[写真]=URAWA REDS
3年の武者修行を経て、荻原拓也は一回りも二回りも大きく成長した。1対1で負けない守備や縦への推進力、そして精度の高いクロスでチャンスを生み出す。
「こいつを試合で使えば絶対に何かする」と思わせる。それを体現するため、牙を研ぐ背番号26の声に耳を傾ける。また同期で切磋琢磨しあってきた橋岡大樹の存在についても語ってくれた。
取材・文=石田達也
一つ次元の違う守備能力が身に付きました
――前回、このインタビュー企画では明本考浩選手に登場してもらいました。荻原選手へのメッセージをお願いしたところ「縦への推進力があり、左足のクロスが武器。ライバルでもありますが、素晴らしいプレーをした時は褒めたいですし、伸び伸びできるようなサポートをしたい」と話してくれました。
荻原 本当に嬉しいですね。お互い複数ポジションが出来るので、縦関係でプレーすることもありますし、一緒にプレーする時間は楽しいです。明本選手のハードワークメンタリティは誰もが認めているところです。チームメイトに認められるプレーをすることは大事だと明本選手を見て思い知らされますし、リスペクトしています。
――もう1点、メッセージを受け取っています。「たまに『NO』という言葉が出るので、先輩の言葉は絶対だと教えたいです(笑)。あとは足を攣るのがちょっと早いので、もっと長い時間プレーして欲しいですね」と話されていました。
荻原 それは作り話ですよ。ふざけて「NO」とは言いますけど(笑)。足を攣る件については、よくイジられます(笑)。今後、成長しなければいけない部分ですが、ピッチに立った瞬間からフルパワーでプレーする強度の高さを理解してくれています。明本選手とは、お互いのことを理解しながらプレーできています。
――では、ここから本題に入っていきたいと思います。京都サンガF.C.への期限付き移籍を経て、今季復帰を果たしました。この3年間で成長した部分について教えてください。
荻原 チームの勝敗により関われるようになったこと、そしてメンタリティの部分です。プレーの波がなくなりました。昨季は残留争いをしてしまいましたが、シーズンを通してチームの勝利に貢献することだけを考えてプレーしていました。サッカー選手としてのメンタリティの部分は成長したと感じています。プレー面で挙げるとすれば守備能力。対人の部分ではやられる気がしないですし、今季ここまでやられたシーンはないと思っています。全体的にレベルアップしたと思いますが、強調するのであればその2点です。
――成長を実感している守備面で取り組んでいることや意識していることはありますか?
荻原 局面で負けないことは意識しています。一つ次元の違う守備能力が身に付きました。抜かれることが怖いというメンタルが出ないぐらい、1対1にこだわって奪うトライをしています。
――今季からマチェイ スコルジャ監督が就任しました。荻原選手から見てどういった方ですか?
荻原 “浦和のために”という気持ちを肌で感じる監督です。選手との距離感を大事にされていますし、選手一人ひとりのパーソナリティを見ながらアプローチしてくれます。常に見られていると感じます。選手としては見てくれていると、見てくれていないとでは全然違うので、日頃のトレーニングから全員がしっかりとアピールをしていると思います。
――第2節のセレッソ大阪戦で再デビューを飾りました。緊張感とワクワク感、どちらの気持ちが強かったですか?
荻原 実はめちゃくちゃ緊張するタイプです。誰よりも責任を感じやすい性格だと思っています。ただ、緊張感があることが幸せでもあり、緊張感を持たせてくれるファン・サポーターの作り出す雰囲気が自分を成長させてくれています。スタメンよりも短い出場時間の方が、よりタスクを課されるので緊張します。
――第8節の北海道コンサドーレ札幌戦では今季初スタメンでした。
荻原 ホームは緊張しますけど、楽しみな気持ちの方が強かったです。最終的には大勝しましたが(4対1で勝利)、相手に退場者が出るなど難しい試合でもありました。札幌のストロングポイントでもある金子拓郎選手に対して、1対1で負けなかったことは自信になりました。
――そして、第9節の川崎フロンターレ戦では初アシストを記録しました。
荻原 ブライアン リンセン選手のシュートが上手かったので、結果的にアシストになりました。ただ、あの位置にいたことが自分の強みだと思っています。
――3度目のAFCチャンピオンズリーグ優勝を果たしました。出場時間も限られていましたが、この舞台を経験したことの意味をどう捉えていますか?
荻原 一昨季の天皇杯優勝からつながっているストーリーがありますし、決勝だけに臨むのはメンタリティ的な部分でも難しいものがありました。先ほども話しましたが、緊張するタイプですし、当然ながらピッチに立つ責任感を感じていました。自分に素直になれば、恐怖すら感じた大会でしたね。そこでピッチに立って優勝の瞬間を迎えられたことは、自分にとって大きな経験になったと思います。ただ、スタメンでプレーしたかったという悔しい気持ちも残っています。
自分を使うメリットを示していきたい
――今季ここまでを振り返り、個人のプレーについてはどう感じていますか?
荻原 パフォーマンスの波はないですが、チームを勝たせるためには、突き抜ければいけないと考えています。もっと圧倒的なプレーでチャンスメイクをして、よりゴールに絡むプレーを見せたいです。
――「突き抜けるため」に、もっと磨きたい部分を教えてください。
荻原 この選手は雰囲気があると思わせることは大事だと思っています。例えば、酒井宏樹選手が自分と同じプレーをしたら雰囲気があるというか、見え方は少し違うと思います。そういった雰囲気のある選手になれば、周りの見え方も変わってきますし、相手も対戦していて嫌だと思うはずです。自分の強みでもある推進力やクロスの部分はもっと磨いていきたいと思います。
――明本選手や大畑歩夢選手など、同じポジションを争うライバルがいます。ポジション争いについてはいかがでしょうか?
荻原 ACL決勝まではある程度メンバーを固定して戦ってきました。出遅れてしまいましたが、チャンスが来た時に結果を出すだけだと思っています。勝利に貢献することが信頼を得ていくと思うので、自分を使うメリットを示していきたいですし、先ほど話した通り『こいつを試合で使えば絶対に何かする』と思わせること。そのためにも自分の色を強く出していきたいです。
――後輩の早川隼平選手についてお聞きします。浦和の育成組織加入前はお2人とも1FC川越水上公園でプレーをしていましたよね?
荻原 一緒でした。すごく印象に残っている選手なので可愛がっています。彼がトップチームに絡むようになったことは本当に嬉しいです。ユースで突き抜けている選手でもトップチームに昇格できない選手も見てきたので、そのまま成長して欲しいと願っていました。今では同じタイミングでピッチに立つこともありますし、刺激をもらっています。
――今でも良き先輩・後輩ですね。
荻原 彼が小学6年の時は「オギタク~」とタメ口でしたが、急にかしこまっていたので「敬語はやめろ」と言いました(笑)。プロであれば対等な立場ですし、切磋琢磨をして常に目標とされる存在になれるようにと思っています。
――早川選手のプレーについてはいかがでしょうか?
荻原 左足のキックが魅力です。それ以外でもボールタッチやポジショニングなど、とにかく賢さを感じます。「自分の想像を超えるプレーをして欲しい」と本人にも言っています。可能性に満ち溢れたサッカー小僧です。
――同期の橋岡大樹選手(シント・トロイデン)とは連絡を取り合っていますか?
荻原 昨日ちょうど連絡を取りました。「会おう!」とは言ったものの、中々タイミングが合わず……。今回、浦和に帰って来て思ったことは、大樹がいる・いないでは、雰囲気が違うなと(笑)。昔から“ニコイチ”でしたし、切磋琢磨をしてやってきたので、また一緒にプレーをしたいですね。大樹とは一緒にプロになって、切っても切り離せない存在だと思っています。
――では、最後に今季これからに向けた意気込みをお願いします!
荻原 目標はリーグタイトルを獲ることです。ファン・サポーターの皆さんと共に、1試合1試合同じ方向を向いて戦っていきたいです!
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