今季J1初ゴールを挙げた水沼宏太(撮影は第3節広島戦) [写真]=金田慎平
横浜F・マリノスの“チームリーダー”に、待望の今シーズン初ゴールが生まれた。
横浜FMは7日、明治安田生命J1リーグ第12節で京都サンガF.C.と対戦。試合は立ち上がりの10分、ヤン・マテウスの放った右コーナーキックから西村拓真がボレーシュートを沈め、横浜FMが先手を取る。40分には福田心之助に強烈なミドルシュートを叩き込まれ、1-1でハーフタイムに突入したが、後半の立ち上がりにヤン・マテウスが相手のオウンゴールを誘発。64分にはマルコス・ジュニオールのクロスボールからヤン・マテウスが追加点を挙げると、86分には杉本健勇の前線での守備から水沼宏太が右足フィニッシュを叩き込む。ホームチームがゴールラッシュを見せ、今季2度目の連勝を飾っていた。
「前が空いた瞬間から、ゴールに向かって思いっきり打つということは決めていました。とにかく入って良かったなとは思いますね」と笑みをこぼした水沼は、63分からピッチに送り出された際、既にゴール前で“仕事”を果たすためのイメージができていた。「サイドにスペースがあるのはわかっていましたし、そこをどうやって突いていくかの部分が鍵だなとは思っていたので」。だが、チームは後半の頭から前に急ぎすぎるシーンも少なくなく、その結果としてミスも続いていた。そこで、水沼は「右の方で1回落ち着かせてボールを押し込んで行こう」という役割を担った。
押し込みつつも急ぎすぎず、右サイドに相手を引き寄せる工夫を繰り返した。その意識が結果として現れたのは64分。京都の陣形が横浜FMの右サイドに引き寄せられる中、水沼は中央の西村へグラウンダーのパスを送る。このボールは通らなかったが、ルーズボールを拾ったマルコス・ジュニオールのクロスからヤン・マテウスがゴールを決めたのだ。「クロスを上げたマルコスも、中で待っていたヤンもフリーだった。しっかり流れを変えて、あそこでまた試合を落ち着かせることができたと思っています」と自身の果たした役割に胸を張った。
そして、このゴールでヤン・マテウスは2試合連続ゴールを記録。チームの4ゴール中3ゴールに絡み、鳥栖戦から継続してその“クオリティ”を見せつけている。同じポジションの選手が明確な結果を残し続けているが、水沼に争いを忌避するような気配はさらさらない。「同じポジションの選手がゴールを決めていることは刺激になっています」と認めつつも、「プレースタイルは違っていて。彼には彼の良さがあって、僕は僕自身の強みを持ってやっています」と断言。「僕は今年はまだ点を取れていなくて。あまり今日のようなシーンもなく、『やたらヤンのところにはフリーでボールが来るのに、俺のところには来ないな』とは思っていたので。やっとあのようなボールが来て良かったなとは思います」と笑顔を見せただけでなく、チーム全体を見据えて「それぞれの選手がそれぞれのポジションで切磋琢磨して、チームを上に引き上げていくということができれば、またマリノスの良さが出せると思います」と言葉を発した。
水沼にとって嬉しい今季J1ゴールをアシストしたのは杉本だ。水沼と杉本はセレッソ大阪在籍時に“ホットライン”を形成していたが、そのほとんどは水沼のアシストから杉本がゴールを決めるという形だった。「あのようなシーンはなかなかなかったかもしれないですけど」と過去を振り返ったが、杉本がプレスバックに向かった瞬間に“予感”はあったという。
「あのシーンは、健勇なら絶対にスライディングするだろうなと思っていました。あれに届く足の長さを持っているのが健勇なので。絶対に触ると思って、それを信じて僕は走り出していました」
かつての関係性とは逆の形でゴールが生まれたが、水沼は杉本が横浜FMのスタイルを体現した結果だと語る。「健勇もマリノスのサッカーを再びやり始めて、あそこで切り替えてすぐにボールを奪いにいく。その姿勢で僕のゴールに繋げてくれたと思うので」。裏への飛び出しは咄嗟の判断だったが、それは水沼が杉本の特徴をよく理解している証拠だ。「また一緒に頑張っていきたいです」と今後を見据えた。
取材・文=榊原拓海