今年の夏も海外クラブが多数来日し、Jリーグチームと対戦する。7月27日には『明治安田Jリーグワールドチャレンジ2024 powered by docomo』として、プレミアリーグのトッテナムが昨季のJ1王者ヴィッセル神戸と国立競技場で対戦する。
トッテナムの来日は1991年以来、33年ぶりのこと。Jリーグがスタートする2年前に『キリンカップサッカー91』で来日し、日本代表、バスコ・ダ・ガマ、タイ代表と対戦。日本代表との一戦は三浦知良の2得点などで0－4と敗れている。今回の来日では日本にゆかりのあるアンジェ・ポステコグルー監督が率いるチームがどういった試合を見せてくれるのか。加えて、主力選手の多くは今夏のユーロやコパ・アメリカに出場しておらず、来日が見込まれるほか、有望な若手選手のプレーが見られることが期待される。
1882年に創設されたトッテナムはイギリスのロンドン北部に拠点を置く。同地域をホームとするアーセナルとは長年のライバル関係にあり、“ノースロンドンダービー”と呼ばれる両者の対戦は、世界の中でも屈指のダービーマッチとして、話題となることも多い。
1960年代から1980年代にかけてはFAカップやリーグカップ、そしてUEFAカップ（現ヨーロッパリーグ）をたびたび制し、歴史的にカップ戦に強いチームの一つと言われている。
2001年に幼少期からトッテナムのサポーターであるダニエル・レヴィが会長に就任。ケンブリッジ大学出身のビジネスマンである彼のもと、才能ある選手を獲得しつつ、スタジアムを中心とした街の開発・発展などを進め、世界的な知名度や経営面が向上していった。2019年に開場したトッテナム・ホットスパー・スタジアムは6万人強を収容。最新設備とともにアメリカンフットボールやコンサートなどに使用できるよう転換できるほか、F1とも契約し、地下にミニサーキットを置くなどしている。最寄り駅も改修され、現在はスタジアム隣接のホテルを建設中だ。
ピッチ上での近年のトッテナムではギャレス・ベイルやルカ・モドリッチ、カイル・ウォーカーなどが活躍し、巣立っていった。マウリシオ・ポチェッティーノ監督が監督を務めた2014－15シーズンから成績が上昇。2016－17シーズンはプレミアリーグ最高成績の2位となり、2018－19シーズンはクラブ史上初となるチャンピオンズリーグ決勝に進出。ハリー・ケインやソン・フンミン、クリスティアン・エリクセン、デレ・アリなどを擁して、魅力的なサッカーを披露した。
その後、ジョゼ・モウリーニョやアントニオ・コンテといった“名将”を招へいしたものの、チームの過渡期にもあり、中位に甘んじるように。シーズン中の監督解任が続いた中、2023－24シーズンにセルティックを率いていたアンジェ・ポステコグルー監督を新指揮官として迎えた。
横浜F・マリノスやオーストラリア代表を率いた経験を持つ指揮官は、開幕前はこれまでの監督と比較しての知名度の低さやビッグクラブでの実績がないことなどで懐疑的な見方もされたが、日本でも見せていた攻撃的なサッカーを披露。開幕から10戦を8勝2分で駆け抜け、ポステコグルー監督は開幕から3カ月連続でプレミアリーグ月間最優秀監督賞を受賞した。
負傷者や各国代表活動の影響、そして戦い方を研究されたこともあって、その後は伸び悩み、5位でシーズンを終えたが、攻撃的サッカーは貫き通し、新シーズンはさらなる進化を誓う。
現在のチームをけん引するのは韓国代表FWソン・フンミン。2015年夏に加入し、在籍10年目を迎えることになる。2021－22シーズンにはアジア人初となるプレミアリーグ得点王に輝く。2023－24シーズンはバイエルンへ移籍した“盟友”ケインの後を継ぎ、キャプテンに就任した。
システムは4－3－3と4－2－3－1の併用型。相手がボールを保持している際、DFはハイラインをキープし、前線からプレッシングする。裏へのボールは2CBのクリスティアン・ロメロ、ミッキ－・ファン・デ・フェンを中心にしたフィジカル、スピードの優位性や高い位置を取るGKギジェルモ・ヴィカーリオの守備範囲を含めて対応。中盤もボランチに入るのはアグレッシブなタイプが多い。
攻撃時は自陣から徹底的に“つなぐ”スタイルを志向。GKからのロングボールはめったにない。相手を自陣に引き込み、前後のワンツーや個人でのターンなどで前進を図る。相手陣内に入るとジェームズ・マディソンがゲームメイクをしつつ、両ワイドのティモ・ヴェルナー、ブレナン・ジョンソンの推進力や、デヤン・クルゼフスキのカットインを活用し、両SBのペドロ・ポロ、デスティニー・ウドジェが内外のレーンで高い位置を取って数的優位を作っていく。
今夏は前線の選手が軒並みユーロ、コパ・アメリカに参加せず。すでに新シーズンに向けて始動している選手も多く、プレシーズンツアーで姿が見られることを期待したい。
また、移籍市場ではリーズから昨シーズンのチャンピオンシップ（イングランド2部）年間最優秀若手選手賞を受賞した、中盤やSBをこなす18歳のアーチー・グレイを獲得した。昨シーズンにトップチームデビューを果たした、創造性やスキルを兼ね備える2列目の16歳マイキー・ムーア。昨シーズン中に獲得が決定し、すでにスウェーデン代表デビューを果たしている18歳のルーカス・ベリヴァルといった、若き有望株もそろうので、将来のスター候補を今のうちに日本でチェックし、将来自慢することを夢想することもいいかもしれない。
文＝小松春生
試合情報
日付：7月27日（土）
キックオフ時刻：19時
会場：国立競技場
放送予定
Lemino（無料生配信）
By 小松春生
Web『サッカーキング』編集長