4月の『明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVP』が発表され、J2は京都サンガF.C.に所属するFWピーター ウタカが受賞した。4月は5戦5勝、個人としてはハットトリックを含む5得点3アシストを記録した。得点・アシストもさることながら、今季は前線からの果敢な守備でもチームに大きく貢献している。「自分は今まさに変わっている段階です」と、曺貴裁監督との出会いが“ウタカ変貌”の理由であることを明かしてくれた。
取材・文=三島大輔
――4月の『明治安田生命Jリーグ KONAMI月間MVP』受賞おめでとうございます! まずは率直な感想からお願いします。
ウタカ 非常に嬉しく思います。家族、チームメイト、チーム関係者、ファン・サポーターの皆さんの力があっての受賞です。感謝したいと思います。
――個人としては5試合で5得点3アシストと大活躍でしたね。
ウカタ 4月は結果が出るようになってきました。全てが良かったわけではないですが、悪い時でもしっかりと結果を出せた。自分を含めて全員がチームのために貢献しようとする姿勢があります。そういった気持ちがゴールとアシストに結びついたと思います。ただ、大事なのは毎試合変わらずに貢献し続けることです。
――4月は5戦全勝でした。開幕時期と比較してどのあたりが向上したのでしょう?
ウタカ 今季は曺貴裁監督体制で新たにスタートし、2月・3月はまだチームを作っている最中でした。それが4月に入って形ができてきた。チームが一つになれた4月だったと思います。チームの雰囲気というのもすごく大事で、その全ての始まりは曺監督の存在なんです。常にポジティブでエネルギーを注いでくれます。選手たちはやる気に満ち溢れ、チームに活気が生まれ、みんな「早く練習がしたい!」というムードになっています。今は結果も出ていますし、チームに活気がありますので、それが混ざり合って5戦全勝につながったと思います。
――その曺監督についてうかがいます。これまで多くの指導者のもとでプレーしていますが、曺監督との出会いで何か変わったことはありますか?
ウタカ 曺監督は自分のスタイルを変えてくれました。以前までは『得点を取るだけの選手』と皆さんが思っていたかもしれません。でも、きっと今は『守備でも走る選手』というイメージに変わっていることでしょう。曺監督のスタイルや戦術を理解して、自分は今まさに変わっている段階です。曺監督は本当にスペシャルな指導者です。ユニークな一面を持ちつつ、頭の中に無数のアイディアがある。とても熱く、高い志を持っています。今季はただ日々を過ごすのではなく、曺監督のもとでたくさんのことを吸収していきたいです。もちろん監督からいろいろなことを要求されるのですが、その要求も決して不可能なことではない。難しそうだけど頑張ったらできることを要求されるので、「ここで頑張ったらできるようになる」「自分が変われる」という感覚を全員が持っていると思います。その中で「何かきっかけを掴みたい」という気持ちを全員が持っているからこそ、今チームがうまくいっているのだと思います。
――その曺監督のもとで攻撃と守備が一体となった素晴らしいサッカーを披露しています。中でも最前線のウタカ選手、最後尾のヨルディ バイス選手はチームの軸です。バイス選手はどんな存在ですか?
ウタカ 彼とは良い関係性を築けています。日頃から互いにベストを要求し合い、よくコミュニケーションを取っています。試合でもよくパスを出してくれますし、自分も彼を探します。センターバックの選手ですが、得点に対してすごくハングリーで何度も前線に上がってきます(笑)。ただ、彼の攻撃力はチームの武器になっていますよ。
――バイス選手とウタカ選手のちょうど中間ポジションを務めるのが19歳の川﨑颯太選手です。現在急成長を遂げていると思うのですが、ウタカ選手の目にはどう映っていますか?
ウタカ 犬に例えるならブルドックですかね(笑)。ソウタは走り出したら止まりません。「ボールよりも走っているのでは?」と錯覚してしまうほどです(笑)。昔のミランで例えるならジェンナーロ・ガットゥーゾ。どのチームも一人は欲しいタイプの選手ではないでしょうか。ファンタスティックなタイプではないですが、チームのために必死にプレーしてくれる。個人的にはストライカーよりも重宝されても良いと思っています。何度もボールを取ってくれますし、非常に大事な選手です。対戦相手にいたら嫌なので、味方で本当に良かったです(笑)。彼の能力は誰しもが認めるところなので、自分はサッカーの本質的な部分を伝えていきたいと思います。もっともっと素晴らしい選手になると思いますよ。
――今季これからについてもうかがいます。まだまだシーズンは続いていきますが、J1に昇格するためこれから大事になってくることは何でしょうか?
ウタカ 今季のJ2はより難しいなという感覚があります。全チームが自分のことを分析して止めに来ている印象です。ただ、それはストライカーの使命ですし、良いストライカーの勲章でもあると感じています。今はチーム状態がすごく良いので、J1昇格に向けて続けていくことが重要です。「もっとできる」という気持ちを持ってやること。自分の持っている能力+エクストラの力を出すことが大事です。12節のFC琉球戦はドローでしたが、終了後のロッカールームではまるで負けた後のような表情をしている選手が多かった。敵地でのドローは決して悪くない結果です。ただ、結果に納得していない選手が多かったので、そういったチームの雰囲気を見てさらに強くなれると思いました。その道を歩み続けていけば、J1昇格につながると思います。
――Jリーグ通算7季目を迎えますが、2季連続同一クラブでプレーすることは初めてです。改めて京都に残留した理由、京都で成し遂げたいことを教えてください。
ウタカ 京都で1年間プレーしてこの街のサッカー文化、クラブの姿勢に好感を持ちました。京都は11季もJ2にいるのでJ1昇格の手助けをすることがミッションです。J1昇格、そしてJ1定着という目標を達成するため残留を決めました。昨季得点王になりましたが、周囲の皆さんのおかげで個人タイトルを獲得できたと思っています。感謝とリスペクトの気持ちを抱いているので、皆さんにプレーで恩返しをしていきたいです。
――では、最後にもう一つ質問です。進学や就職などで4月から新しい環境に身を置いている人も多いと思います。ウタカ選手はプロサッカー選手として4カ国、14クラブで活躍してきました。どうすれば新しい環境に適応して成功できるのか。4月MVPのウタカ選手からそのコツを最後に教えていただければと思います。
ウタカ まずは過去にどうやって成功したのかという経験を忘れないことです。そしてさらにその先にあるものをどうやって掴むのか。何かに新しく挑戦することは平坦な道のりではないと思います。茨の道に差し掛かった時、過去の成功体験を思い出してください。ネバーギブアップの精神を持ち、乗り越えていく姿勢が大事です。時に失敗することもあるでしょう。ただ、失敗を忘れずにそこから学んで前に進んでください。これは若手選手によく言っているのですが、一回ミスをしてもチャレンジをやめないこと。ミスは人生の一部。そのミスを活かして次につなげていってほしいと思います。
By 三島大輔
サッカーキング編集部