開幕戦でゴールを挙げたC大阪の大久保嘉人 [写真]=Getty Images
待望の瞬間は42分に訪れた。
松田陸が右サイドの高い位置で坂元達裕からのパス受けた時、セレッソ大阪の新背番号20・大久保嘉人は「絶対にくる」という確信を持ってニアサイドに飛び込んだ。案の定、ドンピシャリのタイミングで絶妙のクロスが入り、彼は迷わずヘッド。次の瞬間、ボールは激しくネットを揺らした。
2021年2月27日、ヤンマースタジアム長居で行われた柏レイソルとの2021年J1開幕戦。38歳の点取り屋はジュビロ磐田時代の2019年11月30日、名古屋グランパス戦以来となるJ1通算186点目をゲットした。古巣・C大阪では2006年11月11日のジュビロ磐田戦以来の復活弾。これにはスタメンに大抜擢したレヴィー・クルピ監督も驚かされたのではないだろうか。
「彼の経験だけでなく、今の実力を見ても先発起用するに相応しいと考えて抜擢しました。ブラジルでもよく言いますが、ストライカーというのはゴールをかぎ分ける嗅覚を持っている。それが何よりも大事。彼はまさしく嗅覚を持った選手。フィニッシュの精度も備えた点取り屋だと思います」
このように絶賛したブラジル人指揮官の期待に大久保は見事に応え、2-0勝利の原動力となった。しかしながら、数日前まで彼の序列は決して高くなかった。2月の宮崎キャンプの練習試合では一度も主力組に入ったことがなく、若手と一緒に後半に出てくるのが常だったからだ。
「3日前くらいにいきなり先発組に入って、自分でも『まさか』と驚きました。正直、『メンバーに入れればいいな』くらいな感じだったので。『ここはやらないと後がない』という気持ちになりました」と本人も期待と危機感を併せ持った状態でピッチに立った。
そこで結果を出してしまうのだから、やはり大物だ。序盤から前へ前へと積極的に行く姿勢を示し、35分には自身の鋭い飛び出しから上島拓巳を一発退場へと追い込んだ。それで数的優位になり、C大阪は一気呵成に攻め込むことができた。ある意味、ゴールが生まれるのは必然だったと言ってもいいだろう。
生粋のゴールハンターとして名を馳せてきた大久保も、川崎フロンターレで15得点を挙げた2016年以降は苦境続きだった。FC東京では期待外れに終わり、一時的に川崎に復帰するも、スタメン落ちするケースが多くなった。そこで本人は心機一転、磐田へ。だが、J1残留請負人になれず、2019年は2002年以来のJ2でのプレーを強いられた。そこで復調できればよかったが、同年は得点がわずか1にとどまり、「ボールが全く来なかった」と本人も嘆いた。さらに2020年に赴いた東京ヴェルディでもまさかのシーズン無得点。悪循環に歯止めをかけることができなかった。
「大久保はもう終わった」という声もチラホラ聞こえてくるようになり、彼自身も引退が脳裏をよぎることがあったようだ。
「俺はもともとサッカーがあんまり好きじゃないから、面白いと思えなくなったらやめる。それはプロに入った時から言っていたこと。正直、走るのも面倒くさいからね」と本人は独特の言い回しで引き際に関するコメントをしたことがあるが、本当にここ2年間くらいは本当にその瀬戸際まで行ったのだろう。
迷路に入り込んだ38歳のFWに手を差し伸べたのが古巣・C大阪。ご存じの通り、森島寛晃社長と梶野智幸強化部長は若かりし日に面倒を見てもらった大先輩たちだ。「嘉人になんとか、J1通算200点を取らせたい」と梶野強化部長も語気を強めたように、自身を再生させ、完全燃焼させてキャリアを終わらせたいと願う人々の期待に応えたいと、大久保も改めて強く感じたに違いない。
「ヴィッセル(神戸)にいた時も、ジュビロやヴェルディにいた時もそうだけど、なんで点が入らないかと言うと、シュートが打てないから。神戸で(2012年に)4点だったのが、(2013年の)川崎で急に26点になったのはボールが来るから。本当に単純なことだから」と本人はゴール数を増やす術を自分なりに分析していたが、チーム事情によって許されないことが多かった。
さまざまな紆余曲折を経て、大久保は今季のC大阪で「確固たる点取り屋」と位置付けられた。前述の通り、クルピ監督も特別の嗅覚を持った選手とリスペクトし、仲間もお膳立てしてくれる。とりわけ清武弘嗣とのコンビは、かつて川崎で見る者を魅了した中村憲剛との連携を彷彿させるものがあった。
「キヨとやってると『おお、これ懐かしいな』っていう感覚がすごくある。どんどん当ててくれるしね。やっぱり自分はボールを当ててくれないとリズムが作れない。それをキヨは分かってくれてる。ボールがくれば入る予感はありますね」と開幕直前にも目を輝かせていたが、その言葉通り、最高の一発を決めることができた。
それも清武との関係に依存する形ではなく、坂元や松田ら他のメンバーとも絡み合ってのゴールだった。それだけに、もっともっと得点バリエーションが増えてきそうな雰囲気はある。多彩なパターンで数字を伸ばし、200の大台をクリアして、C大阪に悲願のJ1初タイトルをもたらす――。それが叶えば、大久保嘉人にとって最高のシナリオになる。
「15年ぶりに帰ってきて思うのは、クラブがすごく大きくなったなと。タイトルを取らないといけないチームになったと感じます。川崎みたいになろうと思うなら、やっぱり継続して自分たちの方向性をやり続けること。セレッソは俺が若かった頃から3点取られても4点取って勝つサッカーやっていましたけど、攻撃的に行って勝てれば見ている人も喜ぶ。それを続けていくことが大事ですね」
20番の先輩・西澤明訓を名実ともに超えるべく、大ベテランの復活ストーリーはここから本格的に幕を開ける。
文=元川悦子
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By 元川悦子