浦和対川崎が行われた7月30日、埼玉スタジアムで「炎日」イベントが開催された [写真]=野口岳彦
浦和レッズ対川崎フロンターレの試合が行われた7月30日、埼玉スタジアムで縁日ならぬ「炎日」というイベントが開催されていたことをご存じだろうか。浦和のホームゲームと言えば、ファン・サポーターがつくり出す熱狂的な雰囲気が最大の特徴だが、その一方で、試合当日のイベントが話題になることはこれまであまりなかった。しかし、クラブは既存サポーターはもちろんのこと、新規層のファンも楽しめる空間を提供すべく、スタジアム周辺の雰囲気づくりで“イメチェン”を図っている。そんな浦和のホームゲームに密着した。
夏休みだからこそ親子で楽しめるお祭りを
午後2時過ぎ、開門まで2時間という時間にスタジアムに到着。夏真っ盛りとあって気温は40度近い“炎”天下。アスファルトの反射でぎらつく外周を歩いていくと、南広場を過ぎたところで浦和の赤に染まった「炎日」ののぼりとゲートが見えてきた。
「夏休みに子供たちが楽しめるイベントをやろうという話から始まり、夏休みだからこそ子供と一緒に来場した大人も一緒に楽しめるようにしようと思ったんです」
本イベントを担当したマーケティング本部の新井勇規さん、多比良優佑さんが語るように、調節池に建てられたやぐらの周りには、バリエーション豊かな出店が軒を連ねていた。子供が喜ぶようなカラフルなかき氷もあれば、大人がつい手を伸ばしてしまうお酒のおつまみもある。
会場に足を踏み入れて真っ先に目を引いたのは、法被姿の選手たちのビジュアルが印刷された大看板と、その横に無数に連なっていた絵馬だ。各飲食店などで無料配布されていたこの絵馬に、サポーターたちは思い思いに応援メッセージを書き込んでいた。推し選手への愛、ケガで離脱中の選手へのエール、チームの勝利を願うメッセージなど、その内容はさまざま。風が吹くたびにカラカラと涼やかな音を鳴らす様子は壮観だった。
しかし、とにかくこの日は“炎”天下。まずは涼もうと「レインボーかき氷」に手を伸ばした。暑さでみるみる溶けていくかき氷を急いでほおばると、幼い頃にワクワクしながら足を運んだ縁日で食べたあの味を思い出した。どこにいても目に入るやぐらとも相まって、久しぶりに“夏祭り”気分を実感。ほかにも焼きそばやたこ焼き、いちご飴などの「お祭りオールスター」が並んでいる。
「試合に来た人だけでなく、地域の人や試合観戦はしない人も会場に来てご飯を食べてもらったり、お祭りの雰囲気を楽しんでもらったりできればいいなと。コロナ禍のせいでここ2年楽しめなかった夏祭りを、ここで地域の人へ提供できたらと思ったんです」。そう話していた新井さんの狙いどおり、会場には浴衣姿の親子連れなどの姿も見られた。
やぐらを臨む大階段に腰掛け、すてきな浴衣姿でグルメを楽しんでいた親子に話を聞いてみる。「実は私たち、サッカーは全然知らなくて……ごめんなさい。近所に住んでいて、今日こういうイベントがあるというのをチラシで知ったんです。本当に久しぶりのお祭りですし、2家族女性ばかりで気合を入れて浴衣姿で来ちゃいました(笑)。ご飯はおいしいし、こういう雰囲気も久しぶりなので楽しいですね」
彼女らは、“未来の浦和レッズのサポーター候補”と言えるかもしれない。くしくもその時、やぐらではクラブOBによるトークショーが行われていた。サッカーの知識がない人たちでも楽しめるようにと、サッカーにまつわる話から関係ないような話まで、軽快なトークが繰り広げられている。それを聞き入る浴衣姿の親子を見て、ピッチの戦いとは別にこういった雰囲気もいいと思った。
人気キャラクターも来場! 祭り感が増す阿波踊りも
日が傾いて暑さが和らぎはじめると、幼稚園の子供を連れた親子3人組が来場してきた。彼らはYouTubeチャンネル「サンサンキッズTV」の人気キャラクター『サンサン』を目当てに来場したという。「子供が『サンサン』の大ファンなんです。近くで会えると聞いて夕涼みがてら来ました」
当日は『サンサン』のほか、うまい棒でおなじみのキャラクター『うまえもん』や浦和のマスコット『レディア』もそろってイベントを盛り上げた。『サンサン』や『うまえもん』の人気もさることながら、浦和サポーターにとっても“レア”な存在である『レディア』にテンションが上がる人も多かったようだ。彼らの周りは常に人だかりができていた。先ほどの親子連れも無事『サンサン』との撮影に成功。こぼれるような笑みを浮かべ、楽しそうに家路についていた。その手にはいちご飴が揺れている。
お祭りムードをさらに高めてくれたのが、北浦和で活動する連員約70名からなる「北浦和阿呆連」による阿波踊り大会だ。「なかなか踊る機会もない中で、楽しませていただきました」と語る彼らの踊りは圧巻だった。イベント終了後、そのまま試合を観戦したという連員は、「みんなでレッズサポーターになります!」と公式Facebookで宣言していた。
浦和はホームゲームの開催にあたって、「なるべく試合以外の要素を入れず、純粋にサッカーという競技、一流の選手たちのプレーを楽しんでほしい」という理念でやってきたクラブだ。クラブの理念にもあるように、ピッチ上にマスコットが登場しないことは有名な話だろう。多比良さんはそのスタンス自体は現在も変わっていないと話すが、今回の「炎日」のような試合前イベントは、熱狂的なサポーターにどう受け止められているのだろうか?
「ネガティブな意見はほとんどなく、いい意味で『変わってきたね』という意見をいただくことが多いんです。もちろん、ネガティブな気持ちを抱かせないように気を使っている部分はありますが、スタンドに入る前はそういうふうに楽しむ場所でいいんじゃないかな、という意識を皆さんが持ってくれていると感じています。あと一つ、絶対にブレてはいけない軸として意識しているのは、選手のウォーミングアップが始まるまでにイベントを終わらせることです。選手が出てきた後は、ピッチ内に集中できるような環境をつくっていく。今日のイベントに関しても、選手が出てくる時間を加味して、やぐら回りのイベントはキックオフの1時間前には終わるようにしています」(新井)
クラブをあげて新たな雰囲気づくりを試みながら、イベントと試合の棲み分けにも気を配っているようだ。
「親心じゃないですが、ファン・サポーターの方々に温かく見守ってもらっているなという感触はすごくあります。そういう温かな目線を感じながら、クラブの公式YouTubeでも方向性に変化をつけてみるなど工夫をしています。そういう新しい取り組みに対して、もしかすると10~20年前だったらお叱りを受けるようなこともあったのかもしれませんが、今はそういったコンテンツもすごく楽しんでもらっているなと思います」(多比良)
今はまだ試行錯誤している最中だと、新井さん、多比良さんは口をそろえる。しかし、「浦和レッズがつくりたい空間」を目指し、サポーターや地域の人々と歩み出した第一歩として、「炎日」は十分に“熱い”イベントだった。この日、3-1で川崎を下したこともあり、埼玉スタジアムを包んだ熱気は今シーズンで一番だったかもしれない。
もちろん、こうした大掛かりなイベントは今回だけで終わりではない。新井さんは今後のイベントについて次のように展望する。
「浦和レッズは2017年から、埼玉県で開催している音楽フェスティバル『VIVA LA ROCK』とコラボをしています。コロナ禍前から、埼玉スタジアムでもコラボイベントをやりたいという相談はしてきたので、フェスと浦和レッズが一緒になってイベントをつくりたいなと考えています。例えば、3日間やったとして前半2日間はフェス、最終日は試合、みたいなイベントができたら面白いかなと。これにはいろいろと乗り越えないといけないハードルはあるのですが、そういったイベントもできたらいいなと思いますね」
コロナの影響でいろいろなエンタメが苦しい状況にあるからこそ、新井さん、多比良さんは「チャレンジが大事」だと話す。そして、そのチャレンジ精神の根底にあるのは“あの光景”を取り戻したいという強い思いだ。
「いろいろなイベント企画を通じて、“6万人の埼玉スタジアム”を取り戻すというか、あの光景をもう一度見られるように手を尽くしたいです。選手たちは頑張ってくれているし、サポーターも声を出せない苦しい状況(※2022年7月時点)の中で応援してくれています。そういう状況でクラブスタッフも負けちゃいけないなと。満員のスタジアムを取り戻すために、何でもやりたいです」(多比良)

浦和レッズが仕掛けるこれからのイベントにも期待 [写真]=野口岳彦
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By サッカーキング編集部
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