出すと、GKまで細かくポジションを変えてボールを奪いにいく連動性が、ひとつの形になった」と胸を張るほどの完成度だった。この堅守速攻スタイルをJ1でも継続し、「その強度と質を高め、リーグ戦は勝ち点50以上で10位以内、カップ戦はベスト4を目指す」(長谷部監督)というのが今シーズンの目標だ。
とはいえ、守備の要だった上島拓巳が期限付き移籍期間満了で柏レイソルへ復帰するなど、12名がチームを退団。新加入選手は、元スウェーデン代表のエミル・サロモンソンを完全移籍で獲得したことを含め、13名となった。リーグ戦を戦い抜くための大きなポイントは、この新加入選手たちがいかに長谷部スタイルを体現するかにかかっている。その点ではJ1経験があり、2019年に長谷部監督率いる水戸ホーリーホックでプレーしていたDFの宮大樹、志知孝明が加わったことは心強い。宮は新加入ながらディフェンスラインを積極的に統率しており、「細かいラインの上げ下げや駆け引きなど、自分が声を出して引っ張りたい」と意欲的だ。
一方で、攻撃面については課題も多い。昨シーズンはリーグ戦15試合が1-0の勝利だったが、今シーズンは複数得点を狙えるようにならなければ勝利を手にすることが難しくなるだろう。決定力不足、攻撃パターンの少なさという課題に対し、昨シーズンにセレッソ大阪でチームトップの9得点を挙げたブルーノ・メンデス、元U-19ベルギー代表のジョルディ・クルークス、サンフレッチェ広島や大分トリニータでJ1経験のある渡大生、そしてサガン鳥栖から5年ぶりに福岡へ電撃復帰した金森健志など、実績があり運動量豊富でなおかつ守備の役割も遂行できる選手たちが加わった。さらに、大宮アルディージャやアルビレックス新潟で活躍した大型ボランチのカウエを獲得。長谷部監督はカウエについて「体のサイズと長い手足を生かしたプレーが魅力的で、ボール奪取能力に長けており、ボールを配ることも上手な選手」と、水戸時代から注目していたことを明かしており、補強への手応えをのぞかせた。カウエはキャンプ後の合流となり、チームにフィットするにはまだ時間がかかりそうだが、その配球センスを生かすことができれば攻撃パターンもより厚みを増しそうだ。
リーグ10位以内を目標に掲げながらも、現実的な目標は『残留』だ。福岡は2001年、2006年、2011年、2016年と5年周期でJ1を戦っているが、これまで残留を経験したことがない。この“5年ジンクス”を打破し、クラブ初のJ1残留へ向けた2021シーズンが、今始まろうとしている。
【KEY PLAYER】27 ブルーノ・メンデス
センターフォワードのB・メンデスには、ゴールに直結する仕事が求められる。C大阪在籍時にリーグ9得点を挙げた得点能力も魅力的だが、彼の仕事はそれだけではない。キャンプで2トップを組んだ山岸祐也は「ブルーノ(・メンデス)はストライカータイプだと思っていたが、スルーパスやフリックへの反応も速くてポストプレーもできるので、ワンタッチで生かしたり、自分が動き出して空いたり、そういうことができそうな選手」と話しており、チームの攻撃時のコンビネーションを増やし、カウンター主体から脱却させるという使命も背負っている。
ところで今シーズン、福岡は7名の外国籍選手が在籍することとなり、彼らのキャラクターがチームの雰囲気を一層明るくしている。キャンプ中、練習前に外国籍選手と通訳らでリフティングをしていた時のこと。身長188cm、体重90kgのパワフルストライカー、ファンマ・デルガドがターゲットにされ、リフティングミス。すると「ブラジル人は嫌いだ。もう君らとはやらない!」とファンマが拗ねて、B・メンデスは「あの大男が小学生みたいに拗ねているのが面白くて」とお腹を抱えていたそうだ。
外国籍選手のアニキ的存在は、ブラジル人のドウグラス・グローリ。B・メンデスや、キャンプ後に合流したカウエの面倒を見ているそうで、彼らの仲の良さにも注目していきたい。
文=新甫條利子
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By 新甫條利子