柏FW細谷 [写真]=金田慎平
今季序盤から明治安田生命J1リーグでは下位に低迷し、ラスト3節となった現在も残留が確定していない柏レイソル。それでも犬飼智也が浦和レッズからレンタル加入し、山田雄士がレンタル先の栃木SCから戻ってきた8月以降は白星が先行。確実にチーム状態は上向いている。
そのチームの“絶対的エース”と言えるのが、パリオリンピック世代の22歳、細谷真大だろう。
8月以降は5ゴールを奪い、今季12得点をゲット。J1得点ランキングでも21点の大迫勇也(ヴィッセル神戸)、13点の鈴木優磨(鹿島アントラーズ)に次ぐ日本人3位という結果を残している。外国籍選手を含めても6位タイ。これだけの数字を残せる若きFWへの期待値が高まるのも当然だ。
10月29日の川崎フロンターレ戦には、日本代表の森保一監督、U-22日本代表の大岩剛監督ら代表スタッフがズラリ。彼らが熱視線を送った一人は、もちろん背番号19をつけるこの男だったに違いない。
その期待に応えるかのように、彼は開始早々から一気にギアを上げていく。開始8分には中盤でボールを受けた細谷が右の山田雄士に展開。そのリターンをペナルティエリア内で受け、ジェジエウの前のスペースを巧みに反転して左足シュートを放ち、これは惜しくもGKチョン・ソンリョンの正面に飛んだが、ゴール前の推進力と切れ味の鋭さをいきなり示した。
さらに23分には山田康太のスルーパスに反応。ジェジエウの背後に抜け出し、強引に打ちに行くが、惜しくもオフサイド。27分にジエゴのクロスに反応して決めたゴールもノーゴール判定となったものの、細谷らしい前線での迫力を感じさせた。
ジェジエウという屈強なDFに背後からマークにつかれても、慌てることなく確実にボールを収め、起点となる仕事を遂行し続けた。10月の日本代表2連戦で浅野拓磨がターゲットマンとして新境地を開拓したものの、まだまだ今の日本にはポストプレーを確実にこなせるFWが少ない。細谷は177センチと長身というわけではないが、背負ってタメを作る技術と駆け引きは頭抜けたものがある。そこは森保監督の目を引いた部分ではないか。
「(ジェジエウとのマッチアップは)自分でもやれたなと感じていますし、体の部分でも負けてないなと。そこは対等に戦えると思います」と本人も手ごたえをつかんだ様子だった。
山田雄士の先制弾で1点をリードして迎えた後半も、細谷の存在感は健在だった。しかし、どうしても追加点が奪えない、逆に一瞬のスキを突かれて橘田健人に同点弾を奪われ、1-1で引き分ける結果になった。この日は両チーム最多となる4本のシュートを放ったが、無得点。チームを勝たせられなかった責任を痛感していた。
「最低限の勝ち点1を取れましたけど、今日は本当に勝ち点3が取りたかった。やっぱりFWとして得点というアピールが必要だったので、まだまだだと思います。自分の課題は明らかに決めるところ。落ち着きや冷静さが欠けている。自分が決めて勝たせることが仕事だと思っているので、それを残り3試合でやらないといけない」と奮起を誓っていた。
野心に満ち溢れる22歳のストライカーがより高い領域に行けるか否か…。今の細谷は大きな分岐点に立たされていると言っていい。鹿島、サガン鳥栖、名古屋グランパスとのラスト3戦で自らのゴールで勝利を引き寄せれば、本当の意味で柏の大黒柱になれるはず。大仕事を果たし、自身のステージを引き上げてこそ、代表クラスのFWになれる。今、主力を張っている浅野や上田綺世、古橋亨梧と堂々と競争できる存在になれるのだ。
森保監督もその可能性を改めて再認識したようだ。
「今日は幻のゴールがあったのと、得点を決められる場面もありましたけど、1人で局面を打開することや、守備の部分で貢献できるところは確認できました。彼がより結果を出し続けることで、代表にも自然とつながってくる。すでにA代表にも来てもらっていますし、いい選手なのは間違いないと思います」
同じピッチで戦った川崎Fの元フランス代表FWバフェティンビ・ゴミスも「日本の選手はクオリティが高くハードワークをする選手が多い。柏の19番も非常にいい選手」と前向きにコメントを残していたが、細谷に託されるのはJ1ラスト3戦と天皇杯決勝でのゴールという結果だ。そこで歴史に残るインパクトを残せれば、彼の立ち位置は大きく変わる。場合によっては、2024年1~2月のアジアカップ参戦の道も開けてくるかもしれない。だからこそ、2023年シーズン終盤の今を大事にすべきである。
「パリ五輪世代の点取屋」にとどまるのか、「日本を代表するスターFW」に飛躍するのか。細谷の真価が今こそ問われる時だ。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子