このページでは、レッドブル・グループが運営しているクラブや事業について、簡単に紹介する。
主にエナジードリンク事業で知られるレッドブル・グループは、近年サッカークラブの運営も行っている。2024年8月6日、Jリーグの大宮アルディージャ、WEリーグの大宮アルディージャVENTUSの株式100パーセントを取得。Jリーグ初の外国資本企業単独オーナーとなり、注目が集まっている。
2024年10月9日には、ドルトムントやリヴァプールで指揮を執ったユルゲン・クロップ氏が同グループのグローバルサッカー部門の責任者に就任したことを発表した。
レッドブル・グループとは?
オーストリア・ザルツブルクに本社を構えるレッドブル・ゲーエムベーハー(Red Bull GmbH/以下レッドブル社)は、主にエナジードリンク事業で知られる企業。近年は、飲料製品の製造・販売だけでなく、F1レーシングチームやアイスホッケー、サッカークラブなど、スポーツマネジメントの運営も行なっている。
サッカークラブの運営に本格的に参入したのは2005年。オーストリア1部のザルツブルクを買収したことを皮切りに、ガーナ、ブラジル、アメリカ、オーストリア、ドイツなどでクラブ運営を行ってきた。2024年8月に株式取得が発表された大宮アルディージャを含め、現在は実質的に主に5つのクラブを運営している(スポンサーとして大きな影響力を持つが、“オーナー”ではないクラブも含む)。
レッドブル・グループのクラブ一覧
▼スクロールできます
チーム名 | 国 |
---|---|
RBライプツィヒ | ドイツ |
ニューヨーク・レッドブルズ | アメリカ |
レッドブル・ザルツブルク | オーストリア |
レッドブル・ブラガンチーノ | ブラジル |
大宮アルディージャ | 日本 |
レッドブル・グループのクラブ紹介
ザルツブルク
オーストリアに本社を置くレッドブル社が、初めて本格的にサッカークラブ運営に参入したのが、同国の『SVオーストリア・ザルツブルク』だった。
『SVオーストリア・ザルツブルク』は、1990年代にタイトルを2回獲得し、1994年にはUEFAカップ準優勝を果たした名門クラブだが、2005年にレッドブルが買収。エンブレムとクラブ名、ユニフォームカラーの変更を断行し、サポーターグループとの衝突を招いたが、最終的に反対派サポーターグループが別のクラブを発足させることで争いは終結し、遺恨を残したまま『レッドブル・ザルツブルク』として再スタートを切った。
その後、レッドブル社は『レッドブル・ザルツブルク』に莫大な資金を投入し、若手選手の育成環境を整えたことでチームはみるみる発展。欧州屈指の育成クラブとして評価されるようになった。
同クラブを語るうえで欠かせない存在が、現オーストリア代表指揮官のラルフ・ラングニック監督。2012年に『レッドブル・ザルツブルク』と後述の『RBライプツィヒ』のスポーツディレクターに就任すると、自身のフィロソフィーにもとづいた独自の育成システムを構築し、クラブ強化の中心を担った。同氏は2020年にクラブを離れ、現在はオーストリア代表監督を務めている。
なお、ザルツブルクには、かつて元日本代表DF宮本恒靖氏(現日本サッカー協会会長)、元日本代表DF三都主アレサンドロ氏、日本代表MF南野拓実、ノルウェー代表FWアーリング・ハーランドらが所属していたことでも知られる。現在は日本代表MF川村拓夢が在籍している。
FCリーフェリング
ザルツブルクは2011年にオーストリア下部リーグのUSKアニフと提携を結び、2012年には同クラブを『FCリーフェリング』に名称変更。ザルツブルクのセカンドチーム扱いとなり、ザルツブルクと同じリーグに所属する資格(実質1部昇格権利)がないクラブとなった。
2016-17シーズンにレッドブル・ザルツブルクのU19チームは、UEFAユースリーグで優勝したが、選手のほとんどはリーフェリング出身だった。
ライプツィヒ
『レッドブル・グループ』のなかで、最もレベルの高いクラブがドイツのライプツィヒだ。
2009年にレッドブル社はドイツ5部の『SSVマルクランシュテット』を買収。しかし、ドイツのルール上、企業名をクラブ名として使用することが禁じられており、『Red Bull』をクラブ名称に入れることができなかった。そこで、同社は『RasenBallsport(直訳すると“芝生球技”という造語)』の略として「RB」をつけ、『RBライプツィヒ』としてクラブ名を登録した。『Red Bull』の略称『RB』を意識したものだということは言うまでもない。
2009年にクラブを買収してからライプツィヒは、飛躍的に成長を遂げた。わずか7年で5部から1部へと昇格すると、2016-2017シーズンには昇格1年目ながら2位に入り、初のチャンピオンズリーグ(CL)出場権を獲得した。その後も上位をキープしており、2021-22シーズンからDFBポカール(ドイツカップ)を2連覇するなど、ドイツ屈指の強豪クラブとして確固たる地位を築いている。
レッドブル・ブラガンティーノ
2020年にレッドブル社は、後述の『レッドブル・ブラジル』がトップリーグ昇格に苦戦していたため、1928年に設立された『アトレティコ・ブラガンティーノ』を買収。ザルツブルクと同じく、ユニフォームカラーやエンブレム、クラブ名を変更した。
2020年にブラジル1部へ復帰すると、2021年にはコパ・スダメリカーナ(欧州におけるELに相当する大会)で準優勝を飾るなど、急成長を遂げた。
元鹿島アントラーズのアントニオ・カルロス・ザーゴ監督が、鹿島着任前に指揮を執っていたクラブとしても知られている。
レッドブル・ブラジル
レッドブルグループの中で最も上手くいかなかったクラブと言っても過言ではないのが、『レッドブル・ブラジル』だ。
2007年にレッドブル社によって設立されたが、トップリーグに昇格できず、その後に買収された『アトレティコ・ブラガンティーノ(レッドブル・ブラガンティーノ)』の下部チームとして降格した。
2023年1月には『レッドブル・ブラガンティーノII』に改名され、サンパウロ州選手権3部を基本的に23歳未満の選手のみで戦っている。レッドブル・ブラジル(SP)とも呼ばれている。
ニューヨーク・レッドブルズ
1995年に『ニューヨーク/ニュージャージー・メトロスターズ』として設立されたクラブを2006年にレッドブル社が買収した。
2010年にはバルセロナからフランス代表FWティエリ・アンリ氏(現U-23フランス代表監督)を獲得し、大きな話題となった。同氏はニューヨーク・レッドブルズで135試合に出場し、クラブ歴代3位となる52ゴールを記録。クラブの象徴として発展に大きく貢献した。
なお、同クラブはメジャータイトルをまだ獲得したことはない。
レッドブル・ガーナ
現在はすでに解散しているレッドブル・ガーナは、2008年に設立された。アフリカの才能ある若手選手をザルツブルクやライプツィヒに送り込むプロジェクトだったが、2014年に廃止され、オランダのフェイエノールト(現在は日本代表FW上田綺世が所属するクラブ)が施設と選手を継承して下部組織化した。
リーズ
2024年5月、レッドブル社はイングランドの名門リーズの少数株主権を取得し、2024-25シーズンのユニフォーム胸スポンサーを務めることを発表した。
ただ、少数株主であるため、ライプツィヒ、ザルツブルク、ニューヨーク・レッドブルズ、レッドブル・ブラガンチーノとは異なり、クラブ名やユニフォームカラー、スタジアム名等の変更はない見込みとなっている。
大宮アルディージャの株式譲渡
2024年8月6日、Jリーグの大宮アルディージャ、WEリーグの大宮アルディージャVENTUSの株式100パーセントをレッドブルが取得したことを発表した。
なお、共同リリースには『レッドブルのコミットメントは、ホームタウン・さいたま市で引き続き活動を継続することであり、これまでクラブがステークホルダーと育んできたチーム名やクラブカラーなどをリスペクトし、クラブが積み重ねてきた26年の歴史をベースに積極的に新たな挑戦を行っていくことで「継続と発展」を示し、クラブ理念の実現と成長循環型クラブとしての取り組みをより加速させて行きます』と、クラブカラーやチーム名などを『リスペクト』すると掲載した。
2024年10月1日には社名を『RB大宮株式会社』(アールビーおおみや)に変更することを発表した。
ユルゲン・クロップ氏のグローバルサッカー部門の責任者就任
レッドブルグループは2024年10月9日に、ユルゲン・クロップ氏がグローバルサッカー部門の責任者に就任したことを発表した。
クロップ氏は2001年2月の現役引退と同時にマインツの監督に就任。2003-04シーズンには2.ブンデスリーガ(ドイツ2部)で3位という好成績を残し、クラブをトップリーグ昇格に導いた。その後、2008年夏から7年間指揮したドルトムントでは、ブンデスリーガ連覇やDFBポカール優勝を達成。2015年夏にはリヴァプールの指揮官に就任し、プレミアリーグ優勝やチャンピオンズリーグ(CL)制覇を成し遂げた。昨シーズン終了後に9年間に及んだ“長期政権”に終止符を打ち、以降はフリーの身となっていた。
クロップ氏は今後、レッドブルの傘下にあるサッカークラブの国際ネットワークを統括しつつ、戦略的ビジョンを提供し、レッドブルの哲学を推進する個々のスポーツディレクターのサポートにあたるという。また、各クラブの日常業務には関与しないが、組織のグローバルスカウト活動をサポートし、コーチ陣のトレーニングと育成にも携わるようだ。なお、2025年1月中旬には記者会見が開かれる予定となっている。
ドイツメディア『スカイスポーツ』が報じたところによると、クロップ氏とレッドブルは長期契約を締結しており、2025年1月よりグローバル・サッカー部門の責任者としての仕事を開始するようだ。また、契約には将来的な退任オプションも付随している模様で、ユリアン・ナーゲルスマン監督の後任としてドイツ代表の指揮官に就任する選択肢も確保されていると報じられている。
就任に際し、クロップ氏は次のようなコメントを発表している。
「25年近く外から見ていたが、このようなプロジェクトに携われることにとても興奮している。役割は変わったかもしれないが、サッカーとサッカーを形作る人々に対する私の情熱は変わっていない。レッドブルに加わることで我々が持つ素晴らしいサッカーの才能を育成し、向上させ、サポートしたい。レッドブルが持つ優れた経験と知識を活用することから、他のスポーツや業界から学ぶことまで、それを実行する方法はたくさんある」
「ともにさらなる可能性を発見していきたい。私の役割は主にレッドブルのクラブのコーチ陣や経営陣のメンターだと思っているが、最終的にはユニークで革新的かつ前向きな組織の一員となることだ。これ以上に興奮することはない」
By サッカーキング編集部
サッカー総合情報サイト