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チーム救う同点弾! 「OAなしでもパリ五輪を戦える」捲土重来期す西尾隆矢

2024.05.27

同点弾後、気合のこもった表情を見せた西尾 [写真]=J.LEAGUE

 パリオリンピック2024が2カ月後に迫り、U-23日本代表を率いる大岩剛監督の選手選考も佳境を迎えている。6月のアメリカ遠征メンバーは30日に発表されるが、久保建英と鈴木唯人の本大会招集が困難となったこともあり、今回は森保一監督率いるA代表で活動することになった。

 さらにオーバーエイジ候補と目された板倉滉や冨安健洋らDF陣もクラブ側が難色を示している模様。「守備が不安」「DFの人材が手薄」と言われる大岩ジャパンは目下、難しい局面に立たされている。

 そんな苦境を跳ね除けようと今、士気を高めている一人がセレッソ大阪DF西尾隆矢だ。

 4月から5月にかけて開催されたAFC U-23アジアカップの初戦となった中国戦で相手への肘打ちによるレッドカードを受け、3試合出場停止という処分を科された。その後、ピッチに立ったのは、準決勝のイラク戦での91分以降のみ。森保ジャパンのA代表候補合宿にも呼ばれたことのある人材だけに、守備陣の大黒柱として獅子奮迅の働きを見せるはずだったが、まさかの苦境を自ら招いてしまった。

「本当に人生で一番苦しい、悔しい1カ月を過ごしました。でもそれでへこたれているようでは、プロとしてサッカー選手はやっていけない。悔しさをバネにチームでしっかりパフォーマンスを出さないといけないと思っていました。小菊(昭雄)監督からも『また1からチームで競争しよう』という言葉をかけてもらい、意欲が湧きました」と本人も神妙な面持ちで語っていた。

 そして5月15日のFC町田ゼルビア戦からスタメンに復帰。この一戦は惜しくも終了間際に失点して1-2で敗れたが、続く18日のアビスパ福岡戦は3-0の完勝。22日のYBCルヴァンカップ、FC琉球戦はベンチスタートながら、1-0の勝利に貢献した。彼自身も調子を上げつつある状態で26日のサンフレッチェ広島戦を迎えたのである。

 C大阪にとって広島は苦手中の苦手の相手。ホームでは2017年から勝利がない。今回こそ負のジンクスを跳ね除けたいとチーム一丸となって挑んだが、やはり完成度の高い広島に押し込まれる展開を強いられた。相手は右ウイングバックの新井直人を軸に外からの攻めを多用。次々とクロスを入れてきたが、西尾はGKキム・ジンヒョンやDF鳥海晃司らとともに的確に対処。前半は失点を許さなかった。

「隆矢は五輪予選から戻ってきてから指示の声がすごく大きくなった。今日の前半も外からのボールをかなり入れられましたけど、みんなで意思疎通をしながらしっかり防ぐことができました」とボランチの田中駿汰も前向きに話したが、西尾の中には、自分は副キャプテンだから、より強い統率力を発揮しないといけないという意識があったに違いない。

 後半、早い時間帯にリスタートから荒木隼人に1点を許したが、逆にC大阪は巻き返しを図り、66分に追いつく。その貴重な同点弾を叩き出したのが西尾だった。

「僕自身はずっとニアに入るように指示を受けていたんです。でもマークについていた川村(拓夢)選手がすごく嫌がっていたのを見て、あえてGKの後ろに行きました。そうしたら結構フリーになれたので、そのままファーに流れた。そこにルーカス(・フェルナンデス)が蹴ってくれたので、ラッキーな形でゴールできました」

 日本代表に招集されている川村も「ちょっと読み過ぎてしまった」と悔しさを吐露したが、西尾にしてみれば”してやったり”のプレー。この一撃からC大阪の攻撃は加速。逆転まであと一歩と迫ったが、最終的には1-1のドローに終わった。勝ち点3は得られなかったが、苦手な広島からポイントを取れたことは収穫だ。西尾も自信を取り戻すことができたと言っていいだろう。

「パリオリンピック本番にオーバーエイジが呼びづらいとか言われていますけど、僕らにしてみたら、逆にチャンス。出場機会が得られる可能性も大きくなるので。実際、アジア予選を見てもらったら分かるように、僕らはアジアで優勝できるチーム。守備陣に対しては厳しい意見も多いでしょうけど、覆せる自信はあります。自分を含めて、パリ世代のDF陣はへこたれないし、すごくポジティブなコミュニケーションが取れている。それを今後も出していければ、結果もついてくると思っています」

 苦境を乗り越え、新たな一歩を踏み出した西尾。DFはそうやって数々の困難を乗り越えて成長していくものなのだ。それは日本代表で長く活躍した今野泰幸や吉田麻也らを見ても分かること。西尾にとって今回の紆余曲折は大きな飛躍への原動力になるはずだ。

「隆矢はもともとメンタル的にもすごく安定しているし、向上心も強い。サッカーと真摯に向き合ってトレーニングからこだわりをもって成長していける選手」と小菊監督も絶大な信頼を寄せている様子。大岩監督や森保監督にもそう思われるように、彼には地道な歩みを続けてほしい。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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