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大久保嘉人、小林悠に続くJ得点王の道へ…ゴミスからも期待寄せられる山田新の現在地

2024.09.29

新潟戦で2ゴールを挙げた山田新 [写真]=金田慎平

「特にシンはプレーでチームを引っ張っていますが、強いパーソナリティ、リーダーシップを前面に押し出していくべき、川崎の選手は技術レベルが高いが、勝利への強い執着心や自分を前面に押し出すところに関しては少し大人しい。強い姿勢を他の選手に伝えていければ、チームも大きく成長できる。彼にはそれを意識してほしいと思っています」

 9月27日の川崎フロンターレ対アルビレックス新潟を前に行われたバフェティンビ・ゴミスの退団会見。39歳の元フランス代表FWは1年間ともにボールを蹴った大卒2年目の山田新に改めて成長へのアドバイスと大きな期待を口にした。

 それを具現化するように、背番号20をつける男はエリソンと並んで2トップで先発。相手のビルドアップに対し、アグレッシブなプレスを仕掛け、チームに貢献。前半は自身の得点こそなかったが、川崎自体はエリソンと脇坂泰人のゴールで2点をリードすることに成功した。

 後半突入後は相手もメンバーを入れ替え、修正を図ろうとしてきたが、川崎は攻撃の手を緩めない。63分にエリソンが自身2ゴール目をゲット。3-0とリードを広げて完全に勝負を決めると、山田も「自分もゴールがほしい」とウズウズしたに違いない。

 そしてこの2分後。エリソンがトーマス・デンから高い位置でボールを奪ったのを見るや否や、鋭い動き出しでペナルティエリア内へ侵入。豪快に右足を振り抜き、4点目を叩き出してみせる。

 さらに73分には右CKの流れから5点目をゲット。これもエリソンのシュートを押し込む形で2トップの好連携が光った。結局、川崎は5-1で完勝。山田の今季4度目の1試合2ゴールという華々しい活躍を見せ、公私ともに可愛がってもらったゴミスをいい形で送り出したのである。

「彼が今日最後だったので、絶対に自分がゴールするところを見せないといけないっていう思いがありました」

「彼は欧州のストライカーがどういうものかを示してくれた。ストライカーの在り方や佇まい、ゴールの取り方、動き方まで本当に細かいところから教えてくれました。『結局、優先順位はゴール』というのは、特に強く言われました」

「僕はポジショニングやフィニッシュの精度のところを昨年末くらいから取り組んできて、今年に入ってかなりよくなってきていると思う。積み上げてきたものが今、出せているのかなと感じます」と山田はゴミスという経験豊富な点取屋との出会いで覚醒したことを明かす。

 ゴミスがもたらした世界基準の重要性は、先輩・小林悠も痛感するところだという。

「バフェは最後のサイドでシュートコースを足首で変えられる。懐も深いし、シュートを決めてきた選手なんだなと思います。『これで若くて動けたら、どれだけヤバかったのか』って想像するくらい。新たち若い選手たちはそれを見て学べたことが一番大きかったと思います」と2017年Jリーグ得点王に輝いた37歳のFWも神妙な面持ちで言う。

 川崎からは過去にその小林、J最多得点記録保持者の大久保嘉人という偉大な得点王が出ている。山田はその系譜を継ぐべき存在と言っていい。特に川崎アカデミー出身の彼には大きな期待が寄せられる。

 同期の宮代大聖が早いうちから年代別代表のエースに君臨したことから、育成時代は悔しい思いをした時期もあっただろう。それでも、桐蔭横浜大学で力をつけ、2022年度全日本大学サッカー選手権大会MVPという称号を引っ提げ、古巣に舞い戻り、着実に進化を遂げているのだ。

 プロ1年目の昨季は27試合出場4ゴールとまずまずの結果を残したが、本人の中では「まだまだ足りない」と感じたはず。前述の通り、ゴミスのアドバイスの下、得点に至るディテールを改善に務め、ゴールのツボを体得。今季のブレイクにつなげているのだろう。

 これで今季通算14ゴール。得点ランキング4位に浮上した。トップを走るレオ・セアラは20点に到達しており、残り7試合という状況を踏まえるとハードルはやや高いが、実現不可能とは言い切れない。高い領域を目指しつつ、目下15点のジャーメイン良を抜いて日本人得点王の座を射止めることだけは最低限、果たさなければならない命題と言える。

「そこ(小林悠以来の川崎の得点王)は目指してやっています。そのためにはまだまだたりないと思いますし、残り試合は少ないですけど、もっと得点し続けられるように頑張りたいと思います」と本人も気合を入れたが、彼にはまだまだ伸びしろがあるはずだ。

 今季の川崎はここからAFCチャンピオンズリーグエリートもあるし、2024JリーグYBCルヴァンカップもある。山田の決定力がより必要になるのだ。ゴミスは「川崎がルヴァンで優勝する時にはまた一緒に喜びたい」と話していたが、それをお膳立てするのが背番号20の役目。それを現実にすべく、山田には重要な局面で決め切れる力に磨きをかけてほしいものである。

取材・文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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