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「難しいゲームになった」…徳島と辛くもドローの名古屋、具体化した新たな課題とは

2021.05.23

4年ぶりの対戦はスコアレスドローに終わった徳島と名古屋 [写真]=J.LEAGUE

「勝ち点1を分け合った」と表現されることの多い引き分けという結果も、この試合においては両チームの感じ方には天と地ほどの隔たりがあった。ポヤトス監督がようやく入国して1カ月ほどが経った徳島にとっては、自分たちの狙いがかなりのレベルで奏功し、ここまでで最高の出来だと高く評価ができるものだった。「勝つことは重要だが、チームがやってくれたことに満足している」と、スペイン人指揮官は満面の笑みを浮かべ、「2位の名古屋を相手にここまでできたことをおめでとうと言いたい」と続ける。翻って名古屋のイタリア人指揮官は不満げだった。多くの水が撒かれたピッチはパスをつなぎたいチームのホームスタジアムとしてはよくある風景だが、「サッカーをやれるようなグラウンドコンディションではなかった」とまくし立て、試合の内容以前に問題があったと眉間に皺を寄せた。

 それはあるいは、徳島に上手くしてやられた悔しさを噛み殺してのことだったのかもしれない。稲垣祥は「中盤としても前に行かないとつながれるし、行きすぎると蹴られて収められる、という難しいゲームになった」と言い、準備していた対策が上手く機能させられなかったと中谷進之介も唇を噛んだ。徳島はリスクマネジメントが明確かつ連動性に優れ、ビルドアップにプレスが来ればシンプルに垣田裕暉へのロングフィードを蹴り、前線でイニシアチブを握った垣田に名古屋が対応しようと下がれば、岩尾憲と鈴木徳真が巧みなバランスで遅攻を構築した。サイドバックの岸田武流とジエゴは躍動感にあふれ、対面のマテウスや相馬勇紀といった名古屋の起点にも厳しく対応。「マテウスのところは自分も戻ってサポートすることはすごく意識していた」と一列前の杉森考起が振り返ったように、守備におけるバランスや距離感も良く90分間を過ごしていた。

 名古屋もやられてばかりではなかったが、縦の深さを利用する徳島の戦い方の前に間延びが著しく、また垣田とのマッチアップで中谷や木本恭生が優位性を保てなかったことも影響し、主導権をつかみきれない。この辺りは言っても詮無いこととは言え、前節で負傷交代し、未だ公式リリースはないが「数カ月いないかなという可能性も出てきた」(フィッカデンティ監督)という丸山祐市の不在も嘆かれるところ。木本が役不足ということではなく、「今までなら喋らないでできたところ、丸山選手との僕の関係性ならそうできていたところ」(中谷)という部分に力を割かざるを得なかったところで、無失点には抑えたものの、後手を踏んだ嫌いはあったということだ。来月にはAFCチャンピオンズリーグも控える名古屋だが、丸山抜きでの守備陣再構築は急務。負けなかったことで良い実戦練習になったとも言えるが、順位表を見ればそうも言っていられない。

 インテンシティも含めて実力をいかんなく発揮した徳島にしても、無得点では手放しには喜べない。いくつかあった決定機の一つを決めていれば、特に後半は相手の倍、シュートを打っていてこの結果では、精進すべき箇所は無数に存在する。決定力の部分では名古屋も大いに反省すべき試合で、0-0で推移するゲーム展開はその内容にかかわらずある意味では彼らのフィールドであり、75分の決定機を柿谷が決めていれば「実に名古屋らしい」と冠される勝利になっていたのは間違いなかった。思い通りの攻守の中で決勝点が奪えなかった徳島と、しぶとく強かに勝ち点3を奪えなかった名古屋に足りなかったものが、実は共通のものだったというのは何とも興味深いところだ。

 自信を深めた徳島と、新たな課題が具体化した名古屋。次戦へのアプローチはとりわけメンタル面において大きな違いがあるが、そこをどう改善してくるかは監督の腕の見せ所であり、選手は意地の張りどころだ。週明け、ミッドウィークにすぐさまやってくる“追試”で、両チームの出す答えはどんな結果を導き出すか。

文=今井雄一朗

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