チームは11人の新加入選手と、国内外で実績を持つロティーナ監督を迎えた [写真]=平柳麻衣
今オフ、清水エスパルスは積極的な戦力補強で注目を集めた。11人の新加入選手を迎え、 指揮官には国内外で実績を持つミゲル・アンヘル・ロティーナ氏を据えて“超過密日程”が待ち受ける新シーズンに挑む。
新型コロナウイルス感染対策のための隔離期間を経て1月23日よりチームに合流したロティーナ監督は、守備の整備に多くの時間を割いてきた。「1センチ、1ミリも狂わないポジション取りが求められる」(金子翔太)緻密なサッカーを構築すべく、チーム立ち上げ当初は「頭が疲れる」と口にする選手も多かった。しかし、練習試合を重ねるごとに「失点しなければ、まず負けない」(中村慶太)と、戦術の浸透度に自信を深めてきた。監督の意図を各々が身体に染み込ませ、「考えなくても身体が勝手に動くような状態」(片山瑛一)まで達すれば、2年連続リーグ最多失点を記録している守備面は大幅な改善が見込まれるはずだ。
ただし、「守備のための守備ではなく、良い攻撃をするために良い守備をし、攻守にわたって主導権を握ってゴールに向かっていく」と大熊清ゼネラルマネージャーが示したように、目指す方向性はポゼッションサッカーへの転換を打ち出した昨シーズンと大きくは変わらない。
「ロティーナ監督のサッカーは、ブロックを固めて相手を引き込むイメージが強かったですが、僕たちがトライしているのはブロックを固めながらもチャレンジして奪いにいく形」(金子)
攻守においてアグレッシブな姿勢を保ち、ビルドアップの技術を向上させたピーター・クラモフスキー監督体制。原点に立ち返り、球際の強さや勝利への執念をプレーで表現することに努めた平岡宏章監督体制。2人の指揮官の下で積み重ねた昨シーズンの経験を決して無駄にせず、「“上手い清水エスパルス”ではなく“強い清水エスパルス”へ」(大熊GM)と、変革の道をひた走る。
新戦力は日本代表GK権田修一を筆頭に、ポルトガルリーグで得点王争いをしていたチアゴ・サンタナ、大分トリニータでキャプテンを務めていた鈴木義宜、東京五輪世代のユーティリティープレーヤー・原輝綺、昨シーズンのJ2得点ランキングで2位に食い込んだディサロ燦シルヴァーノなど、個性的な顔触れが並んでいる。
だが、「既存の選手が特長を引き出してあげなきゃと思っていましたけど、(新加入選手たちは)どの選手も周りに合わせられるし、チームに対して献身的で、元々抱いていたイメージと違いました」と金子が語ったように、いずれも順応性の高さを発揮。さらに、セレッソ大阪時代からロティーナ監督の指導を受けている片山、語学が堪能な権田、指宿洋史、ディサロ、ノリエガ・エリックらが橋渡し役を担うことで、外国籍選手も含め「ユニットを構築して戦う」チームの一体感は高まっている。
基盤は整った。あとは、「(新加入選手たちと)いかに良い化学反応を起こせるか」(中村)。選手、スタッフ、フロントが持てる力のすべてを発揮し、高みを目指して突き進む。
【KEY PLAYER】11 中山克広
昨シーズンのC大阪で坂元達裕がブレイクしたように、“ロティーナ・サッカー”においてはサイドハーフの突破力が攻撃面のカギを握る。そこで期待が掛かるのが、横浜FCから完全移籍で加入した中山克広だ。中山は「ドリブル、スピードといった部分に注目してほしいです」と自身の特長を打ち出すが、「縦への突破だけでは対策されてしまうので、意外と(味方と連動しながら)器用なこともできるってところも見せていきたい」と協調性も備えていることを明かしている。横浜FC時代に下平隆宏監督の下で培った戦術理解力を生かしながら、スムーズにチームに溶け込んだ。
横浜FCのアカデミーで育った中山だが、かつて清水の練習に参加したことがある。専修大学時代、清水にケガ人が続出していた時期に、チームメイトとともに急遽呼ばれた。当時、練習生の中山に対してよく面倒を見てくれたのが、ドリブラーの村田和哉だった。「村田さんもスピードタイプで、自分と似ている部分があるなと思いながらプレーをよく見させてもらいました」
村田はアグレッシブなプレースタイルだけでなく、自主的に地域貢献活動に取り組む姿勢などから多くのサポーターに愛された。奇しくも中山が清水でつける背番号は、当時の村田と同じ11番。「僕も、人とお話しするのは好きなタイプなので、サポーターの方々に声を掛けてもらえたらすごくうれしいです。今はコロナ禍で難しいですけど、少しでも皆さんと絡める機会があるのなら積極的に参加していきたい」。温和で親しみやすいキャラクターと、精力的にゴールに向かうプレーで、中山はサポーターの心をガッチリとつかむ。
文=平柳麻衣
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By 平柳麻衣