[写真]=J.LEAGUE、兼子愼一郎
■サンフレッチェ広島 人員不足の前線で輝きを放つ生え抜きFWの躍動に期待
【プラス材料】
アウェイで戦った前節の清水エスパルス戦は厳しい結果に終わった。その中でもケガに苦しんでいた若者たちが復帰し、その能力を見せてくれたのは、今のサンフレッチェ広島にとっては最も希望が持てる出来事だ。
特に選手層の薄さが問題となっているFW陣において、FW鮎川峻の復活は大きな価値がある。清水戦では質の高いオフ・ザ・ボールの動きでチャンスを作り、個人の突破から決定的なシュートも放った。「決めきれていないことが悔しい」とストライカーは語るが、間違いなく相手に対する脅威になっていた。試合終了間際に出場してチャンスを作ったMF土肥航大も、自信に満ちたプレーでゴールに向かうパスを連発している。
ともにプロ2年目。広島ユース出身の20歳コンビの躍動は来季以降に向けて大きな収穫となっている。
【マイナス材料】
沢田謙太郎監督の就任以降、3試合で1分2敗とまだ勝利がない。いずれも試合の入りが重く、相手のやりたいことを受けてしまっている感は否めない。清水戦でも、本来であれば前線からのプレスを仕掛けたかったのにそれができず、失点してからスイッチが入るようになった状況。ビルドアップの精度も悪く、清水戦ではミスからボールを失い、決定的なカウンターを受けるシーンが何度もあった。
また、攻撃的に行こうという意志を見せるも、具体的に決定的なシーンを演出する回数が少なく、3試合で1得点という現実は内容と合致。FWドウグラス・ヴィエイラのケガによる不在は痛いが、彼の代わりを務められる選手がいないことも含め、今季の課題を象徴している。
文:紫熊倶楽部 中野和也
■FC東京 守備組織の再建が最優先。存在感見せる若手MFは結果を残せるか
【プラス材料】
前節は徳島ヴォルティスにすべての面で上回られ、完敗を喫した。この試合から指揮を執った森下申一新監督の初陣を飾ることができず、現時点では明るい材料はなかなか見出しにくい状況だ。
ただ、徳島戦後に森下監督は「あと2試合は“闘える”選手を起用する」と明言。そのため今節の先発は流動的だが、苦況の中でも存在感を発揮したMF安部柊斗やMF渡邊凌磨らのリバウンドメンタリティに期待をしたい。特に渡邊は徳島戦で今季初のフル出場を果たし、今節に向けて「どのような内容でも結果を出したい」と意気込みを見せている。
また、DF森重真人の出場停止が明けることは少なからずプラスと言えるだろう。ディフェンス陣のリーダーとして、守備を立て直すキーマンとなるはずだ。
【マイナス材料】
第35節の横浜F・マリノス戦での大敗を引きずるかのように、徳島戦でも2失点を喫した。まずは2試合合計10失点の守備の立て直しが急務だ。しかし、今節の対戦相手であるサンフレッチェ広島もしっかりとボールを動かすことを目指すチームであり、それに対して連動した形でプレスをかけなければ、苦戦は避けられないだろう。
広島もここ4試合勝ちきれず、FC東京と似た状況でもある。ただ、今節は彼らにとって今季最後の『エディオンスタジアム広島』での試合であり、ホームで一層の奮起が促されることは否めない。
何より、上位争いや残留争いのモチベーションを言い訳にできない両者にとって、今季をとおして積み上げてきたもの、地力の差が結果に表れることになるはずだ。チームの熟成という観点で、どちらに軍配が上がるのかが見どころになる一戦でもある。
文:totoONE編集部