[写真]=J.LEAGUE
明治安田生命J1リーグ第25節が26日に行われ、横浜F・マリノスは横浜FCに1-4で敗れた。アウェイとはいえ大差をつけられての横浜ダービー敗戦に、マリノスのファン・サポーターから大きなブーイングも聞こえた。
前半の立ち上がりからマリノスが試合の主導権を握り、9分にFWアンデルソン・ロペスのゴールで幸先よく先制する。ところが、なかなか追加点を奪えない。ボールを保持して横浜FCを押し込んだものの、FW宮市亮やFWエウベルらが決定機でシュートを決めきれずリードを広げられなかった。すると36分、横浜FCはMF林幸太郎がコーナーキックのこぼれ球にダイレクトで合わせるスーパーシュートでゴールネットを揺らした。さらに後半に入ると52分にFW伊藤翔が豪快なボレーシュートで古巣から追加点を奪い、横浜FCが逆転に成功。その後もカウンターが冴え渡り、62分と93分にもマリノスのゴールを陥れた。
センターバックとして先発出場していたマリノスのDFエドゥアルドは「後半は前半と同じような強度で試合に入れず、相手はホームでうまくダービーを戦い抜くことができていた感じがしました。そこが我々との違いだったと思います」と、痛恨の敗戦を総括する。その「違い」とは何か。ブラジル人センターバックは「相手の方が勝ちに対する意志の強さで上回っていたと思います」と述べた。
「我々は攻撃が特徴のチームなので、毎試合『誰かが試合を決めてくれるんじゃないか』という気持ちでプレーしていますけど、そこが少しよくない部分ではないかと感じています。今日に関しては、相手の方が勝ちに対する意志が強く、それが勝敗を決定づける要因になったと思いますし、だからこそ相手はああいった形で得点を重ねて勝つことができたのではないでしょうか」
マリノスは後半もボールを保持できており、相手陣内でプレーする時間も長かった。だが、なかなか決定的な形でシュートに持ち込むことができない。一方、横浜FCは5-4-1の布陣で自陣ゴール前を固め、ボールを奪ったら一気にカウンターへ出るというはっきりとした狙いを持っていた。そして、そのカウンターに懸ける気持ちの強さと迫力を前面に押し出すことができていた。
62分の失点場面では、相手の折り返しをクリアしようしたエドゥアルドが痛恨のオウンゴール。あまりの悔しさに地面を激しく叩く姿は印象的だった。ただ、この敗戦で悲観的になっているわけではない。トリコロールの背番号5は、むしろ敗戦を受け入れた上で立ち上がり、意識を変えて、前を向いて進んでいくことの重要性を強調する。
「チームとしてはまだ首位ですし、これからは自分たち次第なので、今まで通り戦って、自分たちのことに集中していけば問題ないと思います。もちろんこの敗戦は地獄のように痛いし、悔しい。ただ、ここでチームがバラバラになるのが一番ダメなことだと思います。昨年もシーズン終盤に連敗をして、似たような雰囲気がありましたけど、我々はそこでチームとして、家族として戦えました。今年も残りの試合でそういう一体感を出していくことが大事だと思います。こういった敗戦はいいことではないし、いいタイミングというのもないですけど、今日の敗戦が警告となり、それによってチームの目が醒めて、次に向けて成長していけることもあると思います」
昨シーズンのマリノスはリーグ優勝を目の前にしながら、J1第31節のガンバ大阪戦と同32節のジュビロ磐田戦で連敗を喫した。残留争いをしていた相手にホームで連敗するという予想外の展開に動揺してもおかしくなかったが、そこでチームは崩れることなく一体感を増し、ラスト2試合は連勝。見事に3年ぶりのJ1制覇を成し遂げた。その経験があるからこそ、今が自分たちの在り方を見直すタイミングだとエドゥアルドは感じている。「目が醒めて…」という表現を使ったのも、横浜FC戦の大敗を意味のあるものにするための、彼なりの想いがあってこそだ。
「今日の試合に関して言えば、非常に小さなディテールが勝敗を左右したと思います。もし自分たちが(追いつかれる前に)追加点を奪えていれば違う結果になっていたでしょうし、失点の場面も違うことができれば防げたでしょう。ただ、結果が出た後ならいろいろなことが言えてしまう。先ほど言ったように、昨シーズンは終盤のホーム2試合で、残留争いをしていた下位のクラブに敗れた後に立ち上がることができました。そこで目が醒めた。今回もそれくらい大事な時期になってくると思うので、『目が醒める』という表現を使いました。引き続き前を向いてやっていくことが大事だと思うし、もっと自分たちのサッカーを見せたい。もっと勝ち点3の重要性にフォーカスし、噛み締めながらプレーすることが大事になってくると思います」
ここ数年、試合に敗れた後にマリノスのファン・サポーターからあれほど大きなブーイングを聞いた記憶はない。スタンドに集まった観衆からの意思表示を受け取った選手たちは、横浜ダービー敗戦とこれからの戦いへの影響をより一層重く受け止めているだろう。
副キャプテンとしてチームを引き締めたエドゥアルドだけが危機感を募らせているわけではない。チームリーダーの1人でもあるDF松原健は「それでも僕たちのことを信じて、心の底から応援してくれている皆さんのために、僕らはもっとファイティングポーズを見せないといけないですし、本当にやるしかない。それだけです」と言い切った。
負けた後に試されるのは、チームの前を向く力だ。マリノスは他会場で2位のヴィッセル神戸が引き分けたため首位こそ維持しているが、勝ち点差は1ポイントに縮まった。J1連覇に向けて気の抜けない戦いはこれからも続いていく。
「何回言っているかわからないですけど、リバウンドメンタリティをここで示していく」と松原は語気を強めた。
「いつも以上に練習からプッシュしていく。最後はそういった気持ちのところで何とかしないといけない試合が出てくるので、この負けはしっかり受け入れるしかない。ファン・サポーターの皆さんはもちろん悔しいですし、僕らも相当悔しいですし、前を向いてやっていくしかないですね」
どんな状況、どんな相手であろうと圧倒できてこそのリーグ連覇だ。9月にはYBCルヴァンカップのプライムステージ(決勝トーナメント)やAFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループステージも開幕し、より厳しいスケジュールになっていく中で、「誰かが試合を決めてくれるんじゃないか」のではなく「誰もが試合を決める」意志の強さと責任感を常に示せるチームへの進化を期待したい。
取材・文=舩木渉
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