広島DF山﨑大地 [写真]=Getty Images
サンフレッチェ広島の新たな歴史が始まった。2月10日、新スタジアム『エディオンピースウイング広島』のこけら落としで、ガンバ大阪を迎えてプレシーズンマッチを開催した。
広島の街なかで紫に染まった夢の舞台。2万6418人が入った新サッカースタジアムに大歓声が鳴り響いた。「最高すぎてニヤニヤしていました(笑)。素晴らしい環境の中で幸せでした」。青々としたピッチに立ったDF山﨑大地は喜びを隠しきれていなかった。
試合の前日、広島出身の山﨑は「(こけら落としマッチを)迎えられてすごく幸せに思う。ピッチに立てば、責任を持ってチームのために戦いたいし、それをピッチの上でしっかり表現することが使命だと思う。見ている人に楽しさや感動を与えられるように頑張りたい」と意気込んでいた。特に、DFながら得点への意欲も強かった。
「(出場の)チャンスはあると思うので、出た時に何ができるか。そこで結果を残したいし、欲を言えば点を取りたい。点を取れるセンターバックは評価されると思うので、第1号のゴールを狙いたい」
ベンチスタートだった山﨑は前半にチームの戦いを見守り、後半のスタートからピッチに立った。「前半は試合を見ていて、自分が入ったらどういうプレーをしようかってイメージできていた。前をしっかり見て、(パスを)出せるチャンスがあれば狙おうと思っていた」
立ち上がりの48分、さっそく攻撃で存在感を放った。山﨑が自陣からロングボールを送ると、前線のFW大橋祐紀が競ったこぼれ球を左サイドのMF東俊希が拾ってクロス。これをゴール前のFWピエロス・ソティリウが頭で合わせて先制点を決めた。山﨑の武器であるロングパスを起点に、新スタジアム初ゴールが生まれた。
しかし、広島はその後2失点。88分、山﨑は相手FWイッサム・ジェバリに翻弄されてシュートを許すと、ブロックしたこぼれ球がMF倉田秋の逆転ゴールにつながった。山﨑は、「(ジェバリ)に前を向かせてドリブルさせて、何回も切り替えさせてシュートまでいかれたのは課題。そこはガツンといって前を向かせず止められるように、もっといい準備をしないといけない」と悔しさを滲ませた。
試合終盤に逆転されたが、背番号3の闘志は燃え続けていた。1点を追う後半アディショナルタイム、自陣で体を張ってボールを奪う。それをきっかけにチームが攻撃に転じると、山﨑もそのまま前線へと懸命に走り出した。
「前の方まで走ったけど、めっちゃきつかった。めっちゃきつかったけど、やっぱり勝ちたかったし、なんとしても点を取りたかったので、そういう思いから勝手に体が動いていた。お客さんにも、チームにも『諦めないぞ』って示していかないといけなかったので」
強い意志で前進し、ペナルティエリア前でシュートを打てるように待ち構えた。右サイドにいた大橋からはパスがこなかったものの、最後まで戦う姿勢を貫いた。「あそこで僕にボールがきたら決められたと思うので、もうちょっとおーちゃん(大橋)に『出せよー!』って言っときます」と試合後に冗談混じりで話した。
広島は惜しくも1-2で敗れ、新スタジアムの初戦を勝利で飾れなかった。ただ、2週間後の2月23日にはエディオンピースウイング広島で、浦和レッズとの明治安田J1リーグ開幕戦が待っている。山﨑は、「ピッチに立てた喜びをしっかり噛み締めて、子供たちや見ている人たちに感動や勇気を与えられるように全力を尽くして、次は勝利できるように頑張りたい」と前を向く。
新たなホームでも勝利のために全力で戦う。山﨑自身もかつてそうだったように、広島の選手たちの戦う姿を見て、また新たな夢が生まれる。そんな紫の歴史は新スタジアムでも続いていく。
「僕は広島の人間として、ピッチに立って子供たちに夢を与えていかないといけない立場にある。僕も与えてもらった立場だったし、次は僕が与えていく立場なので、そういうことをしっかり理解しながらやっていきたい」
戦う先に目指すのはエディオンピースウイング広島でのJ1優勝。「新スタジアム1年目で、広島出身の僕がピッチに立ってシャーレを掲げて広島を盛り上げていきたい」。広島にできた夢の舞台で、山﨑大地が紫の歴史を未来につなぐ。
取材・文=湊昂大
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By 湊昂大