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「今のG大阪は強くない。それを認めて全力で」“若き闘士”齊藤未月が示したいこと

2022.07.11

川崎F戦で先発出場した齊藤未月 [写真]=J.LEAGUE

 7月の過密日程が続く明治安田生命J1リーグ。9日の第21節では川崎フロンターレガンバ大阪に4-0で圧勝し、消化試合数が1試合多い首位の横浜F・マリノスに勝ち点差7と迫った。

 その川崎Fに大敗したG大阪はJ2降格圏ギリギリの15位と、非常に厳しい状況だ。

 5月から6月にかけて4連敗を喫した後、6月29日に好調・サンフレッチェ広島を2-0で叩き、7月2日の浦和レッズ戦も1-1でドローと、浮上のきっかけをつかんだかと思われた。

 しかし、6日の湘南ベルマーレ戦は0-1で苦杯。そこに追い打ちをかけたのが、今回の川崎F戦である。

 J1連覇中の王者との一戦で、彼らは開始わずか6分に失点を喫してしまう。右SB福岡将太が対面のマルシーニョにいとも簡単に突破を許し、折り返しをレアンドロ・ダミアンに決められたのだ。

 そこで踏みとどまれればよかったが、直後にボランチの奥野耕平脇坂泰斗へスパイク裏を見せてしまい、一度は警告が出されたが、VARチェックからのOFRでレッドカード。G大阪は残り80分間を10人で戦わざるを得なくなった。

「最低限でも前半は0-1で終えないといけなかった」と、昌子源が語気を強めたが、それができないのが今の彼らだ。メンタル的な切り替えができず、20分にマルシーニョに2点目を献上。片野坂知宏監督はそこから4-3-2の布陣に変更して攻撃のテコ入れを図ろうとしたが、逆に3、4点目を前半に失った。

「このままではサイドが数的不利になり、次々とクロスを入れられるだけ。4-3-2ではムリ」と中盤の齊藤未月は即座に察知し、キャプテンの倉田秋に進言した。他のチームメートも同意見だったのだろう。それが指揮官に伝わり、再び4-4-1に修正されたが、時すでに遅し。後半は手堅い守備を見せて終えたものの、悔しい敗戦には変わりない。「もっと早く気づかなければいけなかった」と齊藤は悔やんだ。

「広島と浦和にいい試合ができて、湘南戦は負けたけど、今までボールを全く持てなかったチームが多少ボールを持てるようになり、パト(リック)が途中から入ってチャンスを作るという形で戦えた。そのうえでの今回だったので、試合に賭ける気持ちはチームとして強かったのに、幼稚な試合の入りをしてしまった。サポーターもこんな試合を求めていなかったと思いますし、全て僕らの責任。もっと戦わないといけないと強く思っています」と本人も憤りを口にした。

試合終了後、対照的な両者 [写真]=Getty Images

 2019年U-20ワールドカップで日本のキャプテンを務め、2020年まで湘南の主力ボランチとして活躍し、2021年1月からロシア1部のルビン・カザンへ赴いた齊藤。初めての海外挑戦は加入直後のケガなどでリーグ2試合出場という悔しい結果に終わったが、これまでの経験を今年からプレーするG大阪のために全て注ぎ込もうと強い闘志を燃やしていた。

 だが、チームは開幕前と5月に新型コロナ陽性者が発生。東口順昭宇佐美貴史、倉田ら主力級の相次ぐケガも重なり、苦境が続いた。齊藤自身も湘南時代のようなフル稼働とはいかなかった。チームの環境や文化の違いを含め、難しさを感じたに違いない。

「湘南は上を目指してはいるけど、結果的に毎年残留争いに巻き込まれている。だからこそ、選手たちは自分たちの良さを出そうと割り切っている。でもG大阪はもともとヤット(遠藤保仁)さんがいて強かったという過去がある。だけど、今、それは関係ない。ここ数年、いい戦いができていなくて、チームとして変わろうとしている時。強くないということを認めてやらなければいけないんです」と齊藤は外から来た人間として、努めて冷静かつ客観的に現状を分析した。

 そのうえで、若手の奮起を促した。

「貴史君がいなくて、秋君もケガとか、これまで支えてくれた人たちがいないんだったら、若い選手が熱い心、強い心を持たないといけない。それは僕も耕平も、山見(大登)も、今回出た遥海(南野)もそう。若手がエネルギーを持てるような仕向け方ができなかった俺のせいでもあるので、ここから巻き返していかないといけないですね」と語気を強めたのである。

 ただ、希望がないわけではない。試合中に4-3-2から4-4-1への変更を自分たちから指揮官へ提言できたのは好例だ。「湘南戦の時には言えなかったことが川崎F戦では言えた。発信できたことは少し成長できた部分」と齊藤も前向きにコメントする。

 そうやって20歳前後の面々が自らの考えをどんどん発信し、東口や昌子、三浦弦太ら日本代表経験のある面々と同じくらいの存在感や統率力を発揮できるようになれば、G大阪はもっと強くなれる。自主性に秀でる齊藤は力強く周囲をけん引しなければならないのだ。

「僕もそうだし、若い選手が発言する必要がある。もっと気持ちを強くしてやらないといけない。今季は半分過ぎてしまいましたけど、幸いにして試合は残っている。僕はどっしり構えてやるべきことをやろうと思っています」とタフな男は今一度、気を引き締めた。

 7月16日の次戦はセレッソ大阪とのダービー。新戦力の鈴木武蔵と復帰組の食野亮太郎も参戦できる。彼らの能力を最大限生かすべく、齊藤は守備陣とアタッカー陣のつなぎ役にもならなければいけない。

 闘争心溢れる23歳のボランチに課せられるものは少なくない。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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