[写真]=兼子愼一郎、鈴木颯太朗
■湘南ベルマーレ 劣勢を覆す底力は見事だが、止まらない失点は気がかり
【プラス材料】
前節は北海道コンサドーレ札幌とアウェイで対戦し、1-1の引き分けを演じて勝ち点1を獲得。山口智監督に代わって初の勝利となった第33節の横浜FC戦を含め、ここ3試合を1勝2分と熾烈な残留争いの渦中で粘り強く勝ち点を積み上げている。僅差ながら降格圏を脱し、順位も15位に上げた。
逆転勝利を収めた横浜FC戦然り、前半にリードを許しながら後半に同点に追いついた札幌戦然り、劣勢を覆している展開も見逃せない。先に得点を許している点は反省材料だが、ゴールへの推進力や連動性は向上し、チャンスの数も増えている。MF平岡大陽が札幌戦でJ1初得点をマークしたように個々も特長を発揮しており、指揮官のもと、チーム・個人ともにプレーに確信を得ているように映る。
【マイナス材料】
札幌戦はここ最近では珍しくゲームの入りが悪く、後手を踏んだ。残留争いのプレッシャーがかかる中、高い集中力をもって試合に臨んでいることは間違いないが、立ち上がりの大切さは今一度意識したい。
攻撃面に向上を見る一方、毎試合のように失点している点は気になるところだ。プラス材料で触れたとおり、ビハインドを覆す展開やメンタリティは得難い。ただ、それとは別に先手を奪うことで勝負をより優位に進めたい。
サンフレッチェ広島との通算対戦成績は14勝6分22敗と後塵を拝する。ホームでも9勝2分9敗と五分の対戦成績にとどまっている。降格圏を脱したとはいえ、下位グループは僅差の勝ち点でひしめいており、残留争いは全く予断を許さない。
文:隈元大吾
■サンフレッチェ広島 大敗の中で披露した攻撃の形に光明を見出したいが
【プラス材料】
たしかに鹿島アントラーズには完敗した。しかし、攻撃面で収穫を得たことは間違いない。
例えばゴールシーン。MF東俊希のふわっとしたパスに反応して飛び込んだMF青山敏弘がペナルティエリアの中まで侵入し、深くえぐってクロスを供給。そこにMFエゼキエウが飛び込んできて合わせた。ボランチが深く入り込んで決定的なシーンを作り、そこにFWではなくシャドーの選手が飛び込んでゴールを決めている。サイドで起点を作り、前線の選手を追い越してビッグチャンスを作る。この形こそ、サンフレッチェ広島の本質である。
まだ単発ではあるが、青山のパスにMF森島司が飛び出して決定的なシュートを放つなどの場面も。沢田謙太郎新監督の意図が浸透していけば、攻撃力は増幅していく。
【マイナス材料】
DF佐々木翔の出場停止は本当に痛い。ボール奪取能力だけでなく、ビルドアップや得点の演出能力も高い。さらにリスク管理面でも彼の役割が大きかっただけに、たとえDF塩谷司がスタメン復帰したとしても、その穴を埋めきることができるかどうか。左サイドのストッパーに誰を起用したとしても難しい状況となるのは間違いなく、チーム全体でカバーしないといけない。
また、中3日ということで、青山やFWドウグラス・ヴィエイラといったベテランが起用できる状態かどうかも不安材料。残留が決まるも、ACL出場権には届かない。一方、残留に全力を尽くす湘南ベルマーレの気迫に対応できるかどうか。モチベーションをどこまで高め、そして気持ちで負けない闘いができるかどうかが大きなカギになる。
文:紫熊倶楽部 中野和也