[写真]=J.LEAGUE、兼子愼一郎
■アビスパ福岡 攻守両面で戦力アップに成功。懸念はJ1での経験不足
【プラス材料】
昨季J2最少失点(29失点)という堅守を武器に、5年ぶりのJ1参戦。前線から組織的にボールを奪い、カウンターでゴールに向かう堅守速攻スタイルを継続する。
身長190センチを超えるDFカルロス・グティエレスやDF三國ケネディエブスをはじめ、189センチのDFドウグラス・グローリ、186センチのDF宮大樹、180センチのDF奈良竜樹と迫力あるセンターバックが堅守の要。高身長を生かしたセットプレーも武器になる。
攻撃面ではセレッソ大阪で昨季9得点を挙げたFWブルーノ・メンデスのほか、サガン鳥栖からMF金森健志、大分トリニータからFW渡大生など、決定力や機動力のある選手を補強。既存のFWフアンマ・デルガド、FW石津大介、FW山岸祐也、FW城後寿といった選手たちとのコンビネーションが増えれば得点力アップも見込めるだろう。
【マイナス材料】
J1初采配となる長谷部茂利監督をはじめ、堅守速攻を司るボランチとGKにJ1経験者が少ないことは懸念材料。ボランチではMF田邉草民がFC東京でJ1通算76試合の出場歴を持つが、キャプテンのMF前寛之は北海道コンサドーレ札幌時代の4試合、新加入のカウエが大宮アルディージャで14試合、MF重廣卓也はJ1初参戦となる。同じくGKもGK杉山力裕を除き、J1出場経験者がいない。昨季J1で最少失点(28失点)だった名古屋グランパスを相手に、それを上回るような組織的な堅守スタイルを表現できるか。
また、右サイドで先発候補の金森の加入が開幕10日前と、直前だったことも不安要素のひとつ。ファーストDFとして、どこまで長谷部監督が求めるプレッシングやポジショニングを遂行できるか。
文:新甫條利子
■名古屋グランパス 破壊力を増した前線のパフォーマンスに注目
【プラス材料】
優勝候補の一角としての前評判の高さ、そして、何より選手全員が抱く“タイトル獲得”のモチベーションが開幕ダッシュを力強く後押しする。
昨季3位の結果は自信となって「次はタイトル」(DF中谷進之介)というチームの一体感を生み出し、それは実力派揃いの新加入選手たちにも深く浸透している。沖縄キャンプでのトレーニングも順調で、J2やJ3のクラブ相手ながら練習試合は4戦4勝。前線の選手のみで計20得点を挙げるなど、攻撃陣の仕上がりも良い。
注目はやはりFW柿谷曜一朗とFW齋藤学の2名。彼らがチームファーストの姿勢をとっていることで、堅牢かつスピーディな攻守のバランスも保ちながらレベルアップを目指せている。
【マイナス材料】
素晴らしいプレシーズンを送れたことで、現状でのマイナス要素はほとんどないというのが正直なところ。左サイドバックでの起用が続くDF森下龍矢の適応のほどが少し気になる程度で、ディフェンスライン、中盤、前線と、まずは名古屋グランパスの戦術をきちんと全うするという点で同じ方向を向けているのが大きな要因だ。
逆に言えば、その“名古屋の戦術”という部分をどこまで実戦レベルで運用できるか、新加入選手を交えた中での判断基準がどうか、という部分が不安要素というよりは未知数の領域で、既存メンバーたちのリーダーシップが問われるところでもある。DF丸山祐市やDF吉田豊、MF米本拓司、MF稲垣祥らチームの屋台骨となる選手たちの振る舞いに注目だ。
文:今井雄一朗